因縁の相手
今回のオマージュ作品
・ホワイトハウス・ダウン
side:合衆国大統領、ロナルド・トライブ
私はアメリカ合衆国大統領。すなわち、世界の王だ。私が一番偉いのだ!私がこの世界を動かしてるのだ!なのに、何故!?
「…何故だ?マーカス、何故シークレットサービスであるお前が?」
ホワイトハウス・ウエストウイング・オーバルオフィス。そこで私は、今まで私を守っていたマーカス・レイモンドの裏切りにあっていた。
このテロの首謀者は、目の前にいる男、マーカスだったのだ。明日、退職を迎えるハズだったベテランのシークレットサービスのマーカスが、何故?
マーカスの後ろには武装した男が三名。最早八方塞がりだ。
「…愛国心ですよ、大統領。貴方は、私が過去に見てきたどんな大統領よりも好戦的だ。貴方はいずれこの国を、いや、この世界に混沌を招く。だったら、その前に私が貴方を殺す」
「なんだと!?たかがボディガード風情が…!」
「その、貴方の他者を見下した態度…。私は、シークレットサービスとして三十年以上、この国の大統領を守って来た。中には大統領の器じゃない御方もいたが、それでも私は大統領の側にいれる事に誇りを以て仕事をして来たのだ。
だが貴方は、そんな私が命を懸けて御守りしてきた大統領の名を地に貶める男だ。そんな事は絶対に許せん!」
何を勝手な事を言ってあるんだ、この男は!?
「貴様が好もうが好むまいが、大勢の国民が私を選んだのだ!私は選ばれた人間なのだ!一国民でしかない貴様の感情など知った事か!」
「ふぅ。やはり貴方とは分かり合えませんな…やれ」
武装した男達が一斉に私に向かって銃口を向ける。
…ふざけるな。ようやく大統領になり、ようやく王になったのに!こんな所で…
ダン!
大きな音と共に後方のドアが開けられた。そこには、真っ黒な衣装に身を包んだ…バッ○マンが立っていた。
「…ふむ、取り込み中の様だな」
何者だ?こいつもマーカスの仲間……では無いな。マーカス達も怪訝な表情でバット○ンを見ている。
………まさか!?このバッ○マンの正体は!?
「状況的に見て、お前らがテロの首謀者か?大統領を殺すのか?」
「…誰だか知らんが邪魔をするな、コスプレ野郎。…殺れ」
バットマンの事など意に介さず、一斉に弾丸が放たれる。
無茶だ!いくら伝説の傭兵でも、多勢に無勢だ!
…………んん?どういう事だ?弾丸は確実に当たっているのに、バッ○マンが倒れる気配が無い!?
「…貴様、何者だ?」
マーカスと武装した男達が唖然としている。あれだけの弾丸の雨嵐を受けて彼は立っているのだ。まさか、あの衣装は防弾仕様なのか!?
「随分なご挨拶だな、テロリストさんよぅ。さて、大統領。条件次第ではアンタを助けてやらんでも無いぞ?」
彼が私の想像通りの男なら、彼なら、この状況を打破してくれるかもしれない。なら、私は彼の要求に最大限応えるしかあるまい。
「分かった!出来る限りの事はしよう!」
「出来る限り?」
彼の声色が曇る。出来る限りでは不服だと言うのか?だが、今は仕方がない!
「分かった!全ての条件を飲もう!だから早くコイツらを始末してくれ!」
「……分かった」
今のやり取りを静観していたマーカスが嘲笑しながら口を開いた。
「ふん。貴様一人で何が出来る?お前ら、コイツの服は防弾なんだろう。あれほどの強度だ、重量もかなりのものだろう。なら、動くのもままなるまい。取っ捕まえて服を脱がせてからじっくり殺せ」
男達が銃を捨ててバットマンに殴りかかる…が。
「ウォッホォ!」
パン
声と同時に、乾いた音と共に一人の男の頭が破裂した。
「ウホォッ!!」
続いてもう一人の腹に穴が開いた。
「なっ………」
「ウゥホッ!」
「うぎゃ!?」
動揺する最後の男は、首から上が吹っ飛び、壁にぶつかって血が飛び散った。
信じられない…これが、素手で幾多の戦場を歩いた男の強さなのか!
「……な、何者だ…貴様っ!?」
「何者?正義の味方だよ」
「…お、お前、に、人間か!?」
「ふむ。一応人間だが?」
「くそっ…あと少しだって云うのに…」
タンタンタン!
