デザート・ゴースト(砂漠の亡霊)
今回のオマージュ作品
・Jesus
俺の名は坂本拓哉。異世界で魔王を倒し、つい先日異世界から帰還した元・勇者だ。
因みに、魔王を倒す前に、異世界の能力鑑定士に見てもらった俺のレベルは限界値の99。
獲得称号した称号は…勇者、ゴリラの王、武神、戦神、魔王を屠った者。
会得したスキルは、近接格闘…LV10※限界値、身体能力強化…LV10※限界値、気配察知…LV8、隠密…LV9、言語理解…LV6。
そしてオリジナルスキル。A.R.W.C…LV10※限界値、気功術…LV10※限界値。
私見だが、恐らくこの世界の一般の20代男性の平均レベルは3程度。因みに、総合格闘技の世界王者のレベルはおよそ10前後、異世界の魔王のレベルは90だった。
自慢じゃないが、もうこの世に俺を脅かす様な存在はいないだろう。戦いに於いてのみならず、俺を殺せる者等、いたら会ってみたいものだ。
「何故?何故分かったの!?」
女の腕を捻り上げて関節を極めると、女は身動きが出来ずに叫ぶ。
「上手く殺気を抑え込んでいた事から、お前はそこそこのアサシンなんだろう。だが、僅かでも殺気を抱いているのであれば、俺に隠すのは無理だ」
「お、おい、坂本君。これは、どういう事だ?」
「この女は、アンタを殺す為にアンタに近づいた暗殺者だったって事さ」
「なっ…なんだと?彼女とは一年前のパーティーで会ってるんだぞ?」
「なら、その時にはもうアンタの命を狙ってたって事だろう?」
「な…なんという事だ…。」
総理はショックで黙りこくってしまった。
「…さて、誰に頼まれたんだ?」
「言う訳無いでしょ?私はプロだよ?それより、アンタこそ何者なのよ?」
「俺か?俺は陸海空、全ての分野で史上最強の男さ」
「…アンタ、頭沸いてんじゃない?」
失礼な女だな。…美人だけど。
「……ふむ、お前みたいな美人を拷問するのは気が引けるんだが…どうする?総理」
「え!?そ、そうだな。一国の総理大臣の暗殺を企てたのだ。背後関係を知る事が出来るのなら、当然知りたいが…」
「…젠장(くそっ)…」
女が小さく、本当に小さく呟いた。総理には聞き取れなかっただろうが、超人的聴覚を持つ俺には聞こえた。
俺は異世界に召喚された頃、言葉が分からなかった。だから、必死で言語を覚えようと努力した結果、言語理解スキルなるものを習得したようなのだが、どうやらこの世界の言語にも有効だったみたいだな。
「総理、隣国と日本との仲って、今はどうなんだい?俺はここ五年程《《遠い所》》にいたから分からないんだ。」
俺が隣国と断定した事で、女は焦った表情で俺を見上げた。
「…北とは相変わらずだが、南とは表向きは歴史の問題であーだこーだ言って来てるイメージだが、それは南側のメディアコントロールで、実際は非常に良好な関係を築けてるハズだ」
「良好なのに殺されかけたのか?アンタは?」
「…可能性があるとすれば、政府間の内々の友好関係を面白く思っていない、右翼・又は個人による逆恨みか?私も一国の長だ。命を狙われてもおかしくは無いだろうからな」
「ふ~ん。じゃあ、もう少し聞いてみるか」
(韓国語)「お前に依頼した奴の名前は?」
依頼主がバレる…その危険察知したのか、女は奥歯で何かを噛む。すると、口からは血を吐き、ガックリと倒れてしまった。
「しまった!自殺か!」
総理が慌てている。…が、まだ辛うじて息があるみたいだし、これ位ならなんとかなるかな?
