第5夢 夢から覚めて
ごちゃごちゃやってたら今までの二倍ぐらいの量になってしまいました。申し訳ないです。あとから治そうと思います
「はっ…寝てたか…休んでる暇はないというのに。少し気が緩んででしまったのか。まったくハスクも起こしてくれればいいものを…ハスク?おい、どこだハスク!」
同じ部屋で書類をまとめているはずのハスクの姿がない
「書類は…すべて片付いているな。どこに行った?終わったなら報告するだろう、普通。まじめなあいつが一言もなくどこかに行くか…?」
そういえば屋敷の中もどこか静かだ。いつもなら屋敷内を喋りながら掃除しているメイドたちの声も聞こえない。あいつたちに限って一言も喋ることなく掃除をするなんてことはありえない
「とりあえず屋敷の中を探してみるか…ハスク!どこにいる!終わったなら声をかけろ!」
やはりおかしい。ハスクやメイドだけではない。キッチンにも庭にも、いるべきはずの場所にいるべきはずに人間の姿がない。しかも屋敷内は静かなままだ。まるでこんな夢を見ているような…
「そうか、夢…ならばこのまま時間がたてば覚めるな…」
しかしいくらたっても目が覚めそうにない
「夢の中というのは時間の流れが特殊なのか…?そういえば読んでいた本の中に夢の中では痛覚が無くなるという話があったな。あれが本当か確かめられるな」
自分の頬を思いきり殴ってみる
「!?…っ痛いではないか!?これでは殴り損だ。いや、殴られ損か?しかし、自分を殴っても覚めないというのは不思議だな、夢というものは。それに妙に現実味のある夢だな、壁や床の感触といい自分の感覚といい…」
そこで気づいた。自分の頬を殴った時の感触が少し変だったのだ。恐る恐る自分の顔に手を触れてみる。そこには18になる自分には無いはずの…
「皺、か…?私はまだ18だぞ…?」
自分の顔を見ようと洗面所に走ろうとする。が、走ろうとした瞬間足がもつれて転ぶ
「なぜだ!?どういうことだ!?さっきまでは普通に動けていたというのに…」
何とか洗面所の鏡の前に行く。そこに映っていたのは
「誰だ、お前は…誰だ!」
見知らぬ黒髪の皺だらけの男だった。しかも自分と全く動きをする
「これは…私なのか…いったい何がどうなっている…」
絶望からか老いからか、ふらふらとした足取りで洗面所を出る
「もしかしてみんなもう夕食をとっているのか?まったく、そうだというならなおさらなぜ起こしてくれなかったのだ。いや、逆にそんな時間になってもうたた寝をしていてから起こさなかったのか。そうか、そうに違いない。だから、体に力が入らないのも空腹のせいだろう」
意味をなさない現実逃避をするリベッド。やがてダイニングの前に行き扉を開ける
「すまないな、皆。うたた寝をしていたらこんな時間になってしまった。まったくハスクも起こしてくれればいいものを…」
反応は、ない。もちろんそこには誰もいない
「はは…なんだこれは…屋敷の中には誰もいない…鏡には知らない人間が映る…まるで夢だ…」
もうただ立つことすらできなくなったリベッドは近くにあった椅子に座る
「こうしていると思い出すな…シーが作ってくれた料理のことを。あいつのオムレツは絶品だった…なぜ俺はあいつのことをもういないかのように話している…?これは夢なんだ、目が覚めればみんながいるはずなのに…」
「まだ、思い出しませんか」
「…誰だ?この屋敷の人間ではないな?無断で入ってくるとは…ハスク!こいつを追い出せ!」
「哀れですね…そんなに思い出したくないのなればわたしが思い出させて差し上げます」
「黙れ」
なぜかその先は聞いてはいけないような気がした。聞いたら夢が現実になってしまいそうだった
「あなたは私の要望道理夢魔法を習得しようとした」
「黙れ…」
「しかし夢魔法を習得するためには長く眠る必要があった。それこそ永眠と判断されるぐらい」
「黙れ、黙れ…」
「あなたは覚悟を決めた。家を秘書であるハスクに任せると決め自分は自室で魔法による眠りについた」
「黙れと言っている。いい加減にしろ、もう聞きたくもない」
