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第3話

これが私の前世。




今、魔法族と魔族は敵対はしてるんだけど人間界で暴れることはできないから睨み合いが続いているって感じかな。




徠花...楓とはまた再会することができたから良かったんだけど、他の従者2人とは未だに会えてないんだよね...。




あれから100年以上経ったのに。




魔界の住人は長生きで年もあんまりとらないからそこまで長い時間ではないけどね。




それに私が魔女であること他の魔法族とかにはわからないような魔法をかけてるから深緑の国の人たちにも気づかれてはいない。




多分翅と朔夜でも気づかないと思う。




魔法族も魔族も人間に交ざって生活している人もいれば、人間から姿を見られないようにして暮らしている人もいる。




だからクラスにかつての深緑の国の国民がいたりもするの。




それはそれで懐かしいし嬉しい。




魔族と一緒のクラスはちょっと嫌だけど...。




あとね、人間界に魔法族協会ができたらしいの。




楓はそこの幹部で今日も一緒に帰ってくれない...。




でも私が初めたサバトを今も引き継いでくれてるのは嬉しい。




私がやってきたこと無駄じゃなかったのかなって。




あと1番驚いたのは魔法族協会の会長は人間だってこと。




“見える”人間なんだって。




そういう人間も増えてきてるらしい。




まぁ私も一応今は人間なんだけどね。




「...じゃあ班決めを始めろ」




急にみんなが立ち上がって騒がしくなった。




なになになに!?




「なにぼーっとしてるのよ。早く!」




「え?なにが?」




「は?先生の話聞いてた?」




「全く」




「はぁほんとにもう...今度の宿泊研修の班決めをするんだって。4人組で」




「宿泊研修があるの!?」




「そこから聞いてなかったの?ほんと何してたのよ」




「前世の回想」




「えっ...。う、まぁいいわ。早くあと2人探すわよ」




「はぁーい」




私と楓は一緒の班なのは最初から決定みたいなもん。



あと探すのは男子じゃないといけないのかな?




「城崎さん、本橋さん!俺らと組も?」




「は?俺らと組むだろ?」




「俺たちは約束してたんだけど」




うわぁ...なんか男子が寄ってきた!




っていうか約束とかしてないし...。




「楓モテすぎ...」




「凛のせいよ。その美貌といい、誰でも絡みやすいとこといい、天然なとこといい、モテる要素全部持ってるじゃない...それなのに無自覚なんだから...」




「へ?なんのこと?」




「なんでもないわ」



??




楓は時々変なこと言い出すからなぁ...。




とか思ってたら急に歩き始めた楓。




「ごめんね〜!私たち中村くんと橘くんと約束しちゃったんだ!」




約束してないのに急に輪の外にいた2人を指名しだした楓。




ビクッと2人が反応する。




「そうよね?2人とも?」




「は、はい!」




うわ、可哀想...。




逆らえないもんあの2人。




だって前世の上司に言われたんだからね...。




前世、私を守ってくれていた可愛い可愛い護衛くんたち。




きっと昔から徠花にこき使われてたんだろうな...。




でも私のことバレないようにしないと。




なんか心苦しいけどバラすわけにはいかない。



「2人ともよろしくね!なんか楓がごめんね...」




「は?私があそこの男子共から助け出してあげたんでしょ?」




「はい、そうですねすみませんでした」




「よ、よろしくお願いします...」




「よろしくお願いします」




中村くんと橘くん緊張してるの丸見えだし。




「そんな固くなくていいんだよ?」




「は、はい!」




チラチラ楓を見てる




「もう終わったことなんだからそんなに怖がんなくてもいいでしょ。今は人間ってことになってるの!」




「そ、それ言っていいんですか!?」




今度はチラチラ私を見る。




「事情は知ってるわ。私も“見える人間”だから」




そう、私は“見える人間”で通してる。




その方が何かと都合がいいし。




「あ、そうなんですね...」




「やぁやぁ、御機嫌よう。さっきから見てたけど未だに上下関係が厳しいんだね〜。そんなんじゃ人間界ではやっていけないよ?」




急に現れた男にめちゃくちゃ挑発されてる楓。




クラスにいる魔族のやつ。




魔王の側近だったらしい。




そんなのに乗るほど楓は子供じゃないけど。




「チッうっせぇ失せろ」




「わぁ怖い怖い。俺はただ連絡しに来ただけなんだけど」




「は?」




「仕方ないから教えてあげるよ。魔王はもう生まれ変わって復活している。そっちは昔自分たちを逃がしてくれた女王もいないんでしょ?女王に見捨てられた3大従者だけで俺らに勝てるのかな〜?」




「魔王が復活しただって!?」




「もうとっくの昔にね。せいぜい頑張りなよ」




「チッ」




またも舌打ちをする楓。




私は動けないでいた。




憎しみがまた心に宿って魔法が漏れかけていた。




「凛!凛!大丈夫だから。だめよ。抑えて」




「...ハッ!ごめんなさい」




「どうして城崎さんに魔法が...」




「人間なんじゃ...」




しまった...!見られてしまった...!




