イエッサー
今回の主犯の一人、アルベルトは完全に俺に屈した。
だがもう一人、合衆国大統領直属のシークレットサービスだったマーカスは…
「何を血迷った事を言ってるんだ?アルベルト」
「…マーカス。もう、俺は降りる。そして、罪を償うさ。お前も、諦めた方が良い。この野郎を許すつもりは無いが、タクがこの野郎を守る意志がある限り、殺す事など無理だ。…今のを見てたらお前も分かっただろう?」
「…ふざけるな。俺は、計画を最後まで実行するだけだ」
そう言うと、マーカスは大統領に銃口を向ける。
「ひ、ひぃっ!」
あ~あ、意固地になってるのか、はたまた、この大統領が心底クソ野郎なのか。
「やめときなって。こんな奴、殺す価値も無いだろう?」
俺は、縮地で移動し、マーカスの手から拳銃を絡め取って言った。
マーカスは、全てを諦めた様にその場にへたり込んだ。小声で「すまん、息子よ…」と呟いていたのだが…何やら事情があったんだろうが、いちいち聞いてると話が進まないからスルーしよう。
事が収束した事を感じた俺は、何事も無かったかの様にソファーに座り、テーブルに足を乗せた。
さて、予定が大幅に狂った。一時はどうなる事かと思ったが、なんとか交渉のテーブルに着く事ができそうで一安心だな。
隠密スキルとステルスマントを駆使してのプレデタープレイ。所々でバット○ン姿の俺を見せて目撃者を残し、アイツは何者だ?と思わせる事にも成功したかと思う。
成り行き上、殺人を犯してしまったが、人命救助…しかも大勢の人質と合衆国大統領を救出する為のやむを得ない行為だっただろうから結果オーライだろう。
今後も無益な殺生はしないつもりだが、相手が明らかな敵となれば仕方ない。
アルベルトの事、ファミリーの事、考えなければならない事が増えたが、それも目的が達成されれば解決するだろう。
なんせ、俺自身が好き勝手やっていい権利はもう目の前なのだから。
「さ、流石、伝説の傭兵デザート・ゴーストだ。助かったよ」
大統領は俺の訪問を知ってたんだから、正体に気付くのは当然か。まあ、アルベルトも俺の名前呼んでたしな。
俺はバット○ンっぽいマスクを脱ぎ、顔を露にした。
「初めまして、合衆国大統領。本日はお招き頂き、ありがとう」
「それにしても…デザート・ゴーストの強さがこれ程までとは。アダチから話しは聞いていたが、実は半信半疑だったんだ。謝るよ」
「まだまだこんなもんじゃないんだがね。じゃあ、本題に入ろうか。アンタは今から大統領として、アメリカ合衆国の代表として、俺と友好条約を結ぶんだ。」
「……………ホワイ?」
あれ?伝わらなかった?だったらもっと丁寧に行くか。
「友好条約だよ。アメリカ合衆国は、何時如何なる時も、この俺の行動に関与しない。俺の存在を治外法権として認めろ…って事だ」
すると、大統領は呆れた様に小さく笑った。
「友好条約?治外法権?…仮に私がそれを認めても、国民が納得はしないだろう。
そうだ、特別に私直属のボディーガードとして雇ってやってもいいぞ?引き受けてくれるなら破格の報酬を約束しよう」
破格の報酬!?…いや、騙されるな!雇われでもしたら自由が制限されるじゃねぇか!それに、これは交渉じゃないんだ。ペースを乱されたら駄目だ!
「正直、君の力は恐ろしい。このまま放置すれば、世界のバランスを脅かし兼ねない程に。なら、その力をこの私の為に、ひいてはこの国、この世界の為に使ってみないか?」
「……アンタ、何か勘違いしてないか?俺はアンタが何でも言う事を聞くって云うから助けてやったんだ」
「そ、それは感謝しよう。君はこの合衆国大統領を救った。引いては世界を救ったと言っても過言ではない。今後もその力を私の為に使ってくれるのであれば、地位も名声も与えてやれ…」
ダン!
