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第6話

次の日、今日のお呼び出しは3時間目。




なんか意識しちゃう...。




「なぁ...」




「なに?」




「この世に人間以外のものがいるって言ったら信じるか?」




ドクン




それって...。




春稀も...。




「信じるわ」




「お前の親友とかが...」




あぁやっぱりそうなのね。




「楓よね?知ってるわ。魔法族ってことでしょ?」




驚いた顔になる春稀。




「私は“見える人間”よ」




「俺もだ。まさか凛もだったとは...」




「春稀は前世由来のもの...?それとも今世からのもの...?」




それによって敵か味方かわかるから。




「俺は...今世からのものだ。仲良くしているのは魔族側だが。あまり魔法族に対して恨みはない。凛は?」




「私も。魔法族と仲はいいけど魔族への気持ちは特にないわ」




嘘だ。




恨み、憎しみそういったものがどれだけ心の中にあることか。




でも言っちゃダメ。




例え人間だろうと...。




「じゃあ同じだな」




「うん...」




「でもまさか凛もだったとは思わなかった」




「私も。全然気づかなかった」




「魔法族側と魔族側の人間だとしても俺はお前を離す気はないからな」




「私も離れる気はないもん」




そう言うとびっくりした顔をした春稀。




ん?




今、私とんでもないこと言ったような気がする。





「それは一生俺の下僕がいいってことか?」





ニヤッとしながらドSを発揮する性悪男。





「違うってばー!」





私の虚しい叫び声が天井に反響した...。




「ねぇ聞いて聞いて!春稀ってね見える人間だったんだって!」




「え?本当に?」





楓も驚いていた。





「うん!そうなの!どっちかって言うと魔族側らしいんだけど...気にしないわ」





「っていうことは私が徠花ってこと気づいていたかもしれないわね」





「まぁ大丈夫じゃない?」





「でも永野って魔王の側近のやつと仲良くしてる所見たことあるのよね...大丈夫かしら」





「お願い、信じてよ」





「...わかったわ。凛がそう言うなら信じる。でもむやみやたらに魔法族の秘密とか自分のこととか喋っちゃだめよ?」





「はいはーい」




「あ、そうそう。凜忘れてそうだから念の為言うけどサバト今日の夕方からだから」




「そうだったっけ...?」




「やっぱり忘れてたわね...。私準備があるから先に行くけど場所はこの前の幹部の会議で使った場所のそばよ。サバト用の世界を作ってあるから。入口に私いるからその後のことは大丈夫」





「わかった〜!とりあえずこの前の場所に行けばいいのね」





「そう。あ、あとサバトだからってカラコンとかしないでくるのだけはやめてね。むしろかなり昔とは違う姿で来て」




「じゃあカラコンしてウィッグもしてくるね」





「それがいいわ。あ、もうこんな時間!私学校抜けるから。言い訳しといて」




「がんばってねー!」




バレるのは怖いけど内心かなりワクワクしてる私。




私があの頃やっていたサバトが今の時代も受け継がれてるって嬉しいし、なんか気になる!




今まで行かないようにしていた分すごく楽しみなの。




それに今日はかなり大規模なサバトでこの世界にいるほとんどの魔法族が集まるらしい。




だから懐かしい人たちにたくさん会えるはず。





例え話さなくても見れるだけでいいの。




あの頃と変わらず元気でいてほしいな...。




そして放課後。




私はダッシュで家に帰る。





そういえば一緒に帰りませんか?っていうメール今日も20件くらい入ってたけど無視無視!