俺は掌に気を集中させる。すると、俺の手が白いオーラの膜で包まれる。気とは、魔力を体内で変質させた物で、気功術と云う俺のオリジナルスキルだ。
これにより俺の攻撃力は数倍になり、怪我をすれば治癒を行う事も可能。治癒は他者に対しても有効だ。異世界でも毒に効果があったから、薬にも効くと思うんだが…。
「…ゴホッ!ガハァッ!」
「なっ!?生き返った!?」
「いや、ギリギリ死んでなかったからだよ。死んでさえいなければ大抵の怪我は治せるんだ、俺は」
総理の俺を見る顔が変わった。まるで、未知の生物に遭遇して驚いてる顔に。
「き、君は一体…何者なんだ?」
何者だ?ってか…。
内閣総理大臣。一応、この日本ではトップの人間だ。なら、敢えて俺の正体を明かして、完全に後ろ楯になってもらえば当初の目的達成かな?
俺は自分の素性を、召喚前から召喚後、そして現在までを端的に語った。
総理の表情は、最初は懐疑的だった。だが、実際に俺の能力を見たのだ。その上、俺の召喚前の話に妙に食い付いて来た。
「中東のテロ組織を壊滅?…もしかして、“アルメイダ”の事か?それが本当なら、君はあの“砂漠の亡霊”か!?」
デザート・ゴースト。懐かしい呼び名だな。確かに俺は傭兵時代、そう呼ばれていた。
「幾多の戦場を銃器を使わず渡り歩き、白兵戦では無敵の強さを誇った事から砂漠の亡霊と呼ばれた、伝説の傭兵…。
五年前、アルメイダを壊滅させた作戦に於いて死亡したと聞いてはいたが…まさかと生きていて異世界に行っていたとは…」
「信じてくれる気になったかい?俺の言った事」
「ちょ!ちょっと待ってくれ!少し、考える時間をくれ!…いや、君の言う事を信じない訳じゃ無いんだ。ただ、あまりに突拍子も無い事ばかりで、整理が追い付かん!」
まぁ、そうだよな。この世界の人間に異世界の存在を教えたって、信じる訳が無いよな。
それより、やっぱり俺は死んだ事になってるのか。まあ、今更過去のしがらみは邪魔なだけだし、別にいいけど。
「で、総理。俺は長年の夢、“最強”はもう手に入れたから、あとは好き勝手生きて行きたいだけなんだ。その為には、法律やらなんやらは邪魔なんだよ。ただ、別に無法者になるつもりもない。だから、些細な事を総理大臣権限で見逃してくれればそれでいいんだ。
さっきも言った通り、暇潰しがてら、何かあれば協力してやる。どうだい?ほんの少し融通効かせてくれるだけで、史上最強の男を味方に出来るんだぜ?」
「…只でさえ化け物の様に強かったデザート・ゴーストが、異世界で更なる力を身に付けたのか…。
さっき渡した私の名刺があれば、君の要望にはある程度応えられると思うが、それで駄目な時は…ちょっとさっきの名刺貸してくれる?」
先程貰った名刺を総理に返すと、そこに総理は電話番号を記入した。
「…私の携帯番号だ。いつでも電話を寄越しなさい。」
「了解だ。」
………ひゃっほーーい!ちょっとクールぶってみたけど、これで目的達成だぜー!
「でだ。早速だがお願いを聞いてくれないだろうか?」
「…ホントに早速だな。別にいいけど、俺は自分が嫌な事はしないし、変な権力争いに加担するのも御免だからな」
「勿論だとも。実は、現在のアメリカ合衆国大統領『ロナルド・ドライブ』に関する事なのだが、実は彼は君の…デザート・ゴーストの大ファンなんだ」
ほう、俺の大ファンとな。まあ、俺がいた傭兵部隊はアメリカの依頼を多く受けてたし、その中でも異質な存在だった俺は、その筋では結構名が売れてたからな。
「デザート・ゴーストが生きていたと知れば、きっと大喜びで会いたがるに違いない。それを、私が仲介するとなれば、国としても大きな利益が生まれるだろう」
なんか上手く利用されているみたいだけど…、俺はもいずれアメリカにも乗り込む予定だった。平和的に目的が達成出来るのなら、まあそれも良いだろう。
この作品、なんかランキングに乗らない(ポイント的には20位以内には入っていたハズ)んですけど、どなたか理由知っている方、良ければ教えて下さい((T_T))