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第三十五話

「ちょっ……」


 柔らかい何かが……。いや、誤魔化すのは止そう、これはミラさんの肌の感触。

 学校行事等で女子と触れ合うとしても、精々が手を握るくらいが関の山だった俺。

 兄と弟はいても姉や妹は存在しないために、家族のふれあいとしてもそんなものは知らない。兄は筋肉質で胸板など硬いだけだし、弟は細身で筋張っていただけだ。母にしても小学校に上がって以来、抱きしめてもらうようなことはほぼなかった。

 

 そんな俺の背中に今! あのミラさんの柔肌が……。タオルというか手拭いっぽい質感の薄い布に包まれたおっぱいが!

 あぁ、女の子の体ってこんなにも柔らかいのかよ。


「こういう風にすれば、触手も反応しないのね。

 それにしても不思議よね。あの触手はどこから生えているのかしら?」


 今はミラさんの言葉に構っている暇はない。

 感触を堪能し、じゃなかった。俺自身の天然触手が反応してしまっているのだ。

 なんとしてもこの場をやり過ごさなければならない。


「あのミラさん、そういうことは大人になってからに、しませんか?」


「殿方を満足させる方法は母上から教わっているわ。実践したことはないけど」


 何を教えているんだ、ナニを! この世界の貴族様とやらは。

 ちょっと、いえ、かなり興味が湧きます。でも、ミラさんまだ13歳。

 婚約者なのだから平気だろうという考えもなくはないけど、やっぱダメだ。ここでそれを許してしまうと俺は歯止めを失い、ミラさんを滅茶苦茶にしてしまうことになる。そんな予感というか、未来が見える。


「楽しみに待ってますよ。ミラさんの成人までね」


「もう頑固ね」


 ミラさんはそれだけ言い残すと俺の背中から剥がれ、風呂場を去った。

 なんとも刺激の強すぎるひと時だった。いまだに、あの胸の感触が残っている。

 思春期故に色々と溜まるモノは自分で処理することにしよう。幸いにも、極上なオカズを手に入れられたのだから。





 翌日、心身ともにスッキリとした状態で交渉3日目を迎える。


「そちらも何とか落ち着いたご様子、本日は改めまして開拓先を選定いたしましょう」


「ええ、宰相閣下のお気遣いのお陰ですかね。

 それで、北でしたか? 未発掘の遺跡が存在するとか」


「こちらの地図では、軍事施設と記されています。未発見の何かが、と考えるには十分かと思われますな」


「そうですね。その周囲でそれなりに豊かな土地があれば最良なのですが」


「多少難しい開発となりましょうがこの河川、ウェンデル川沿いで頻繁に氾濫する地域が存在します。土地としては十二分に肥沃でありますが、開発に失敗した開拓団も幾つか」


「治水ですか……。さすがにそれを最初にというのは困難を極めるでしょう。

 ですから、その地域の更に外周辺りに拠点を築くのが宜しいのではないでしょうか?」


 今日は皇帝陛下の姿は見えない。宰相閣下のみが訪れ、師匠とともに開拓団が向かう先を選んでいる。

 俺もミラさんと一緒に、その二人の話し合いを見守っていた。土地勘がなく、開拓に関する知識もないので、俺には口をはさむ余地がなかったのだ。

 ミラさんは多少齧ってはいるそうだが、俺に付いて二人の話す内容を事細かく説明をしてくれていた。


「では出来る限り南側を選びましょう、北では冬越えが厳しいですからな」


「僕も諸国を巡った経験はありまして、その土地土地の気候風土はそれなりに熟知してはおりますが、ラングリンゲの北となれば相当に厳しいようですね」


「ええ、雪が深く降り積もり道という道を閉ざすため、冬の間はまず身動きが取れなくなりますな」


「では、河川の氾濫地域とそれほど離れずに、南側へと進みましょう。

 この辺りはどうなのでしょう?」


 宰相閣下と師匠は地図を差しながら話し合いを進めている。勿論、俺やミラさんもその地図を眺めていた。

 ラングリンゲ帝国の南側と北側を隔てるように流れる大河、それがウェンデル川。話の内容から察するにウェンデル川を境に、気候風土が激変するようだった。


「遺跡が存在するであろう場所からそう遠くなく、肥沃な氾濫地域にもほど近い。ただ、遺跡方面に向かうのであれば橋を建設する必要がありますな」


「この地図の縮尺で考えると、橋を架けるのは不可能なのではありませんか?」


 そう、師匠の言うように橋を架けるには川幅が広すぎた。幸いというべきか、流れ自体は緩慢な川のようで個人的に遺跡調査を行うのであれば、渡し船という選択肢もあるようだ。


「架橋は見送ります。ですが、川港は作って損はないでしょうね」


「ですな。上流にはそれなりの都市もあります。物流にも、漁業にも使えましょうな」


「そうするとやはり、治水が要になってしまいますね。まぁ、それは後々」


「ではこの辺りということで皇宮に戻り次第、斥候をやり精査いたしましょう」


「お願いしますよ、閣下」


 ただ見ているだけで話がどんどん先へ進んでいく。

 結局、開拓団は組織されることが決定している。そして向かう先ももう決まったよなもの。

 それを急ぎ決定している理由が、リンゲニオン自治区という所の姫から逃げるためだというのがなんとも釈然としない。

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