幸い魔族とかには気づかれていないようだけど。




目が泳いでいる楓。




「いや、あのこれはね」




「楓。もういいの。2人ともここで元気でいてくれたことほんとに嬉しかったわ。私の名前は...月華って言えばわかるかしら」




二人が息を呑み、跪こうとする。




「やめて。魔族にバレるでしょう?ここから口外したら許さないから。まだ徠花にしかバレてないのよ」




「わかりました...。俺、月華様が復活なさったこと知れて...本当に嬉しいです」




「俺たちが未熟なせいで亡くなったんだとずっと考え続けていました」




2人ともそう言いながら泣き始めてしまった。




「ごめんなさい...。あなたたちを今度こそ守り抜くわ。逃げるなんて手段を使わずに」




「守るのは俺たちです!もっとがんばります!」




「ありがとう...今はクラスメイトとしてよろしくね?」




「はい!」




この2人ならきっと黙っていてくれるはず...




私が生まれ変わったこと知れ渡ったらみんな混乱に陥るに決まってるしね




「決まった班から書きに来い!」




「じゃあ私書いてくるね」




「凛、ありがと〜」




「ありがとうございます」




「あのさ、2人とも敬語やめて?怪しまれるでしょ?楓だってもう敬語じゃなくなったのに」




「えっ」




「わかりました」




「おい、橘。マジで?」




「月華様の命令だからな」




「わかってるじゃない中村くん」




「はい、あ、いやうん」




そのぎこちなさが面白くて楓と揃って吹き出してしまった。




次の時間は眠くなったからサボることにした。




「楓〜次サボるね〜」




「はいはい。言い訳しとけって言うんでしょ」




「楓さっすがー!よろぴこ☆」




小言を言われそうだったのでお気に入りの場所までダッシュ。




そこは屋上に続く階段。




日が差し込んでいい感じなのよね。



わっ!




いったぁ...。




なにかにつまづいて転んだ。




へ?なにこれ。




ペトペト触ってたら急に動き出した物体。




「うわぁ!」




「んぁ?」




「きゃっ」




こちらを思いっきり睨みつけてくる男の子。




「は?人?」




「チッ。俺のせっかくの睡眠時間が...」




「うわぁごめんなさいごめんなさい!」




「お前だれ?」




「へ?」




「名前言え」




「城崎凛です。あなたは?」




「俺の事知らないのか?」




「は?」




「いや、なんでもない。俺は永野春稀。そんなことよりお前コーラ買ってこい」




「え?なんで?」




「俺にぶつかってきただろ?」




「え、だってあれは...」




「城崎さんが授業サボって、寝てましたーって言ってもいい?どうせ友達に言い訳とかしといてもらってるんでしょ?」




「買ってきますからっ」




私は永野くんの言葉を最後まで聞かずに自販機にダッシュ!




やばい人に遭遇しちゃった...。




もうほんとに今日ついてない。




「あった!」




またコーラを持ってあそこまでダッシュ。




「ん、さんきゅ」




「あ、私そろそろ行かないと...」




「凛」




「はい?」




「明日もここ来い」




「いやあの明日は...」




「あーあ、せっかくの俺の睡眠時間が誰かさんが急にぶつかってきたせいで少なくなっちゃったなぁ...俺これからバイトなのに疲れてできないかも...どうしよう...」




「あーあーあー来ればいいんでしょ来れば!」




ニヤッと笑う永野くん。




「それじゃあまた明日ね、凛」



私は何も言わずに立ち去る。




「おい、また明日会おうね、春稀くんは?」




ムカッ




なんなんだよこいつ...。




私はアッカンベーをして、全速力で逃げた。




ガシッ




「それで逃げてるつもり?遅すぎ」




すぐに捕まった。




「お前バカ?そんなんで俺から逃げられるわけないだろ?」




「バカじゃないし...」




「これからお前のことバカって呼ぶわ。あ、バカ。俺との今日のやり取りとか絶対誰にも言うなよ?言ったらどうなるかわかってるよな?」




コクコク




わかんないけどなんか怖いから言わないでおこ。




「よし、じゃあまた明日。おバカさん」




イライラッ




あいつ性格悪すぎっ。




ドSオーラがすごいし。




強引すぎだし。




...顔はかっこよかったけど。




でもあんなんじゃ絶対モテないよ!




