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第七十二話

 本人的には全く必要とせず、意図すらしていなかった徹夜。の後、迎賓館内にある私室へと帰りついた。


「事情は聴いているわ。戻ったばかりの父上たちとの会議があったのでしょう?」


「おはよう、ミラさん。そうなんですよね、もう眠くて眠くて」


「雑務は私とル・リスラがやっておくから、昼くらいまでならゆっくりできるかしら、ね」


 ミラさんがとても優しい。なんだこれは? もうすでに俺は夢の中にいるのではないだろうか? と、以前の俺であれば疑問に思っただろう。

 しかし、いろんな意味で近しい間柄となった今ではこれが標準となっている。以前の態度からは掌を返したが如く、俺にやたらと甘くなった。その上、時と場所を選ばず、やたらとボディタッチしてくるのだ。

 正直なところ、こんなにも甘々でベタベタしてくるミラさんは気持ち悪い。気持ち悪いのだが、そう強く否定できないところがまた俺の弱点なのかもしれない。


 っと、そんなことは今、どうでもいい。早く眠り、疲れを取らないと。身を寄せ、直に体温を感じさせるミラさんを引き剥がし、俺はベッドへと向かう。



 眠りに落ちる前に少し情報の整理をしておこう。


 ベスタはライアンで、師匠の弟である。そしてライアンは魔人族という、人族の上位種族。ならばライアンは、人族と魔人族との混血? 普通ならそう思うだろが、実はそうではないそうだ。

 原種と上位種との交配の場合、ほぼ確実に上位種が生まれる。という事実があるらしい。これに関しては人の形をした生物に限定されず、その他の動物や植物にも該当することであるのだという。由って、身体的な特徴等は師匠にそこそこ似ているライアンでも、純血の魔人族にあたるらしい。

 仮に変態エルフメイドことキア・マスとの子宝に恵まれた場合は、まず確実に魔人族の赤子が生まれることになるという。この件、変態の父親であるダリ・ウルマム卿は承諾していない事柄だそうで日を改めて説明をする必要があるのだと、皇帝陛下と宰相閣下は苦言をこぼしていた。


 次にライアンがラングリンゲ帝国の密偵として働いていたこと。

 帝城の迷宮にあるトラップに引っ掛かるという何ともお粗末な出来事は実はヤラセであり、あくまでも師匠を騙すための布石であったのだという。

 ライアンがベスタを名乗っていたように、魔人族の男児がベスタを名乗ることは多々あるという。そして過去に帝城の迷宮構築に当たり協力したベスタに接触し、その内実を聞いていたのだという。そこでライアンはそれを利用することにしたのだと。

 今回、役回り的に宰相閣下は泥を被ることが決まっていたのだと聞いた。ただ、アグニの爺さんの絡みで再び辛酸を舐めることになるとは考えていなかったらしいが。


 そんなライアンの密偵業だが、基本は巡回薬師の延長線上にある。実はこの帝国内にはベスタを名乗る魔人族の男性が三名も居るらしい。ライアンを含むこの三名、揃いも揃って薬師である。そこは魔人族の男児の宿命にも似た特殊性に原因があるのだとと、ライアンは語る。その内の一人が帝城の細工を施した者でもあるらしい。


 ベスタという称号に関して当人であるライアンたち魔人族とは別に、勝手に名乗りを上げる者たちが存在するという。

 但し、ベスタを名乗るうちに請われ弟子を取ることもあるが、弟子たちがベスタを名乗ることはない。弟子たちはベスタというそれが魔人族の称号であるのだと認識し、条件を満たすことが叶わず名乗らないのだと。

 で、勝手に名乗っている連中は偶然か、それ以外はベスタという言葉が『腕の良い薬師』を指していると勘違いでもしているのだろう。と、ライアンは語った。


 是正しないのか? と問う宰相閣下に対して、

「彼らが勝手になることで俺たち魔人族の攪乱になる」

特に

「人族至上主義を掲げる連中の目を騙すにはもってこいだ!」

と叫ぶほど。

「でも、魔人ではないベスタの薬師の腕は基本、信用に値しないけどな」

とも言っていたが。



 ……あ? 寝てた。

 で、師匠の奥さんであり、ミラさんの母親でもあるファビアさんの動向。


 師匠もライアンも、そのファビアさんとは手紙のやり取りがあるという話。ただ、師匠とライアンでも、手紙のやり取りで使われるルートが異なるらしい。師匠はオニング公国の暗部を介して、ライアンはファビアさんの持つ独自ルートを介して行われているのだという。


「俺の居場所、筒抜けなんだよ……。魔王のこと、笑えねぇ」


と、ライアンは嘆いていた。『ざまぁ!』と返せないところが寂しい。

 師匠を領地へと返すにあたり、どうするのかと問えば?


「俺が兄さんの代わりに魔王の支援に入る。俺も兄さんと同じ『解析』のユニークスキル持ちだからな! でも、密偵業は都市部でも籍を置かないと無理だろうな」


「密偵は他の者に引き継がせればよい。他にも正式なベスタは居るのだろう?」


とは、皇帝陛下の言葉だったか。

 あ、もう、ダメだ。うぅ、瞼が……。まだ、やらないといけないことが山積みdだというのに。

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