乾いた銃声の音が三つ、バットマンの背中に着弾する。
後方では銃を構えた傭兵。…まさか、あの男までもがこのテロに!?
「そんなコスプレしたって、俺の目は騙されんぞ…タク。」
「…アルベルトか。まさかアンタまでこのテロに参加してたとはな…。」
『アルベルト』。かつてデザート・ゴーストが在籍していた最強の傭兵団・砂漠の支配者達達のボス…。
side:バット○ン(坂本拓哉)
まさかボスまでいるとはな…。だが、他の仲間達はいないようだ。いれば俺も気付いてる。
「ウェーブ・コンバットか…。ここに来るまでに死んでいた奴らを見れば分かる。外面では無く、内面から人体を破壊されていたからな。そんな事が出来るのは、世界広しと云えど、デザート・ゴースト、お前だけだろう、タク。」
「…久しぶりだな、アルベルト。皆は元気かい?」
「ああ…元気だろうよ。今頃は勝ち目の無い戦場で元気に暴れ回り、そして死んでいる頃だろうさ」
「なんだと?どういう意味だ!」
「今回のミッションは、簡単な要人の護衛だと伝えてある。だが、実際は奴らを待ち伏せしている軍勢が千人。いくら腕が立とうとも五十人程度では成す術もあるまい」
「貴様…仲間を売ったのか!?」
「崇高なる目的の為には、多少の犠牲は付き物だろう?」
昔を思い出す。俺がいた傭兵団デザート・マスターズは、凄腕の傭兵の集まった最高のファミリーだった。皆気が良くて、楽しむときには思いっきり楽しんだ。このアルベルトは、そんなファミリーの父親的存在だったんだ。
俺が単身でテロ組織アルメイダに乗り込んだのは、俺の最強になりたいと云う身勝手な我が儘に皆を巻き込みたくなかったから。
なのに、コイツは…。
「アイツ等は今回のホワイトハウス制圧のミッションに否定的だった。まさか、仲間だと思っていた奴らに裏切られるとは…思ってもみなかったよ」
「裏切ったのはお前の方だろう!仲間だと思ってた?笑わせる、だったら何故俺を殺そうとした!」
「お前は強くなり過ぎたんだよ。単身でテロ組織を壊滅?馬鹿げてる。だが、お前はそれを成し遂げた。大きすぎる力のコントロールは難しい。だから、排除したんだよ。おかげでアルメイダに懸けられていた懸賞金もガッポリ頂いたしな。
ああ、他の奴等は、お前はアルメイダのボスと相討ちで死んだ事にしてるがね」
…俺は、正直復讐なんてどうでも良かった。考え様によっては、俺が異世界で今の力を手に入れたのは、俺が死にかけたからだとも思えたし、何より…心のどこかで信じたかったんだ。“親父”と思っていたコイツを!!
「さて、そろそろ三分だな。お前にさっき撃ち込んだのは、1mgでアフリカゾウが失神する程の麻酔弾だ。いかにお前でも、そろそろ効いてくる頃だろう」
麻酔弾?…笑わせる。あんなのじゃ俺の装備は貫けないし、仮に俺の身体に届いても、治癒スキルで掻き消してる。
「言い残す事はそれだけか、アルベルト」
「…まさか、そのコスプレ衣装は防弾仕様か?鉄板すら貫く弾丸だったのだが…まあいい。」
アルベルトが片手をあげると、背後から六人の傭兵が現れ、一斉に銃を俺に向けた。マーカスはちゃっかりアルベルトの背後に移動している。
「お前のウェーブ・コンバットは確かに凄まじい。だが、所詮は近接特化したスタイルだ。初見では面食らうだろうが、こうやって対策をとれば、あの時の様にお前は何も出来ない」
確かに、昔の俺なら…ウェーブ・コンバットのみの俺なら、銃弾の嵐に抗う術は無かっただろう。
「アルベルト。俺は、お前に殺されかけた。でも、そんなお前に感謝すらしてたんだよ」
「…何が言いたい?」
「俺はお前に殺されかけたおかげで、異なる世界を経験した。そして、そこで俺のウェーブ・コンバットは“オール・レンジ・ウェーブ・コンバット”に進化したんだ」
「オールレンジ?広範囲攻撃が可能になったとでも?お前は銃器を持ってないじゃないか」
銃?そんなもの必要無い。俺にはウェーブがあるからな。
「じゃあ、今度こそお別れだ…タク」
一斉にマシンガンから弾丸が放たれる。
…見せてやろうじゃないか、広範囲じゃなく全範囲に進化した、俺のオール・レンジ・ウェーブ・コンバットを!!