いくら顔が良くても中身が問題ありすぎだもん。




とか思ってたのに。




その時間が終わったあとの休み時間。




いつもこんなに廊下混んでたっけ?




なかなか教室に辿り着かないんだけど。




「来るわよ!」




「キャァァァァァァァァァァ」




何事!?




「ねぇねぇこれ何が起きてるの?」




となりにたまたまいたクラスメイトに聞いてみた。




「今日は春稀様が登校してるんだって!もうすぐここを通るらしいの!」




「春稀様?だれ?」




「え、凛ちゃん知らないの?永野春稀くんだよ。この学校に知らない人はいないって言うくらい人気の学校1イケメンの春稀様よ!」




「永野春稀!?」




もうそのクラスメイトは私など相手にせず、廊下を見つめて目を輝かせていた。




なんであいつがそんなに人気なのよ。




あいつただのやばい人じゃん。




一段と歓声が大きくなった。




もうすぐすぐ前を通るみたい。




来た...!




「春稀様ぁ!」




「今日放課後遊びに行きませんか?」




「今日は他の子と約束しちゃったからごめんね!また今度行こうね!」




「あの、今日の昼休み体育館裏に来てくれませんか?」




「いいよ!」




「はぁ...かっこいい...」




ちょっと待って。




誰あいつ。




絶対同一人物じゃないって。





何あのキラキラスマイルと優しい対応。





私、ドン引き。





とりあえずこの空気に耐えられないから抜け出したいのになかなか抜け出せない。




「凛!」




そこに白馬に乗ってやってきた私の王子様。




じゃなくて楓。




私の手を引いて抜け出すのを手伝ってくれた。




あぁ、私は最高の親友を持ったな...。




「何一人で百面相してるのよ。気持ち悪い」




「ひどっ。でもありがと楓。死ぬかと思った」




「なかなか戻ってこないし、永野春稀来てるって噂あったから巻き込まれてるのかなって思って助けに来た」




「楓様ぁ...!」




「何年あんたのこと見てきたと思ってるの?行動くらい把握してるわ」




楓にはお世話になった記憶しかないわ...。




「あ!ねぇちょっと聞きたいことがあるんだけど」




「なに?」




「永野春稀ってなんで人気なの?」




「そりゃ顔も性格もいいからじゃないの?なんか性格は裏ありそうで私は好きじゃないけど」




「だよねだよね!だってあいつの性格めっちゃ悪...」




危ない危ない。





言ったら殺される...。




「ん?なに?」




「なんでもない」




「そう。それでなんであいつのことが気になるの?」




「いや今日初めてあの人のこと知ったから」




「え?名前も聞いたことなかったの?」




「うん」




「疎すぎ。ほんと恋愛とか関心ないわよね」




「だってどうでもいいもん。楓もどっちかって言うとどうでもいい方でしょ?」




「私は好きな人いるよ?はぁ...誰か凛のこと拾ってくれないかしら...」




「え、ちょ、いるの!?初耳なんだけど!だれだれ?」




「言うわけないでしょ」




「むぅ...」




「あ、もうすぐ次の授業だ。早く戻らないと」




絶対話しそらされた!




