死神との出会い
だいぶ前に書いてたものを気分であげました
なにか、こう考えさせられるものをと妄想していたら。死を扱う恋愛ものなんかいいかなって感じがして。
カップリングが少々特殊かもしれませんが、たのしんでもらえたら幸いです。
僕は生まれながらにして病気があった。心臓の病気だ。病気がちな日本人の母とひょろひょろのアメリカ人の父から生まれた僕だ、まぁ妥当といえば妥当だろう。
初めて手術を受けた10歳の時に医者にあと10年生きられるか生きられないかと言われ、なんだかんだ6年生きてたりする。
だけれどその16歳の誕生日に異変が起き始めた。院内を歩くだけで息切れがして、息ができなくなる時もある。
そして衝撃的な宣告を受けた。
「ユウキさん、あなたは長く生きれて1年が限界でしょう。私たちも最善を尽くしましたがもう手の施しようがありません」
まぁ、仕方ないなと。諦めもついた。
小学校はかろうじて行っていたけど中学はほとんど病院で過ごした。
だからか毎日幼馴染のカレンが学校の話をしてくれるのが唯一の楽しみだった。
その時、コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。入って良いですよ、と声をかけて来客を促す。はて?誰だろうか、今はお昼時だ、カレンが来るには早すぎる。
そこに現れたのは、黒い長い髪に、フリフリのゴスロリファッションをした、一人の見知らぬ少女だった。
いや、外見からして少女とも言えないだろう。小学校中学年か、それ以下だ。何と言うんだか...。そうだ、幼女だ。
「ご機嫌よう、Mr.ユウキ。私はエマ。以後お見知り置きを」
「やあ、こんにちはMrsエマ。こんな僕に、何か用かい?」
「はい、御用があって参りましたの。簡潔に言わせて頂くと、私は死神です」
「死神?あぁ、そうか。僕はもうすぐ死ぬからね、それで、何の用だい?特に何をするわけでもないけど残された命は少ないんだ、大切に使わないとね」
「はい、その話です。ユウキ様はあと9ヶ月と21日で死にます。けれども、ユウキ様。もっと生きたくないですか?」
「そうか、僕の命はあと10ヶ月足らずか。良い皮肉だね、腹のなかには十月十日って言うけどそれより短いんだ。もっと生きたい?そうだねぇ、寿命を伸ばせるものなら伸ばしたいよ」
「それならとっておきの話があります、ユウキ様。寿命を延ばしたいのなら、他の物から奪えば良いのです」
「奪う?物騒な話だねぇ、僕は悪いことが嫌いなんだ。そんなことできないね」
「まぁまぁ、そう言わずに。例えばそこの花瓶に生けてある花、それを代償に寿命を1日伸ばせたりするんですよ」
「へぇ、面白いね。やってみせてよ」
そう、僕は冗談のつもりで言った。
すると、「では」というエマの声と共に花瓶に咲いていた花が枯れて行った。
「花、枯れちゃったね。この花好きだったのに」
「そうなんですか、でも。コレで寿命が1日伸びるんですよ?安いもんじゃないですか?」
「う〜ん、そうだねぇ。たしかに安いねぇ」
「さらに、[命の重さ]が重ければ重いほど伸びる寿命は長くなるんですよ。これを使えば永遠に生きられます」
「じゃあ、僕を捧げたらどれくらいの寿命が伸びるのかな?」
「でもそれって...」
「あ、仮定の話よ。だって僕を代償にして僕の寿命は伸ばせないもんね」
そう僕はおどけてみせた。
「そうですね...ざっと10年ほどでしょうか...」
「9ヶ月21日、あさっき増えたから9ヶ月22日?かな。それが10年、良いね、なんか」
「そうです!だから、これを使って長生きしませんか?」
「嫌だね」
即答だった。
「僕はそこまで生きるのに固執していないよ、神があと1年経たずで死ねというのならそれまでだよ。それよりももっと金持ちの権力者のところへいけば良い、彼らなら高値で買ってくれるよ。君がお金欲しいのは知らないけど」
「そうですか...」
「うん」
「......」
「......」
しばらくの沈黙の後エマが僕にこう言った。
「また、明日も来て良いですか?」
「良いよ、僕もちょうど暇つぶしの相手が欲しかったんだ。毎日来てくれると嬉しいな」