「ただいま!」




「おかえりなさい」





「お母さん、今日遊びに行くから夜ご飯いらない」





「わかったわ。あんまり遅くならないようにね」





「うん!」




急いで自分の部屋に行き、準備をする。




カラコンはそのままで髪の上に茶色がかった色のウィッグを付ける。




服は昔とは違う人間界らしい私服に。





魔女だからってなんでも出来るわけじゃないから自分の姿まで変えることなんて出来ない。





出来れば楽なのにね。





私服を探すついでに私はなんとなく自分のクローゼットの端っこにかかっているドレスを見る。





これはいつからか置いてある私の昔のドレス。





きっと生まれ変わったときに一緒についてきたかったんだと思う。





いつも着ていたものだから私の魔力が残ってる。





爆発に耐え、ここまでついてくれたと思うと胸がいっぱいになる。




これをいつかまた使う日が来るかもしれない。





「そのときはまたよろしくね!」





ぎゅーって思い出の詰まったふわふわのドレスを抱きしめた。




「いってきます!」




「あら、イメチェン?そのウィッグ似合ってるじゃない」




「そう!たまにはいいかなって」




「私は元々のあなたの方が好きだけど。その綺麗な赤い目と黒い髪、私は好きよ。誰がなんと言おうとそれが私の娘ですもの」




「ありがとうお母さん!」




「うん、いってらっしゃい」




私の人とは違う赤い目。




お母さんはどう思っているのか気になってはいた。




だから素直に嬉しかった。




家ではカラコン外して生活してみようかな。




って考えごとしてる場合じゃなかった!




方向音痴な私があそこまで辿り着けるかも不安なのに。




そして案の定




はい、ここはどこでしょうか...。




途方に暮れていたその時現れた救世主、彩香ちゃんと咲希ちゃん。





「凛ちゃーん!どうしたの?」





「道がわからなくて...」





「咲希、すごい!なんで凛ちゃんだってわかったの?私全然わかんなかった」





「お姉ちゃんが鈍すぎんだよ」





「まあ今日私イメチェンしてるからわかんないよね!あ、道教えてもらってもいい...?」





「いいよ!サバトに行くんでしょ?」





「そうそう」





「やっぱり“見える人間”も結構サバトに来るんだね〜。あ、凛ちゃんは徠花様と仲いいから?」





意味深に目配せしてくる咲希ちゃん...栞奈。





「そ、そうだよ」




視線怖いですよ栞奈さん。




サバトの会場は思っていたより近くにあった。




私は一体どこをぐるぐる回っていたんだろう...。





「凛ー!沙奈と栞奈も!」





「あ、楓だ」





この間お邪魔した建物のすぐ横の空き地の目の前に立っていた楓。





見えないけど実はここに大きな空間ができている。





「はい、3人は入っていいよ」





見えないバリアに楓が杖を触れると、その先に道ができた。





「私も後で行くわ」





「待ってる」




「ねぇ、なんか今日警備厳重じゃない?」





「たしかに。いつもこんなに警備の人多くないはず」





「私初めてだからわかんないけど、これって多いんだね。なんか空気がピリピリしてる感じはするかも。最近の治安が原因かな」





「あ〜最近治安悪いもんね」





「っていうか凛ちゃんってサバト初めてなの?」





「うん、初めてだよ」





「徠花様と仲良いから来てるんだと思ってた!」





「今回は治安のせいで月華様まで呼び出されたってことね」





ボソッと呟く栞奈。





そんな栞奈を黙れっていう意味を込めて軽く睨む。





「お姉ちゃん、凛ちゃんが怖い!睨んできた!」





そして沙奈に助けを求める名演技。





「ほんっとあんたって昔から可愛げがないわ」





「知ってますよーだ」





「でも嫌いじゃないわよ。そういうとこ」





一瞬ぽかんと口を開けた栞奈は次の瞬間私に抱きついてきた。





「私は大好きですよ。月華様がいなくなって私がどれだけ悲しんだと思ってるんですか...!」





私の胸に顔を埋めて私にしか聞こえないような声で話し始めた栞奈の頭を撫でる。





「栞奈、ごめんなさい。私も大好きよ」





この一連の流れをずっと見ていても全くなんのことか分からずきょとんとした顔をしている沙奈は大丈夫かな...。





「ねぇねぇなになに?どういうこと?今咲希何があったの?」





「え?あ、お姉ちゃんいるんだった」





こういうときだけ鈍感な栞奈は気づかなかったらしい。





「っていうかこれでも気づいてないの?お姉ちゃん」





「何を?」





「ハァ...まあむしろよかったんだけど...」





栞奈も私もかなり呆れてものが言えない。





「苦労するわね、かん...咲希ちゃん」





「うん...」




通路を進み続けた先にやっと現れた扉。





そこを開けるともうたくさんの魔法族や“見える人間”が来ていた。





サバトに来るのはすごく久しぶり。





人間界で来たのは初めてだし。





机が並べられ、たくさんの食べものが置いてある。





「おいしそう...!」





「あ、凛ちゃんあれ見て見て」





栞奈が指さす先にあったのは...