楓の好きな人聞きたかったのに...。




キーンコーンカーンコーン




「じゃあね!凛!」




「楓、会議頑張ってね〜」




はぁ...。




やっと放課後になった。




今日はほんとに災難な一日だった。




明日もあいつのところに行かないといけないんだよね。




憂鬱だな...。




あ、でも絶対あのキラキラスマイルの秘密を暴いてやろっと。




楓side




私の名前は本橋楓。




またの名を徠花。




本当は魔女だけれどもそれを隠して人間界の学校に通っている。




そんな魔女や魔法使いもたくさんいるしね。




それに我が主、月華様の近くにいたいから。




あの方と初めて会ったのはそう、100年以上も前のことよ。




私たち家族はあの日突然魔族に襲撃された。




その一週間前の襲撃で全てを失い、お腹を空かせながら一家で魔界を彷徨い歩いていた時のことだった。




両親は魔法が上手くない上に空腹のせいもあり、もうフラフラだった。




あとはまだ魔法の使えない妹と弟。




だから人より魔力が高かった私が戦うしか無かった。




襲ってきた魔族の数はかなり多く、10以上もいた。




魔法が得意とはいえ私だって1週間前の襲撃と空腹でもうあまり体力は残っていなかった。




家族を守りながら、やっとの思いで最後の1人を倒し、体中から血を流した状態で私は気を失った。




そのときに救ってくれたのが月華様。





私が目を覚ますと、今と変わらない素直で無邪気な笑顔を浮かべて喜んでくれた。




それからの月華様の治癒の術と必死の看病のおかげで私の怪我はすぐに治った。




「徠花、あなたの魔力はとても高いわ。きっとその魔法でこの国を救えると思うの。もしよかったらだけど私の従者にならない?」




「ぜひならせてください!」




この瞬間私は何があっても一生月華様にお仕えすると決めた。




私の命の恩人である月華様に...。



そのあと争いで私たちを守り、命を落とした月華様を私が見つけたのは月華様...凛が幼稚園生のときのこと。




人間から姿を隠し、この近くを歩いていたとき聞こえてきたのは誰かの泣き声。




困っている人を助けるという精神を月華様から学んでいた私はすぐに人間の姿になりその子の元へ駆け寄った。





「どうしたの?」




「ままがいなくなっちゃったの...」




下を向いて泣く女の子。




「ほら顔を上げて。一緒に探そ?」




「うん...え?らいか...?」




「え...?」




どうして私の名前を...?




「らいか!らいかだー!げっかだよ?」




そう言って抱きついてきた幼い月華様。




その温もりと感じた魔力で月華様だとすぐにわかった。




「月華様...!」




思いもよらぬ再会のあと私は幼稚園時の姿になり、凛の同級生として過ごすことにし、10年たった今もずっと一緒にいる。




「楓、会議頑張ってね〜」




学校が終わり、放課後になった。




そう、今から私は会議に行く。




なんの会議かって言うと魔法族の幹部会議。




って言っても人間が多いんだけどね。




“見える人間”