「それじゃあ、また明日来ます」
「また明日ね」
僕はエマに向かって手を振ると布団を深く被り昼寝をしようとする。
だがエマと入れ違いでまた入口から音がした。
「ュゥキ......ュウキ...。ぉきてる?」
「ん?ああ、ちょうど今寝ようとしてたとこ」
カレンだった。どうやら学校が終わったらしく制服のままで来ていた。(まぁ毎日そうなんだけれど)
「さっき出てった小さい女の子、誰なの?」
「ん?ああ、死神だよ。友達になったんだ」
「あら、ユウキが冗談言うなんて珍しいわね。機嫌良いの?」
「あぁ、絶好調さ」
別に嘘を言っているわけではないが理解してもらえなさそうだし、理解させようと努力するのも億劫なので適当に返す。
「病気、どうなの?」
「まぁ、ぼちぼちだよ。最近はまた少し良くなったかな」
「そうなのね。ちょっと散歩しない?病院の中庭とか、気分転換には良いと思うけど」
「ああ、良いね。最高だ」
僕はカレンに車椅子を押してもらい、中庭へ向かう。別に歩けないわけではないが車椅子を押してもらい散歩なんてのも良いものだなぁと思いつつ、中庭の植物を眺める。
「毎回同じものを見て飽きるかと思ったけど、たまに見るのが良いね。たま〜に見るのがさ」
「そうね、でもユウキもどこかに行きたいって思わないの?海とか、山とか。ちっちゃい頃好きだったじゃん」
そう、僕は小さい頃で病気がまだあまり深刻ではなかった頃、よく山に登ったり海で釣りしたりするのが大好きだった。
今も嫌いなわけではないが、外に出るのが億劫だったりもする。
だからたまに出るくらいがちょうど良いのだ。
「まぁ、今も嫌いじゃないけど。現状に満足してるよ、カレンが毎日来てくれるし。それだけで十分かな」
「もぅ、調子良いんだから」
カレンは中庭のベンチの隣に僕を置き、座りながら照れていた。
「そういえば、高校で進路希望あってさ。私の将来の夢何かわかる?当ててみてよ」
「そうか、将来の夢か」
唐突に振られた将来のこと。あと10ヶ月足らずで死ぬ僕にとって全く縁のない出来事だがカレンは別だ、カレンにはこれからの将来は何十年とある。もちろんイレギュラーな出来事もあるかもしれないが。
「カレンは可愛いし、歌もうまい。歌手にでもなるんじゃないか?街を歩いてればスカウトの一つや二つくるでしょ」
「そんなっ...?!たしかにこの前受けたって話をしたけどさぁ、別に私。アイドルなんか目指してないよ?それよりももっと大事なことがあるから」
「大事なこと?」
カレンの大事なことか、なんだろう。勉強も運動もできてなおかつ人脈もある物語のヒーロー(ヒロイン?)みたいなカレンだ、何にでもなろうと思ったらなれるだろう。
「私ね、看護師になりたいの。それでユウキの病気を治してあげたい」
「なぁ、看護師じゃ僕の病気は治せないぞ。直すなら心臓外科にならなきゃ」
まぁカレンはこう抜けてる部分もあるけれどそれもまた可愛さってやつだ。
「そうね、じゃあ私お医者さんになる。それでいつかユウキの病気を治してあげる。そして...」
「そして、なんだい?」
「ユウキの病気が治ったら私の夫になってくれないかな?」
予想外のことだった。まぁ、なんて言うんだろう。カレンが医者になる前に僕は死ぬわけだし、できないことだけれど、まぁ。僕はカレンが好きだ。
「あぁ、良いよ。生きてたらね」
「あら、本当に今日は冗談が多いのね。そろそろ、戻ろっか?お医者さんになんか言われそうだし」
「そうだね、戻ろう。久しぶりに外に出れて、楽しかったよ」
病室まで押してもらいベッドに横になり、そしてカレンを見送る。
カレンも僕の雰囲気から何かを察しているのか、それとも単なる偶然なのか、わからないがまぁどうでも良いことだ。
カレンが出てった後の病室はとても静かで、外で木ががぁがぁと風に揺られ音を立てる以外の音はしなかった。
まぁたまに隣の部屋に見舞い客が来て話し声がしたりもしたけど、静かな一日だった。
どうでしたでしょうか。
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