前世の私の似顔絵。





ご丁寧にステージの上に置いてある。





あれは恥ずかしすぎるよ...。





クスクス笑ってくる栞奈。





「月華様だっ!会いたいな...」





そしてなぜか急に泣き出しそうになっている沙奈。





お隣にいますよー。





だから泣かないでよ...。




「早くなんか食べようよ」





私は泣き出しそうな沙奈の手を引いて食べ物コーナーへ。





栞奈も苦笑しながら着いてくる。





「見て!チョコケーキ!」





気づけば私のお皿はデザートでいっぱいに。





「凛ちゃん...ご飯食べなよ...」





「お待たせっ!...っては?なんでデザートしか盛ってないの?」





そしてタイミング悪く合流した楓。





「だって食べたいんだもん」





「デザートはあと!早くご飯盛ってきなさい」





「はーい...」





「なんか2人って親子みたいだよね」




「それ思った!凛ちゃんが子供で徠花様が母親」





沙奈と栞奈がクスクス笑いながらそう言ってきた。





「ひど!それじゃまるで私が幼稚みたいじゃん」





「だって幼稚だから。今までどれだけ私が凛の世話焼いてきたと思ってんの?」





「あ、まあそれは...あは」





「漫才みたい」





「親子漫才だね」





「「漫才じゃない!」」





このタイミングでハモってしまい、みんなで顔を見合わせて笑った。




「あ、そろそろ会長からのお言葉の時間よ」





「月華様のお父さんっていう人ですよね?」





「その噂広まってたのね」





「かなり広まってますよ」





まあ私は気にしないけど。





何を言うんだろう...。




そして現れたお父さん。




「こんばんは。魔法族協会会長からご挨拶とご連絡を申し上げます。今日はお集まり頂きありがとうございます。このサバトという儀式は元魔法族女王月華様がお始めになった儀式です。サバトでは魔法族の絆を深めるという意味合いも含まれています。今日は思う存分楽しみ、絆を深めてください」





さすがお父さん、私の気持ちをよく汲み取ってくれている。





「そしてここからは重大な連絡です。最近は魔族と魔法族の争いが様々なところで勃発しており、治安の悪化が深刻になっております。亡き月華様が求めた平和な世界を作るためにも極力魔族との争い事を起こさないようお願い申し上げます」





そう、私が求めた平和な世界。





魔王を殺したいという気持ちに変わりはない。





でも私は魔族と大きな争いを起こしたいわけではないの。





ただ魔族への恐怖からみんなを救いたいだけ。





魔族を滅ぼそうなんて考えたことも無い。





「現在人間界のどこかには魔王が復活しています」





会場内がどよめく。





「大きな争いに発展しないためにも魔族への攻撃をしないようよろしくお願い致します。また万が一魔族からの攻撃を受けた場合に備えて一層魔法の強化をお願い致します。以上です」