そういう人間が増えている。




そのなかには凛のように魔女や魔法使いから転生して人間になった者もいる。




でも転生したら魔法は使えなくなっちゃうのよね。




凛は例外だけど。



「お疲れさまでーす」




「あ、徠花ちゃんお疲れさん」




幹部は全員で5人。



そのうち3人は人間。




会長と副会長も人間で2人は夫婦。





2人とも前世が魔法族で深緑の国ができる前にはもう亡くなっていたらしい。




そして




月希(つき)は元気?」




月希とは凛のこと。





そう、凛はまだ気づいていないけど2人は月華様の両親。




「元気ですよ!むしろ元気すぎてうるさいです」




「よかった。ほんとに徠花ちゃんがいてくれて助かるわ!世話が焼けるでしょ?あの子」




「はい」




「即答だね(笑)」




「あ、そんなことより会長、副会長。報告があります」




「なんだい?」

「なに?」




「魔王が復活したそうです。もうずっと前に」




「なんだって!?」

「なんですって!?」




「それは生まれ変わったってことだよね?」




「そうです」




「また正面衝突なんてことになったら困ります。ここは人間界なのに」




「そうよね。人間たちに影響が出たらいけないわ」




「魔王...いつ復活したんだろうな」




「そういえば徠花ちゃん、その情報どこで手に入れたの?」




「うちのクラスにもともと魔王の側近だったやつがいるんです。そいつに言われました」




「側近がその学校にいるってことはもしかしたら魔王もいるかもしれないわね...」




「確かに...そうかもしれませんね。私も警戒してみます。お互い正体は隠してるはずだけど凛と会っちゃったら大変なことになると思うし」




「そうだね、頼んだよ」




「ちわーす!」




「お疲れ様ですっ!」




(ひびき)陽葵(ひまり)ちゃん来ました〜」




「2人ともお疲れ様」




これで魔法族幹部5人全員が揃った。




響は“見える人間”。




陽葵ちゃんは魔女。




陽葵ちゃんは前世の争いがあったとき、様々な事情で深緑の国に行くことができない魔法族たちの中の1人だった。




いわゆる私たちからすると外の人間。




あの頃はまだ幼くて私や月華様が行くとあそぼーって寄って来てくれていた。





特に月華様とはすごく仲が良かった。




「じゃあ全員揃ったから会議始めるよ。まず始めにさっきのこと徠花ちゃんから報告して」




「はい。魔王が生まれ変わって復活したとの情報が入りました。またあんな争いにならないためにも警戒をお願いします」




響と陽葵ちゃんもすごく驚いた顔をしていた。




「りょーかいです」

「わかりましたっ」






「どんどん行くよ。次は最近のここら辺の治安について。どう思う?」




「人間として暮らさず、姿を隠して生活してる魔族や魔法族は今も昔のように会ったら殺し合いを始めるというような事態をたまに見かけます」




人間として暮らしていない陽葵ちゃんだからこその発言だった。




「俺の友達の“見える人間”に魔族と関わりがある人がいるんすけど、最近魔法族の魔法使いが暴れていて、魔族がたくさん被害にあってるってのを聞きました」




次に発言したのは響。




「魔法族の魔法使い...か。ある特定の人物がってことだよね?」




「そうっす。確か2人組とか言ってたような...」




「それは大きな争いの火種になりかねないわね...」




「次のサバトかなり大々的にやるし、治安も良くない中での開催...魔王が復活した今魔族が襲撃してくる可能性もなくはないし危険な気がします...」




「そうね、徠花ちゃん。サバトについても考えないと」




「治安は悪化している。引き続き、警戒を続けよう。次は徠花ちゃんと副会長が言っていたサバトについて」




「私はまずは魔族が入れないようにしっかりとしたセキュリティが必要だと思います」




「私もそう思います。幹部5人だけでは警備が足りないのではないでしょうか」




「そうだな。魔力が高い奴に協力を要請した方がいいかもな」




「あの...あの子連れてきたらどうですか...?」




私が言ったあの子とは凛。




響と陽葵ちゃんにはバラさないようにしないといけない。




「うーん...大丈夫かしら...」




「誰っすか?」




「ちょっとね...」




2人は不思議そうな顔をしている。




「いいんじゃないか?バレても最悪魔法族の中なら大丈夫だろう」




「あの子がいいっていうかわからないけど...」




「とりあえず聞いてみますね」




「わかった。じゃあ他の魔力が高い奴にも協力を要請しておく。他に何かあるか?」




「ありません」




「じゃあ今日はここまで。各自サバトの準備で自分の分担は進めておいてくれ」




「「はい」」



2人組...か。




よほど魔力が高い人なんだろう。




少し前と比べても最近の治安はかなり悪化している。




その2人のせいというのも大きんだろうな...。





なんとかしないと。





今頃凛もパトロールしているだろうし、私も凛のところに行こうっと。



凛side




私は学校から帰宅し、近所のパトロールをしていた。



さっきからもう3件も争っているのを見つけた。




“見える人間”という設定だから魔法は使っちゃだめ。




対魔法族魔族用の魔剣を使って争いを鎮めている。




「凛ー!」



「あ、楓!おつかれさま!」




「ありがと。いきなりで悪いんだけどさ、次のサバト参加してくれない...?」




「は?え?絶対やだ!」




「ねぇお願い!」




「え〜!なんで?」




「治安が悪いし、何が起きるか分からないのよ。そういうとき裏でチャチャッとやってほしいの。だめ?」




悩む...。



バレたら困るし...。




「っていうか私は“見える人間”だよ?そこに居たら変じゃない?」




「大丈夫。“見える人間”なんてたくさん来てるから」




やっぱり時代は移り変わったんだな...。




まぁそれならいい...かな?




「じゃあ...いいよ」




「ほんと!?」




「うん」




「やった〜!よし、会長に連絡だ」




「え、ちょっと待って。なんで会長に連絡するの?私のこと言ったわけじゃないわよね?」




「あ...」




え、楓酷くない!?




「違うのよほんとに!あーもうちょっと待って」




プルルルルプルルルル




「もしもし会長?凛がいいって。あ、はい。それで凛に会ってくれませんか?えっと今ちょっと怒りのオーラが...はいそうです副会長もです。え?あーはいよろしくお願いします」




楓は会長と電話していたらしい。




「ちょっと来て!早く!」




「え、なになに!?」




楓に無理やり連れてこられたのはよくわからない建物。




「ここ私たち幹部の会議場所」




「なんで私が...?」




「いいからいいから!」




また無理やり手を引かれどっかの部屋に連れて行かれた。




「失礼します」




「失礼します?」




「どうぞ」




入った先には男の人と女の人。




会長と副会長...かな?




「こんにちは。初めまして凛ちゃん」




「初めまして。で私は何故ここに?」




「凛。ちゃんと会長と副会長のこと見なよ」




「え?」




そう言われて改めてちゃんと顔を見た。




なんだかどこかで会ったことあるようなすごく懐かしいような...。




「久しぶり。変わってないね“月希”」




「もう覚えてないかしら」




!?




