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交渉

とある神絵師様に死神ちゃん描いてもらいました!

↓Twitter

musasu_LOVE_nao


眠れない。今日は散々歩いて、エマによるドーピング(健康体に戻るやつ)も切れた僕の体は、疲れているに決まってる。なのに...


「眠れないんですね」


窓際から声がした。誰なんてそんな疑問は抱かない。もちろんエマだった。


「うん、ちょっとね。疲れてるはずなんだけど」


「それでユウキ様、私に何かご用があるそうですね」


「あぁ、うん。てゆうか...良いや。なんか理由わかったし」


なんでわかったんだって聞こうとしたけど、そうだ。エマは心が読めるんだった。


「何か[代償]を払う以外に、命を伸ばす方法はないの?」


「そんな都合の良い話...ありますよ」


「あ、あるんだね」


「まぁ、どんな事にも代償は付き物ですよ。この方法は、ユウキ様が死神になることで不死になれます」


「うん、で。その代償は?」


「まず、絶対に死ねません。だからカレンさんと結婚したとしてもユウキ様は一切歳を取らず、カレンさんだけが老いていき...あとはわかりますね?」


「うん」


「あとは、死神になるって事はつまり人の命を刈り取るって事です。あと、成り方が少々特殊ですね」


「うん、分かった」


「あと...死神は死ねませんが、やめる事ならできます。それが事実上の死ですね」


「うん、で。どうすればなれるの?」


「はい。えっとですね、他の死神から死神の力を継承します。つまり、私の死神の力をユウキ様に継承するのです」


「それってつまり、エマは死ぬってことだよね?」


「はい、まぁ。死ぬっていうか。まぁ...元々死んでますし」


「死んでるって、ああ。死神は死者がなるのかな?」


「はい、そうです」


「でもエマは大切な友達だし、その案も却下かな」


「いや、私。ユウキ様の為ならこの命差し出します。どうかご検討を」


「うん、わかったけどさ。なんでそんな僕に固執するの?」


「えっと、ちょっと長くなりますけど。話しますね」


そう言ってエマはゆっくりと語り始めた。


******


「まず、エマという名前になにかピンと来ないですか?」


「えっと、エマ・ワトソンとか」


「いやその人死んでないし、そういう有名な人じゃなくて。身近な人で」


僕は16年の記憶の中の奥深くまで掘り返していった。


「エマ...。もしかして、小学校の頃となりの席の...?」


「はい、それが私です」


「あ〜、よく三人で遊んでたよね。で、なんで死神に?」


「私もユウキさんのように病弱で、病気の治療のためにアメリカに来たって、覚えてますか?」


「うん、覚えてる。たしか1年ちょっとでまた転校しちゃったよね」


「はい、病気が治らないと言われたので実家に帰りました」


「そうだったのか...」


「はい、そのあと地元に帰り延命治療をしましたが10歳の誕生日で死んじゃいましたね」


「......」


僕は衝撃のあまりあいづちをうつことすらできなかった。


「それで、ユウキ様は死後の世界とか。信じていらっしゃいますか?」


「う〜ん、僕も死に近い身だしあんまり考えないようにしてるからなんとも言えないなぁ」


「そうですか...。私が見たのは、地獄でも天国でもなく、学校でした。そこでユウキ様や、カレン様。クラスメイトたち、先生が待っていたのです」


「うん」


「でも、その道はいくら走ってもユウキ様たちの元へたどり着けないのです。走ってるうちにだんだん世界は歪んでいき、真っ暗になりました」


「それで、明るくなって。今度は裁判所のような場所に着きました。そこで、無意識に足が動く方向へ歩いていきました」


「着いた場所は法廷で、沢山の裁判官が居ました。そこで私は、死神になれと言われたのです。ここからはまぁ、かなり長くなるので話すのやめますね」


「長い話になるって言ったのにやめちゃうのね」


「揚げ足取らないでください!」


エマが笑いながら肩を軽く叩いてきた。


「それで、今回の仕事として渡された書類に書かれていた名前。何か聞いたことがあると思ったら、それがユウキ様だったのですよ。」


「うん、それで?僕のこと覚えてたの?小学生の頃の姿だし、同姓同名だってたくさんいるでしょ」


「はい、最初は記憶が曖昧だったんですけれど。だんだん確信っていうか、なんか。この人だなって」