パチパチパチ





拍手が起き、静かになっていた会場がまた騒がしくなり始める。





「座りましょう」





「そうね」




無理やり盛らされたご飯の皿を持って空いているテーブルに4人で座る。





「徠花様、お久しぶりでございます」





そして絶え間なく徠花のところに来る人たち。





全員私の顔見知り。





懐かしい顔ぶれ。





元気にしてること知れるのは嬉しい。





でも、ひまだな...。





食べもの取りに行こっと。





「あ、凛ちゃんどこ行くの?」





「食べもの取りに行ってくる」





「私も行っていい?」





「私も行く!」





「いいよ」





沙奈と栞奈と食べものコーナーに向かう。





そのとき





スッ





「!?」





突然2つの黒い影が私たちの前を横切った。




その2つの影が向かった先はステージ。





ステージの上を誰もが驚いた顔で見上げる。





そして2つの影...2人組の男は口を開いた。





「おい、お前らなにしてるんだ?こんなところで楽しく喋ってる場合じゃないだろ?」





「魔族への恨みとかないわけ?俺たちを救ってくれた月華様が魔族のせいで死んだんだよ?滅ぼしたくないの?」





ねぇ、どうして...。





「あれは...」





「月華様の三大従者、翅様と朔夜様」




「2人ともやめて!月華様が望んでいたのは平和な世界よ?魔族を滅ぼすことじゃない!」




出てきたのは私のもう1人の従者、徠花。





「徠花...お前は魔族が憎くないのか?大好きな月華様が殺されたも同然なんだぞ」




「憎いわ!でもそれで月華様が喜ぶわけじゃない。それに向こうには魔王もいる。勝てるわけないじゃない!」




「月華様が喜ばないって誰が決めたの?月華様が言ったわけじゃないでしょ?月華様だって魔族のこと憎いはずだよ!勝てるはずないなんて決まってない」





「そうだ!月華様のために魔族を滅ぼそう!」





「今こそ復讐を果たすときよ!」





あちこちから賛同の声が上がり始める。





私はそんなこと望んでなんていないのに...。





そんな中、ステージに駆け上がり反対の声を上げてくれたのは中村くんと橘くん...。




いや、龍と爽。





「みなさん、何を仰っているのですか。またあの争いを繰り返すつもりですか?」





「そんなことしたって犠牲者を増やすだけです!」





必死に呼び掛ける龍と爽に反応して、今まで黙っていた人が賛同し始めた。





「そうよ!争いなど起こす必要はないわ!」





「月華様が望んだ平和な世界を作ろう!」




「うるさいっ!黙れ!」





「炎焔」





いきなり徠花、龍、爽に向けて火を放った朔夜。





「防御」





徠花がギリギリのところでそれを防ぐ。





それを見た人たちも賛成派、反対派に分かれて魔法対決を始めた。





これぞまさに仲間割れ。





「私反対派。月華様が望んでるなんて思わないもん。行ってくるね」





そして隣でそう言い始めた沙奈。





「彩香ちゃん!だめよ!」





「どうして?」





「どんどん仲間割れが進むだけ」





「そんなこと...何も知らない凛ちゃんが言わないでよ!月華様のことすら知らないくせに」





そっか...今の私はみんなからしたら部外者なのか。





「お姉ちゃん、行かないで。お願い!」





「咲希...わかった...」






沙奈は相当怒ってるらしくまだ私の事睨みつけてくる。





「凛ちゃん」





そして私の名前を呼んだ栞奈は多分気づいている。





今から私がやろうとしてること。





「いってらっしゃいませ」





ほらね?





「いってきます」





だから私は栞奈に最高の笑顔を向ける。




そして私は飛び交う魔法の中をすり抜け、私の従者と護衛が戦うステージへと向かう。





「何やってんの?バカなんじゃないの?今は仲間割れしてるときじゃないでしょう?」





「凛!」





急に現れた私に物言いたげな徠花。





「もういいのよ」





「...」





無言で杖を下ろした徠花、龍、爽。




「凛?誰だよ。徠花の友達だかなんだか知らないが、何も知らない人間がしゃしゃり出てくんな」





「何も知らない?よーく知ってるけど。こんなに醜い争い止めて何が悪いの?」





「たかが人間のくせにそんな言葉遣いすんな!それにこれは醜い争いじゃない。月華様の考え方を巡る立派な討論会だ」





「へぇ〜?そんな言葉遣いすんなってね...。それはこっちのセリフなんだけど。これが討論会の訳ないじゃない。周り見てみなさいよ」





「は?」





「疾風」





私は2人をあの因縁の魔法で床に叩きつける。




「!?」




「私がいつ魔族を滅ぼしたいなんて言ったかしら」




茶色のウィッグを取り、




「そんなこと一言も言った覚えはないんだけれど」




カラコンを外して赤い目を露わにし、




「ねぇ、聞いてる?翅、朔夜」




私の魔力を体全体に纏わせる。




「げっ...かさ...ま」




「月華様だわ...」




「我が女王月華様...」




私に気づいた人たちが争いをやめ、次々に跪く。




「月華様...申し訳ございませんでした!」




「いいのよ。私こそごめんなさい。あなたたちには辛い思いさせたわよね」




黙って2人を抱きしめる。




「おいで」




来そうにしていた徠花も加わる。




「いい?2人とも。二度と魔族を滅ぼすなんて考えちゃだめよ」




「はい...」




そして私に跪くたくさんの人たちの方に向き直る。





「顔を上げて。えーっとみんな、久しぶり。初めましての人もいるのよね。まずは...あの戦いで一緒に戦ってくれた人本当にありがとう。そしてごめんなさい。あれは私のせいで起きたことよ」