私は目を見開く。




「お父さんっ!お母さんっ!」




「覚えていてくれたのね。あんなに小さい頃だったのに」




「当たり前でしょ!なんでどうして...」




「私たちも生まれ変わったんだ。お前みたいにもう魔力はないけどな」




嬉しすぎて大泣きしながら2人の胸に飛び込んだ。




「ごめんね、月希」




「ずっと会いたかった...」




「ごめんなごめんな」




謝ってばかりの両親。




「聞いて月希。もうあなたには新しい家庭があるでしょ?いつまでもお母さん、お父さんなんて呼んでちゃダメよ」




そう、私には新しい家庭がある。




温かくて優しい家族。




「でも...私はどっちも大好きな家族だから!」




「月希...」




また抱きしめ合いながら思わぬ再会に喜びを噛み締めていた。




「よかったわね、凜」




「ありがと楓」




「それで...サバトのこと月希も参加してくれるんだよね?」




「うん...」




「何も無いといいけど...なんかあったらよろしくな」




「うん!」




次の日




ピピピピッ




ガシャン




「...」




こんな感じで起きたら9時。




や、やばい。




もう遅刻確定...。




ってことで1時間目はサボり、あのいつもの場所へ行くことにした。





ん?待てよ?




なんか忘れてるような...。




ドンッ




「うわっ」




ギャァァァァァ




忘れてた!




なんで忘れたの?私バカになったかも!




「お前は元々バカだ」




「なんで心の声が聞こえるの!?」




「声に出てたよバカ」




「あ、あ、じゃあ私はこの辺で...」



「行くなよバカ」




「バカバカバカバカうっさいわね!」




「バカにバカって言って何が悪い」




「黙れ二重人格!」




「お前あれ見てたのか...でなんでお前は俺見て騒がないんだ?」




「は?自意識過剰?なんで私があんたなんか見て騒がないといけないのよ」




「気に入った。お前明日から俺の下僕な」




そう言ってニヤッと笑った永野くん。




「は?絶対無理」



「俺今からそこら辺歩くとたくさんの女子に囲まれるんだよね〜!城崎さんにいじめられたって泣いたら凛どうなっちゃうかな?女の闇って怖いよね...」




「やめて、なるから!そのキラキラスマイルほんとに気持ち悪い。で何すればいいの?」




キラキラスマイルからまたニヤッという笑いに変わった永野くん。




ほんっとムカつく。




でも女子のいじめの方がよっぽど怖い気がするから...。




「俺の言うこと全部聞け」




「は...」




でも女の子たちの闇怖いしな...。




「お返事は?」




「はい...」



やだもう最悪。




絶対地獄の毎日が始まるよこれ。




「じゃあ手始めにコーラ」




「また?」




「早く」




「はい...」




私これでも女王なのに...。




春稀side




俺の名前は永野春稀。




たまにしか学校には来ていないが、一応ここ光葉高校の1年生。




学校に来るのはめんどくさいし、やらないといけないことが他にあるから。




顔は自慢に聞こえるかもしれないが、その辺のモデルとかアイドルよりはよっぽど良い自信がある。




学校に来ると、女子から騒がれるのも鬱陶しい。




今までの経験からそれでも優しくした方がいいということはわかっているから最高のつくり笑顔を

身につけ、鬱陶しい女子の言葉に相手してあげている。



そして今俺はコーラを待っている。




買ってきているのは城崎凛。




昨日あいつを初めて見たとき、俺はなぜか生まれて初めての気持ちに陥った。




きっとこれが一目惚れなんだと何となくわかった。




俺を見ても媚びない所、強気なところ、でも天然でバカなところ。




話しながらそんな性格を知って余計に好きになったんだと思う。





こんな下僕だなんてやり方であいつをそばに置こうとする自分は卑怯だとわかっているけどこれ以外思いつかなかったんだ。




絶対あいつを落としてやる。



凛side




「はい、永野くん」




永野くんにコーラを渡す。




疲れた...。




「おう。それより永野くんじゃない。春稀って呼んで」




「へ?」




「呼べ」




「は、るきく...ん」




「違う。春稀」




「やだやだやだ!」




無理恥ずかしすぎる...。




「呼ばないとキスすんぞ」




「!?」




キス!?




え、待ってなんで春稀くんの顔が近づいてきてるの...!?




「は、春稀!」




「はい、よくできました」




またニヤッと笑う。




キラキラスマイルもムカつくけどこの顔ホントにむかつく!




この人キスとかほんとにやりかねないからな...。




私のファーストキスをこの人に奪われる訳にはいかない...!