「あ、そうなんだ。でもさ、それでもたかが友達に命かけるっておかしいでしょ。説明になってないと思うけど」


僕はエマが嫌な顔すると思ったが、それとは全く別の反応で。顔を赤らめながらこちらを見つめて来た。


「...言わせないで下さいよ、ユウキ様。あなたのことが好きなのです...」


意外だった。まあ小学校の頃だし、好きとか恋愛的な感情はわからないからだとは思うけど。


「それで、どうするんですか?ユウキ様のためならこの命、喜んで差し出しますよ」


「うん、気持ちは嬉しいけど。せっかくの話し相手を失うのは嫌だし、なりより昔の数少ない貴重な友達だ、だから良いかな。本当に心変わりしたら、お願いするよ」


「は、はい。覚悟しておきます」


「また、どこか行こうよ。今日は一日中寝てようと思うから、明後日とか」


「ありがとうございます、散歩とかもいきたいですね!」


「うんうん、昔遊んだ公園とか行ってみようか」


そういうとエマは微笑んだ。まだ顔は紅潮したままだった。


少しの沈黙の後、エマが口を開けた。


「それじゃあ、お暇しますね」


「うん、また明後日。ていうかこれは僕が会いたいって思ったら会えたりってことなのかな?」


「ユウキ様が居ると思えばそこにいて、居ないと思えば居ないのが私ですよ」


「わかった、ありがとう。おやすみ」


「はい、おやすみなさい」


目を閉じたら、いつのまにか寝てしまった。


*******


「ューキ...ユーキ...ユウキく〜ん!!」


「はい、起きました!って、カレンか」


「私で悪かったわね、なに?もしかしてこんな可愛い彼女がいるのに看護婦さんとヤラシーことでもしてるわけ?」


「いや、僕にそんなコミュ力あると思う?」


「あんたは無意識に女を誑かせる才能があるから怖いのよ!」


「てゆうかなんで真っ先にそんな話題出て来るのさ、なに?優等生のカレンさんもそういうヤラシーことしたいんですか?」


「なっ!そんなわけないじゃん!......ぅそだけど」


からかわれたらからかい返す、それが僕の主義だ(その後に続いた言葉は小さくて聞き取れなかった)。


「あ、それで。これあげる!キャラメルフラペチーノ!ユウキ飲みたいって言ってたでしょ?!」


「いや、言ってないと思うけど」


「まあいいや飲も!お店で面白いストローあったから買ってきちゃった!」


そう言ってビニール袋から出したのはハートの形で吸い口が二つあるストローだった。


「これ、リアルで見るとかなりのインパクトだね」


「はい、飲も!」


「聞いてないし...」


「ヘッヘ〜!これは流石のユウキでも動じるでしょ!って!?」


「ほら、早く飲まないの?」


「私が甘かったわ...」


「ちょっと、カレン。飲むの早い」


カレンはダイソンに負けず劣らずの吸引力でグイグイ飲んでいく。そのせいで呼吸ができないのか顔が真っ赤になっている。


「もしかして恥ずかしくて顔が赤くなったのをごまかそうとしてるの?自分で持ってきたのに?」


「〜〜〜〜〜〜〜〜!?」


どうやら図星だったらしい、元々真っ赤だった顔がさらに赤くなって、一周回って真っ青になり始めた。


「ねぇ、息できてないよね?てゆうか僕の分も飲んでるよね?ねぇ?」


「っぷは!死ぬかと思った!」


「いや勢いよく飲みすぎだよね?もう少し味わって飲みなよ」


「うん、そうする」


そう言ってカレンがストローに口をつけた時、ドアのノック音とともに看護師さんが入ってきた。


「あらあら、取り込み中だったのね。ごめんなさいねぇ、おばさん今出ますので」


あの人は看護婦主任の噂好きの40代後半くらいの人だ、きっと明日にはこのことが知れ渡っているだろう。背びれ尾ひれ付いた状態で。


「ははは、見られちゃったね」


「別にっ!恥ずかしくないし!むしろ既成事実作れてラッキーくらいの気持ちだし!」


「はいはい、照れ隠しは良いから。ほかになんか用事あるの?もうすぐ面会時間終わるでしょ」


「ないよっ!うん、じゃあ。また明日!」


そう言ってカレンは僕の頰にキスをして、扉まで小走りで向かった。


「じゃね!」


「............」


不覚にも動揺して声が出なかった。まぁ別に、嫌ではないけど。くそ、言葉が出てこない。負けた気分だ。

カレンが帰ったあとは、昨日の疲れも残っていることだし、寝ることにした。


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