19
「…………ーちゃん、ちーちゃん」
視界が、まぶしく染まる。
「んっ……ん?」
淡い色の空があった。ハチミツを薄く引き延ばしたような、夕方の空。私は、どうやら横になっているらしい。
そして、そんな私を横からのぞき込む人影。
「目、覚めた?」
始めは、逆光の影に染まって見えなかったその姿。徐々に視界が光と馴染んで、その表情が露わになる。まるで、私と瓜二つのような顔立ち。
「お姉ちゃん……?」
私が起きあがろうとすると。
「ちーちゃんっ!」
「ひゃっ」
お姉ちゃんは私を抱きしめて、その勢いに耐えられなかった私は再びどさっと倒れ込んだ。どこか懐かしい匂いがする。青々とした夏草の香り。それから、お姉ちゃんのふんわり優しい石鹸みたいな香り。
「大きくなったね、ちーちゃん」
夏服越しに、お姉ちゃんの呼吸と、心拍数を感じる。生きている音に、触れている。驚きの後で包まれる、見上げる空の色に似た優しい気持ち。
「会いたかった、会いたかったよ……」
「私も、お姉ちゃんに会いたかった」
はぐれていたお互いの魂が、子供の頃へと還っていく。いや、私達はずっと子供のままだったのかもしれない。お互いを失った瞬間から、時計の針は止まったままだった。
それが今、ようやく動き出したんだ。
私達は、これ以上出ない程に涙を流して、泣きじゃくった。それこそ本当に、子供みたいに。