「もうすぐ私次の授業行かないといけないんだけど」




「まだ休み時間にもなってないだろ?」




「だって休み時間なんか呼び出されてるんだもん」




そう、なんか知らないけど私が学校に来ると必ず下駄箱に紙が入っている。




いつどこに来てください



っていう紙。




行くとあんまりしゃべったこともないのに急に好きです付き合ってください!とか言われるんだよ?




あんまり喋ったこともないのに好きって意味わかんないよね。




付き合ってってどこに付き合えばいいのかわからないし。




そこそこ仲良くて私も好きな人だったら私も好きだよって言うけど、どこに付き合うの?って聞いたらみんな逃げて行くの。




ほんとに意味不。




でも行ってあげないと可哀想だし...。




「誰に呼び出されてるんだ?」




「知らない男子。いつもなんかよくわからないけど呼び出されるの」




「それ告白だろ!?」




「え!?あれ告白だったの!?」




「じゃあいつもなんて言われるんだ?」




「好きです付き合ってくださいとか...あれ告白だったんだ...好きって言ってくれるのは嬉しいけどどこに付き合えばいいのかわかんなかったの...」




「はぁ...思っていたより落とすの大変そうだな...」




春稀く...春稀がなんか言ってたけど声が小さくて聞こえなかった。




「なに?」




「いや、なんでもない」




「とにかく行ってくる!」




「あ、おい待て。好きじゃない人となんか乗せられて付き合うんじゃねぇぞ?」




「わかってる!」




私の事心配して言ってくれたのかな?




意外と優しいのかも...。




そんなわけないか。




春稀side




何が好きじゃない人となんか乗せられて付き合うんじゃねぇぞ?だよ。




これ俺が墓穴掘ったようなもんじゃないか。




告白だってこともわかんない純粋な上に毎日告白されるほど敵はたくさんいるってことか...。




もう学校やすんでられねぇ。




って言うか俺なんでこんなに1人の女子のために頑張ってるんだよ。




俺らしくない。




あぁイライラする。




俺を好きにさせたあいつが悪いんだよ...。



凛side




「それでどうしたの?呼び出しって」




春稀が告白なんて言うから意識しちゃうじゃん。




でも違うかもしれないし...。




「あの...好きです。もしよかったら付き合ってくれませんか?」




うわぁ!告白だった...。




こういうときはごめんなさいでいいんだよね?




「ごめんなさい」




「そうですよね...なら友達からじゃだめですか?」




「友達なら...」




「メアド交換してください!」




「はい」




そして私はその男の子と友達になった。




いいのかな?これで。




「ありがとう!」




「うん!」




教室に戻ると楓に怒られた。




「なにしてんのよ!?遅刻の上に1時間目サボり?私がどれだけ言い訳に苦労したか...」




「ごめんなちゃーい!あ、ほらほらサバトに出てあげる代わりってことで!」




「ほんとにもう...」




「あ、ねね。そんなことよりさ。私が毎日されてたの告白だったんだって!」




「そんなこと知ってたわよ。あんたが超絶鈍すぎなだけ」




「え!?知ってたの!?あ、そうそう友達からってことでメアド交換したんだけどいいのかな?」




「は?メアド交換?明日から苦労するわよ?鳴り止まないメールの通知」




「大丈夫だよ。そんなに私と交換したい人なんていないから」




「もう知らないから...」




ピロロン




「携帯鳴ったわよ凛」




「誰だろ?」




「ゲッ」




なんでこいつが私のメアド知ってんの。




〔春稀‥昼休み弁当持って来い〕




〔凛‥なんでメアド知ってんの?〕




〔春稀..さっきお前の携帯借りた〕




〔凛..は!?〕




〔春稀‥昼休み待ってる〕




「最悪...楓、今日一緒に弁当食べれない。ごめん」




「なんで?どした?」




「なんでもない...」




「そう」



楓に全部言いたいけどバレたらあいつに絶対なんかされる。




楓への罪悪感も半端ない...。




「お前ら〜席に付け〜」




まだ大半の女子は教室にいない。




きっとあのキラキラスマイル野郎に騒いでいるんだろう。




「はぁ...今日もかっこよかった...」




「でも2日続けて来るなんて珍しいわよね?」




「確かに!」




「なんでだろうね...」




帰ってきた女子たち。




あいつが学校来るのって珍しいんだ...。




来なくていいのに...!




