転生と言う名の罰
首を吊る。
最後に頭に浮かんだのは、「今の記憶を持ったまま転生できると良いな」だった。
鼻がひん曲がりそうな悪臭が漂う貨物列車に、胸にダビテの星を縫い付けた上着やコートを着ている老若男女と共に俺は、鮨詰めの状態で押し込まれている。
行き先は………………フッ、アウシュビッツだろうな。
最後に願った記憶を持ったまま転生したいって願いは叶えられた。
ただし罰として。
閻魔大王に言われたよ、「お前が殺した人たちの苦しみを自身で体験しろ」とね。
俺は人を殺したことは残念ながら一度も無い。
だけど俺は、俺が趣味で書いた小説の中で人を殺しまくった。
人類を絶滅させる小説を何本も書いて数十億、数百億の人間を殺している。
閻魔大王に言わせると、頭に思い浮かべ文字にした時点でアウトらしい。
何故なら現実には殺していなくても、人を殺したいという願望や要求を周知した事になるからとの事だ。
汽笛を鳴らしスピードを落とし列車が絶滅収容所に入って行く。
此から鞭で打たれガス室に追い込まれるのか……………………。
此を読んでいる奴の中には小説を書いている者もいる事だろう。
私は人を殺す小説なんて書いていないから大丈夫だと思っている奴もいるかも知れないが、閻魔大王が言っていたぞ。
戦争や殺人だけで無く、事故死や病死などの人の死を文字にした時点でアウトだとね。
あんたらもあんたらが書いた小説の中の登場人物が経験した死を、死後体験することになるのさ。
それを思うと、これから数十億回数百億回転生が繰り返され殺されまくる俺としては、地獄の苦しみが軽減されるように感じる。
ハハハハハハハハ
でも心残りがある。
こんな転生があると知っていれば、ノクターンで自分の性癖を文字にしておけば良かったとの思いだ。
そうすれば地獄の転生が楽しみになっただろうからな。