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第九十五話

 俺とライアンの制止を振り切るようにして威嚇合戦はなおも続く。


 猛禽はライアンと同様の魔法と思われる行動により周囲から砂や土を集め、鍵爪にグローブのように装着している。

 対する相棒はというと――。


「やめろ、相棒! 『びいむ』なんて正気じゃねえ!」


 冗談にもほどがある。基幹となる触手の一本に魔法円が現出していたのだ。

 但し、今まで見てきたものと少々異なる模様。

 触手の先端から三十センチほどに現出した魔法円は以前のままだが、魔法円から砲身部分となる先端までが枝によって補強されているのだ。


 何も慌てふためいているのは俺だけではない。

 今まで静観していた師匠やダリ・ウルマム卿までが焦り始め、射線上から避難を始めていた。流石に『びぃむ』の充填が始まるとなると話は変わってくるのだろう。

 いやいやいや、冷静に周囲を伺っている場合ではないよね。

 だがしかし、どうしたものだろうか?


 

「――ギッ!」


 っと、今の何? 今、俺の右側から奇声が聴こえたんだけども?

 クエクエ鳴いてた猛禽なら今も相棒を挟んで正面に居るし、もしも聞こえてくるならば前からのはずで……。


「ギィィィィィィ!」


 また、だ。されど、今回は音源を捉えることができた。

 って、俺の至近から聞こえてくる音というか声の発生元は相棒の触手だった。そりゃそうだ、相棒は俺を護るように展開しているのだからな。

 でも今まで一度だって声を出したことなどないのに、どうしてこのタイミングで? ちょっとびっくりしちゃったじゃないの。


 おっと、余計なことを考えている間に威嚇合戦の決着がついたようだ。

 

 猛禽は今の今まで膨らませていた羽根が萎み、翼で顔を覆うようにしている。その上、ライアンの、ベスタの腰の辺りにその顔をうずめていた。

 ベスタの腰ではあるが、あそこは恐らくライアン本体でいえば頭の辺りだろうか?


 まぁ、余程怖かったのだろう。

 猛禽は『びぃむ』の威力は知らないだろうけど、八本もの太い触手と分岐した鋭い触手を向けられ、更には俺でもビビるほどの威嚇音を受けたのだ。


「一時はどうなるかと思いましたけど、大丈夫そうですね? カットス君」


「俺もどうしたものかと考えましたが――って、相棒!」


 緊急事態は今も去ってはいなかったようで、チャージが完了を示す相棒の魔法円が現在進行形で激しく点滅していた。

 相棒は俺の疑問を感じ取ったのか、空いている触手の一本でサムズアップ。いやいやいや、親指立てれば良いってもんじゃないから!


 直後、何もない空中へ向けて『びぃむ』が放たれた。

 扇状に広がっていく『びぃむ』の赤黒い光。扇状の先の方では若干淡い色合いにも見える。しかも、射程そのものがかなり短くなっている模様。


 まさか、これ……あれか?

 直進してかなりの射程距離がある『びぃむ』が『I』で、扇状に広がる『びぃむ』が『V』ということ? ってことは数字でもなんでもなく、ただ形状を現していたということか。

 なんだよ、もう、考えすぎちゃったじゃないか!


 ただ、あれだ……。

 チャージが完了してたら、必ず撃たないといけないという事実は覚えておかないと、ね。実際に相棒がそう判断している時点で、恐らくはどうしようもないことなのだ。

 それと、相棒が自己判断で『びぃむ』を活用したということも覚えておかなけらば。今回は威嚇の末の暴発に近いとはいえ、次がないとも限らないのだから。



「おい、シギュルー! アレに喧嘩を売るのは今後一切なしだからな!」


「キュゥ」


「一歩間違えれば、お前の巻き添えで俺まで消し炭だったんだぞ? 本当にわかってんのか?」


「キュ、キュゥ」


「すまないな、魔王」


「いやいやいやいや、俺も相棒を止められなかったわけだしさ。気にしなくていいよ」


 確かにひとつ間違えれば、ライアンと猛禽も含めて辺り一帯が消し炭になっていたのは間違いない。でも、相棒はそういうことをするような存在ではない。

 そういった部分では、俺は十二分に信用している。何せ、俺のスキルなんだからな!


「そう言ってくれると助かる。

 そも、俺がお前を呼んだのは……周囲の警戒を任せようと思ったからなんだが?」


「キュッ!」


 変わり身の早い猛禽だこと。あと、何だろうか? コイツ、翼で敬礼してるんだけど……、どういうことよ?

 それにしても猛禽の視線を追うと、ベスタの腰の辺りを見ているようだ。やはり、俺の睨んだ通り、あそこにライアンの頭があるのだろう。まぁ、ライアン本体は五歳児相当でちっちゃいしな。


 っと、そうじゃなくて。


「警戒?」


「ん? あぁ、そうだ。訓練された長命種であれ、人の目には限界があるからな。専門家に任せるに限る」


 そうかもしれない……だけど、それだと俺の物見の役回りが不要になってしまうではないか!

 開拓団の代表としてはもうお払い箱で代役まで立てられ、更にはアグニの爺さんまでいる始末。その上、物見の仕事まで奪われるとなると、先代勇者サイトウさん貢献によるメッキの剥げる速度が増すんですけど!

 何の役にも立たない勇者として笑われる程度ならまだしも、裸一貫で放り出される可能性もないとはいえない。


 やばい! 何かで本当に役に立たないとマズイ。

千葉県民の受難中です。

台風の翌日には電気が復旧したんですけどね。頻繁に瞬間停電が起きるんですよ……トホホ。

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