昼休み、私はまたあいつのところへ...。




またなんか言われるんだろうな。とほほ...。




「凛、ちゃんと来たんだな」




「まあね...」




私はママが作ったお弁当を開ける。




春稀は...購買で買ったパン。




「それ自分で作ったのか?」




「お母さんがつくった」




「お前料理したことないのか?」




「あるもん!ただ...寝坊...しちゃうから...」




またニヤッと笑われた...。




絶対バカにされた!




「じゃあ明日から俺の分の弁当も作ってこい。そうすれば寝坊もしないだろ?」




「え、絶対まずいもん...」




「いいから作ってこいよ?」




「まずくても知らないから!」




早く起きないといけないのか...。




起きれる気がしない。




っていうか春稀が今食べてるパン...!





「あんな行列ができる購買で女子に囲まれながらよくパン買ってこれたわよね」




「あぁ俺が行ったら全員譲ってくれた」




「は!?」




こいつの影響力そこまでとは...




「まぁ顔はいいっていう自覚あるし」




真顔でそれ言われるとほんとムカつく。




「嫌味?ブスの前でそういうこと言わないでよ」




「お前...自覚ないの?なんで毎日のように告白されるかわかってんの?」




「うーん...それがわからないのよね...」




「はぁ...」




なぜかため息をつかれた。




今私何もしてないのに...。



あ、そうだ!




今日こそあれを暴いてやらなければ...!




「ねぇ春稀。なんでキラキラスマイルなんか作ってるの...?」




途端に春稀の表情が陰った。




あれ...聞いちゃいけないことだったのかな...?




「やっぱりいいよ答えたくないなら」




「俺...昔の仲間の中ではリーダー的な存在だったんだ...。でも俺はいつも寄ってくる女に冷たく当たって。あるとき女たちの恨みが爆発し、仲間のうちの俺の仲良いやつを傷つけた。だから俺は...俺が嫌いな女にも優しく接しようって決めたんだ...」




突然話し出した春稀は珍しく感情的でいつもと違った。




春稀がこんな闇を抱えていたなんて...。




「あぁ...なんで俺こんなことお前に...」




「春稀がそんなに悩んでたなんて知らなかった...」




「俺は黒い部分をたくさん抱えてる。こんなことまだ序の口だ。こんな俺に関わったこと後で後悔するかもな」




「黒い部分?そんなの私だって春稀くらい、もしくはそれ以上あるわよ?」




「お前、本気で殺したい相手とかいるのか?俺はいるんだ...」




「いるわよ...絶対あいつだけは許さない。何があっても殺してやるって決めてるから」




「は...?」




「何よその顔。変な顔!」




春稀の驚いた顔が面白かった。




それ以上にこの雰囲気を明るくしたかった。




「ほら、春稀らしくないよ。そういうしおらしいの!シャキッとしなさいっ!」




「うっせぇんだよ。お前が俺に命令とかすんな。するのは俺だけだ」




「わぁ怖い怖い逃げろぉ!」




「おいっ!」




狭い通路で鬼ごっこ。




なんだかちょっと幸せな時間だった。




「ねぇ春稀?さっき私が言ったこと忘れてね?」




「おう。俺が言ったことも忘れろよ?」




「わかってる」




鬼ごっこは終わり、もうすぐ昼休みも終わる。




「私、教室戻るね」




「明日から俺の指定した時間にここ来いよ?」




「は!?授業中はやめてね!?」




「さぁどうだろ?」




「シカトするからいいし!」




「城崎さんがいじめるぅ」




「わぁ!大きな声出さないでよ!」




「絶対来いよ?」




「はぁーい...」




私はそれから毎日のようにあいつに呼び出されている。




もうほんとに授業中に呼び出すのやめてほしいんだけど。




っていうかなんで今までまともに学校来てなかったのに毎日のように来てるのよ!




おかげで私の平和な生活が...。






でも明日は楽しみにしてた宿泊研修!




楓とずっと一緒とかもう最高すぎるよね。




それにさすがにあいつも宿泊研修なんて来ないと思うし。




思う存分楽しむの!




って思ってたのに...。




昼休み、弁当をもってあいつの所へ行ったら




話題は宿泊研修の話に!




「明日宿泊研修なんだろ?」




「うん!そうだよ」




「めんどいな」




「え?春稀も行くの!?」




「おう」




まさか行くとは...。




「行っちゃいけないのか?」




「あ、いや、いいよ...」




「顔が嫌って言ってるぞ」




「え!?」




反射的に顔に手を当てる。




「俺はお前が嫌でも行くから」




またニヤッと笑う春稀。




せっかくの宿泊研修が...。




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