「違います!あれは月華様のせいじゃないわ」





「いいえ。徠花。私のせいよ。あそこは私が管理するべき場所。裏切り者に気づけなかったことも私の警戒心が弱かったからよ」





「でもあれは...!」





「徠花。あれは私のせいなの。いいから黙りなさい」





私の表情を見て下唇を噛み、俯く徠花。






ごめんね...。





そうは思いつつも、まだ話は終わっていないから...。





「転生したこと黙っていたのは混乱を呼ばないためよ。それは理解してほしい。ただ魔族には絶対私が転生したこと知られたくないの。だから黙っていて。お願い」





無言で頷いてくれる懐かしい仲間たち。





みんなにはまだ言っておかないといけないことがある。






「あとは...魔族に復讐したいって思ってる人いるわよね...?その気持ちよくわかるわ。でも絶対に魔族を滅ぼそうなんて考えないで。また争いを起こしたところでいいことなんて1つもないわ。あともう1つ...今まで言ったことと矛盾してるかもしれないわね。でも私は必ず魔王を殺す。これだけは譲れないわ」





誰もが息を呑む。





そう、これは決めたこと。





絶対にこの決意は揺るがない。





「誤解しないでね?私がこれをやるのは魔法族の平和のためよ。魔王が死ねば魔族の考え方も変わるかもしれないから。この件は絶対魔法族に影響が及ばないようにするわ」





茫然と話を聞く人たちの中で口を開いたのは徠花。






「私は構いません。精一杯援護をします」





「俺も」「僕も」





私は従者3人に曖昧に微笑む。






だって3人には魔王との戦いに参加させるつもりはないもの...。





「私は月華様に着いていきます!」





誰かの声を筆頭に会場からも次々に声が上がった。





「ありがとう。これから私からの連絡は魔法で行うわ。聞き逃さないように」





「はい!」





「サバトの続きを楽しんで」






私は会場に笑みを向けたあと従者たちと共に会場の外へ向かう。






話さないといけないことはたくさんあるから。





「えーっと...改めて翅、朔夜、久しぶり」





そう言っただけなのにぶわっと2人の目から涙が溢れてきた。





「月華様〜!」





「それにしてもそこの2人も凛もほんっと派手にやってくれたわよね」




そして雰囲気をぶち壊す徠花。





「ちょっと...!今感動の再会シーンだったんだけど?」





「あら、それはごめんなさい月華様。私にとってそんなことよりも凛が月華様ってことカミングアウトしたことの方がよっぽど大事なの」





「うぅ...だってそれは...」





「まあ結果的に月華様とまた会えたんだから僕としてはよかったけどね~」





「はぁ?翅、あんたのせいで月華様が転生したことバレちゃったのよ?それがどんな意味もつかよく考えて。あの瞬間から魔法族はまた動きだしたの。それがいい方向になのか悪い方向になのかはわからないけれど」





「きっといい方だよ!」





「どうしてそこまでポジティブになれるのかな」





「でもごめんなさい...」





「俺も悪かった」




「怒んないでよ徠花。これは2人とも私のためにやってくれたことなんだしさ?そうだよね?翅?」





「はい...」





うん、可愛いいい子。





「そんなことよりも大事なことがあるんだけど」





「なんですか?」





「私デザート食べ終わってない」





ずっと楽しみにしてたんだから!





