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誠意?②

どどどどどど、どうしよう!

なんか天野がウチらの方見て話してるんだけど!

正確に言えば見てるのは天野と会話してる友達だけど

でも関わりなんてない

それなのに見てる

それってウチのこと話してる可能性大じゃない?


カースト1位

3人組

親が金持ち


間違いなくウチのことじゃん!


天野ってよく分かんないけど、なんか良いんだよね

田舎者だとは思えないオーラ

堂々とした佇まい

若干ぬぼーっとした表情をしてはいるけど、そこそこ整った顔

どこにでもいそうで、どこにもいない


これはチャンス

話しかけるチャンスだよ!


「天野?今ウチらの方見てなに話してたの?」


もしかしたらウチの話しじゃないかもだし、保険は忘れない

でも話すきっかけにくらいしても良いでしょ


「今日のアクセサリは僕のセンスからすれば下品だ、少し前にしていたピンク色のアクセサリの方が派手ではあるけど、どちらかを選択するなら好みではある」


天野、ウチが一昨日してたアクセ覚えててくれたんだ…

別に好きってわけでもないのに、どうしよう、嬉しい


「って言ったからどんなアクセサリか確認しようとしたんじゃないかな」


「あれが天野の好みなんだ…」


「今日のと比較するならね」


うーんっと、結局どっちも好みじゃないってこと?

あ!良いこと思い付いた!


「じゃあ天野の好みは?」


「もう少し落ち着いた色の物かな」


「寒色系ってこと?」


寒色系って言っても色々あるし、暖色系でも落ち着いたデザインの物は沢山ある

だけどどっちの色の方が好みか聞ける


「そうだね。それから、ラメが反射して眩しい」


なるほど、ラメは嫌いなんだ

えっと…ウチっぽい発言は…


「今ウチ輝いてるってこと?」


「物理的にね」


「えぇー、嬉しい」


あぁ、流石に呆れらちゃってる

マズいよ~


「ねぇ天野」


少し甘めの声で呼びかけてみる


「なに」


この感じの声、天野は嫌いなんだ

他だと割とウケ良いんだけどなぁ

でも天野はその辺の男子とは違うもんね


「天野がウチに似合うと思うアクセ、選んでくれない?」


デートのお誘いだよ

天野なんて返すかな


「良いよ。明日渡す」


えぇー!

デートのお誘いだよ?!

念押ししてみようかな


「一緒に選ぼうよ」


「どんな物にするからもう決めてあるから」


それって天野の中にウチのイメージがもうあるってこと?

どうしよう!嬉しい!

他の女子も騒ぎ始めてる

ウチの方がリードしてるみたいね、残念


「そうなの?じゃあ楽しみにしてる!」


「明日一日外さないでね?」


…悪戯を思い付いたみたいな顔

それに念押しの言葉

いっか!引っかかってあげる!

天野のお誘いだからね


「うん!」






引っかかってあげたことを、すっごく後悔してる

渡されたのはこの町のダサいゆるキャラのヘアピン

良い笑い者になってしまった


「に…、似合う…よ…」


なんとか笑いを堪えて言う天野を可愛いとこんな状況でも思ってしまう

でも恥ずかしさには勝てない

多分顔は真っ赤だと思う


「役場へパートに出ている母さんが買わされて家に沢山あってね、そういえばお父さんが市長なんだっけ?」


「お父さんが考えたんじゃないわよ!」


「そんなことはどうでも良いよ。それより、無理に職員に購入させるのって、なにハラなんだろうね?」


最初からこれが狙いで…?

でも子供になにかしたところで事態が動くとは限らない

それに下手をしたら自分だけじゃなくて母親も職場で嫌がらせされるようになるかもしれない

一体どういうつもり


「家に沢山あるんだ。似合うし、買い取ってくれるよね?」


そんなに沢山ではないだろうから、おこずかいでなんとかなるだろうし策が気になる

ここは良好的な返答をしよう

それでもウチのキャラ的に渋々言うべき


「分かったわよ…」


「それは良かった。じゃあ明日全部持って来るね。6千円くらいになるんだけど」


税込みで500円しない商品ばっかのはず

それが6千円分…?!


「そんなに無理矢理買わせたの…?」


「そうだね。詳しいことは知らないけど、母さんはパートだし少ない方なんじゃないかな」


もしそれが本当なら社員は1万円分くらい買わされていてもおかしくない

頭を勢い良く下げた

これでその過去がどうにかなるかとか、ウチのクラスでの立ち位置とか、そんなことはどうでも良い


「その上司に代わって謝るわ。ごめんなさい」


クラスのざわつきがうるさい

でも顔を上げると少し静かになる


「お父さんに言って実態調査をさせるわ。権力を使って買わせるなんて最低よ、処置と対策を約束する。ごめんなさい」


ウチが約束したってなにが出来るか分からんない

最悪お父さんが首謀者でウチの訴えなんて聞いてくれないかもしれない

だけど、なにも行動しないわけにはいかないわ


「それならこのヘアピンはもういらないね」


天野はそこまで分かっているはずなのに、優しく微笑んでそんなことを言う

だからこそ余計に約束は守らなくちゃいけないわ

今した約束の方じゃない

昨日した約束の方の話しよ


「約束通り今日一日付けるわ」


天野は少し驚いた表情をしたけどすぐに微笑む

それ以来天野はウチをフルネームで呼ぶようになった

やっとひとりの人間として認識されたことを理解して、嬉しくなった


あともうひとつ

ウチはクラスで無理に強気な態度をとらなくなった

その方が互いに過ごしやすいことに気付いたから


空調機も直って、このクラスは快適になった

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