俺はジャブよりも速いかかと落としで大統領のテーブルを真っ二つに壊す。
突然の音に驚いた大統領だったが、不遜な俺の態度に少しだけ不満気な表情を浮かべた。この男、余程自尊心が強いと見える。
「…だから、何を勘違いしてんだ?アンタが大統領だろうがなんだろうが、この場での力関係は俺の方が上なんだよ。只でさえ、アンタのクズっぷりを聞かせられて、正直助けるのも癪だったんだぞ?」
冷静に、だが力強く呟く。会話のイニチアシブを取り戻す為に。
「アンタが俺達傭兵をどう思って様が、正直俺には関係ない。だって、傭兵は戦うことが仕事なんだから。その点では、アルベルトやマーカスの気持ちは分かるが理解しようとは思わない」
俺の言葉に、もはやアルベルトは何も言わない。が、マーカスは涙に濡れた表情を怒りに染めて、俺を睨んだ。
「なんだと…貴様に何が分かる!?無謀な命令で戦地に赴き、囮にされて殺された息子の気持ちが!親の気持ちが!お前に分かるってのか!?」
「…ん~、お気の毒だとは思うし、俺の考えを押し付ける気も無いけど、…俺は傭兵時代、自分の仕事に誇りを持っていたぜ。実際に自分の命を懸けてまでやる仕事だからな。
うちの傭兵団はリーダーが良かったから、明らかに間違った奴等の依頼は断ってたし、作戦では常に誇りを持って戦った。
無駄な作戦で命を落としたってのは確かに親としては納得いかない部分もあるだろうし、本当に無駄な作戦だったってんなら大統領を許せないのも分かる。
でも、俺が息子だったらだけど、文字通り命がけで仕事をやり切ったんだから、悲しんで復讐されるより…そうだな…ただ喜んで欲しいかな。立派な息子だったって、誇って欲しいかな。うん」
俺は自分の考えを押し付けるつもりは無いし、人それぞれ考え方や置かれた状況が違うんだから仕方がないとは思うが、でも素直に思っている事を言った。
すると、納得はしてないのだろうが、マーカスは膝から崩れ落ちて号泣し始めた。
「さてと、話しの続きだ。俺を味方にするのか?敵にするのか?アンタははどっちだ?」
オッサンは終始穏やかで、俺に対する反発は見せなかった。
だが、このジジイは、俺に恐れつつも随所に自分の権威を押し付けようとしてくる。
だから、俺も少しだけ横柄な態度で応戦したのだ。
「…君がいくらデザート・ゴーストと云えど、要求が過ぎるのではないかね?私の一声で世界最強の軍隊が動くのだぞ?」
「やってみるかい?俺はあっちで万の軍勢と戦った事があるが、別に万の軍人全員と戦う必要は無かったよ。何故だか分かるか?」
「…………そんな、出来ると云うのか?」
「やったんだよ、俺は。スキルを使って単身親玉の元にたどり着き、一騎討ちで息の根を止めてやった。そしたら軍は解散、めでたしめでたしだ」
どんな屈強な軍隊でも、頭を討てば崩壊する。隠密スキルを限界まで上げた俺には、それが出来る。
「今回の様なテロをもし俺が企てたとしたら…多分、作戦開始から一分で…いや、30秒でアンタの首を獲れただろうな」
「誓おう!今後、私が在任中は、アメリカ合衆国は君と友好条約を結ぶ!」
顔面蒼白にしてジジイが敬礼した。でも、それじゃあまだ半分だ。
「在任中じゃ駄目なんだよ。大統領引継事項に入れておけ。そして、責任を持ってが次の大統領に俺の事を説明する場を設けろ」
「イエッサー!!!」
よし、これでミッションコンプリートだぜ!
「じゃあ、早速戦闘機一つ出してくれる?」
「戦闘機?別に良いですが…何故?」
「決まってるだろ?さっきの話を聞いてなかったのかよ?」
俺は立ち上り、アルベルトを見る。
「ファミリーを助けに行くんだよ!」
一応、ここまでで一旦終了とさせて頂きます。一応このあとはバイオハザード4を追体験する案を考えてますが、保留ですね(^_^;)
要望があればまた再開するかもですが、別作品次第かなと。
もし、こんな作品をオマージュして欲しい!等の意見があったら感想欄で教えてください。
それではまた会いましょう!!