「はぁ?もういいです。月華様は沙奈と栞奈のところ行っててください」





「やったー!」




やっとデザート食べられる♪





って思ってたのに...。





バーン





勢いよく扉を開けるとたくさんの人たちが集まってきた。





「月華様よ!」





「月華様お久しぶりですっ」





「私は...月華様がいなくなってから...うぅ」





全員相手をしていたらすごく時間がかかってしまった。





「月華様!お疲れ様です」





迎えに来てくれたのは栞奈。





「ありがとう。あーあ、ついにやっちゃった」





「まぁいいんじゃないですか?ただこれによって何かが動き出したことには変わりないと思いますけど」





栞奈は徠花と同じようなことを言っていた。






何かが動き出した...か。




「あ、月華様...」





「沙奈...」





考え事をしながら歩いていたら、沙奈がいるテーブルに着いていた。





さっき沙奈、怒ってたからちょっと気まずい...。





「あ...の...ごめんなさい。私月華様に対してなんていう失礼を...!」






「沙奈は悪くないから謝らないで。私の方こそごめんなさい」






「月華様は何も悪くないじゃないですか!黙っていたことはちょっと嫌だったですけど...。栞奈には言ってたんですよね?」





「言ったんじゃなくてバレちゃったんだけどね...。沙奈はちょっと鈍すぎたのよ。でもごめんなさい」






「まあいいですけどね!でも私...月華様に今までタメ口使ってたなんて...」





「全然いいのよ。これからも学校にいるときはタメ口にして?みんなに怪しまれちゃいけないし」





「え!?なんか申し訳ないっていうか...」





「いいの!今まで通りに接して」





「わかりました...」





沙奈には悪いけど私は内心それどころじゃなかった。





「そんなことよりも私はデザート食べに来たの!早く行かないとなくなっちゃう!」





「ほんとに食い意地張ってますね。こんなときまでデザートですか?」





「うるさいわね、栞奈。ずっと我慢してたの!」





「はいはい。お供しますよ...ってもういないし」





栞奈の言葉を最後まで聞かずに私は食べ物コーナーに向かって走り出す。





そのあと私はたっぷりとお皿にデザートを盛り付け、堪能していた。





「月華様」





そんなとき現れた龍と爽。





「あ!2人ともさっきはありがとう。翅たちに対抗してくれて」





「あれのせいで騒ぎが大きくなってしまったのではないかと思い、反省しています」






「どうせああなることは決まっていたのよ。2人のせいじゃないわ。むしろ感謝してる。ありがとう」





「いえ。それより知られてしまったこと大丈夫なのですか?」





「まあ大丈夫じゃない?」






「うわ、さすがミスてきとう」






「はぁ?...ってお前か、生意気くん」





「そうでーす!」





なんか生意気だなって思ったら生意気くんだった。






「この前はもうちょっと真面目に管理人やってたのに」





「え...管理人?なんで知ってるんですか!?」






「あ、気づいてなかったの?この前の宿泊研修で徠花と龍と爽と一緒にいたの、私」






「ああ!途中でいなくなった人か!じゃあ俺が作ったあの場所月華様に見てもらえてたんですね...」






「ちゃんと見てたわよ。それにあのときの真の言葉もしっかり聞いたわ。ありがとう。すごく嬉しかった」





「俺も良かったです」






「生意気くんがこんなに立派になっちゃって...」






「何だかおばさんみたいですね」






「前言撤回。やっぱりお前は生意気くんだわ」





こんなやり取りも何だか懐かしい。





「サバトは残り10分となります。お帰りの準備をお願い致します」





「え?残り10分!?早く食べないとっ」





突然のアナウンスに持っていたデザートを口に放り込む。





「お腹いっぱい...」





「え!?もう食べ終わったんですか?」





「さすが食い意地張ってますね...」





「うっさいわね。ほらもう行くわよ」





「へいへい」




私は前世からの知り合いみんなに挨拶をしてから外に出る。





「あ、月華様ー!」





ぎゅっ





抱きついてきたのは翅。





なんか久しぶり。





いつもこうやって抱きついてきていた。





「おい」





そして朔夜に剥がされる。





「月華様。話し合って決めたことがあるんですが...」





徠花も駆け寄ってきた。





「なに?」





「やっぱり見てからのお楽しみってことにしときます」





「え?なになに?気になるんだけど!」





「そのうちわかりますよ」





「僕すっごく楽しみ!」





「翅!なんのこと?」





「おったのしみー!ですよ?」





気になりすぎて夜も寝られないかもしれない。





「じゃあまた明日ね、凛」





「うん、みんなじゃあね」





最後は凛って呼んでくれたこと徠花なりのけじめだったんだと思う。





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