「いえ、あなたは聞かなければなりません。ハスクはよくやりました。元秘書という立場から周りから馬鹿にされながらもいつか目が覚めるあなたのためにこの家を維持しなければならないと。しかしいくら待ってもあなたは目覚めない。そしてとうとう寿命がきた。無理が祟ったのでしょう、ある日いきなり倒れ、そのまま…そこから主を失った家は崩壊していった。そしてそのまま誰にも手を付けられないまま数十年。今日あなたは目覚めた。夢魔法は習得できず、習得する際の反動で一気に老いはじめこのままあなたは死ぬ。つまりあなたのやったことはすべて無駄だったということです」
そこまで聞いてリベッドの中の何かが壊れた
「は、はははははははは!みんなはもういない!?私が、俺がやったことはすべて無駄だった!?よく言う!元々はあの夢で誰かが俺にそうしろと言ったからそうしたのだ!いや、誰かじゃない。あれはお前だな?」
「はい、そうです」
「貴様…貴様から持ち掛けておいて無駄だと…?ふざけるのもいい加減にしろ!」
「ふざけてなどいません。わたしの狙いは最初から力を持ったあなたの死です」
「なんだと…?」
「夢魔法を習得するギリギリであなたを眠りから覚めさせそのまま殺し、その力を自分のものとするのが私の目的だったのですから」
「なに…?ならばあれもすべて作り話だったというのか!お前が見せた悪夢だったというのか!?」
「いえ、作り話ではありませんよ。なぜなら今からあなたから力を奪い現実のものとするのですから」
「俺は…最初から貴様に踊らされていたわけか…」
「そうです、ご愁傷さまでした」
「滑稽だな…私は夜の王とやらのためにすべて失ったのか…」
「えぇ、本当にかわいそうです。まぁ、嘘を信じさせるには本当のことも混ぜるべきという言葉に従っていくつか本当のことも喋っていましたからね。それなりの危険性もありましたよ」
「本当のこと…?」
「えぇ、例えば私に対抗するには夢魔法しか方法がないとか。まぁ、そもそも今ここでその習得方法も失われるので別にいいですけどね」
「そうか、ならば俺の力をそのまま誰かに譲渡して完成させればいいんだな」
「まぁ、そういうことになりますね。でも私こことは別の世界に行くのでこの世界の人間に譲渡しても無意味ですよ。そもそもそんなことさせませんし。一回形になったものって結構はがすの大変なんです」
「そうか、それはいいことを聞いた。なら別の世界からよさそうな人間を呼んでそいつに渡せばいいんだな」
「できるなら、という条件付きですけどね」
「しかし別の世界か…『夢』のようだな…」
「!?まさか、習得していた…!?」
「さあ、どうかな。どっちにしろ俺はその別の世界の人間を呼べる」
「この魔力は…そこか!継承されたら面倒だ…ちっ、もう死にかけのジジィは後で処理できます。問題は継承するほうだ…殺すしかない」
「出てったか…まんまと引っかかったな…さて、すまない…みんな。私はあんな奴に騙されてハスクを死なせてその上今から見知らぬ人間に戦わせようとしている…軍師を目指したものとして兵士以外を戦わせるとはな…しかも別の世界まで危険にさらそうとしている。これは…両親にもう一回殺されるかもな…さて、こちらも準備をするか。未完成のこの魔法でどれだけできるか心配ではあるが…歩けるかな」
不意に目の前の扉が内側に開いた
「えっと…どなたですか?」
そこにいたのは椅子の上に腰掛け、こちらに背を向ける若い黒髪の男性だった。その男性が
「早く目を覚ましなさい。今はまだここはあなたがいるべき場所じゃない。いつかまた夢を見たらその時は私ができなかったことをあなたに成し遂げてもらいたい。だからそれまでは起きていなさい。そして…すまない」
そう言って立ち上がり、反対側のドアに歩いていく。追いかけようとするがなぜか体が動かない。
「は?あんた何言って…?ちょ、おい待ってくれ。俺まだ朝飯食ってな…い?」
目を覚ますとそこは自分の部屋。窓からは道路と向かいの家。部屋の広さは6畳ほど。ベッドに天蓋なんてついてないし、パジャマもパジャマのまま。そして時間は
「8時20分…?やばい、遅刻だ!朝飯なんか食ってる暇ねぇ!」
完全に遅刻だった。どうやらあの不思議な夢は遅刻することと朝食を食べ損ねることへの警告だったらしい。そう思うことにして、高校三年生初遅刻をどう教師に言い訳するかを考えながら家を飛び出る枕田翼であった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。このご時世なので、私の作品で少しでも暇がつぶれれば幸いです