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境界線はファインダーの向こう  作者: 染島ユースケ
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「…………ーちゃん、ちーちゃん」


 視界が、まぶしく染まる。


「んっ……ん?」


 淡い色の空があった。ハチミツを薄く引き延ばしたような、夕方の空。私は、どうやら横になっているらしい。


 そして、そんな私を横からのぞき込む人影。


「目、覚めた?」


 始めは、逆光の影に染まって見えなかったその姿。徐々に視界が光と馴染んで、その表情が露わになる。まるで、私と瓜二つのような顔立ち。


「お姉ちゃん……?」


 私が起きあがろうとすると。


「ちーちゃんっ!」

「ひゃっ」


 お姉ちゃんは私を抱きしめて、その勢いに耐えられなかった私は再びどさっと倒れ込んだ。どこか懐かしい匂いがする。青々とした夏草の香り。それから、お姉ちゃんのふんわり優しい石鹸みたいな香り。


「大きくなったね、ちーちゃん」


 夏服越しに、お姉ちゃんの呼吸と、心拍数を感じる。生きている音に、触れている。驚きの後で包まれる、見上げる空の色に似た優しい気持ち。


「会いたかった、会いたかったよ……」

「私も、お姉ちゃんに会いたかった」


 はぐれていたお互いの魂が、子供の頃へと還っていく。いや、私達はずっと子供のままだったのかもしれない。お互いを失った瞬間から、時計の針は止まったままだった。


 それが今、ようやく動き出したんだ。


 私達は、これ以上出ない程に涙を流して、泣きじゃくった。それこそ本当に、子供みたいに。


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