第1夢 目が覚めて
初めまして、武内です。将来の夢は小説家です。拙い部分は多々あると思いますがよろしくお願いします。
目が覚めると、そこは見覚えのない部屋の中だった。
「どこだ、ここ…」
昨夜寝たはずの部屋が広がっている気がする。それどころか壁の色から調度品に至るまですべてが部屋にあるものと違う。
「引っ越ししたあとで記憶が混乱してるとかでもないよな…」
実際、幼い頃引っ越した直後の目覚めはどこか知らない部屋にいるようで、自分がどこにいるのかを思い出すのにしばらく時間がかかったものだが
「違うな、もうそんなことで混乱する歳じゃないし引っ越した記憶なんてないし。寝ぼけてんのかな」
だが、色々と考えてるうちに目は覚め意識ははっきりとしてくる。
「熱でもあるのかな、なんか体がふわふわする。とりあえず、学校行く準備するか」
部屋のドアを開ける前に、もう一度部屋を見渡す。
「いや、別に変ではないのか?なんで疑問に思ってたんだろ」
部屋を出ると、完全に違和感も無くなっていた。さっきの違和感はいったい何だったんだろうかと思いながら洗面所へ向かう。
「今日の予定…なんだっけな。あとでハスクに聞いとくか」
歯を磨き、顔を洗う。今日もタイルで装飾が施されている洗面台は綺麗だった。朝早くから清掃係が頑張ってくれたのだろう。
「よし、完全に目、覚めたな。まだ少し体がふわふわするけどそのうち治まるだろ」
洗面所から出て、向かう場所は一つ。食卓である。父親がこの地域を治めているため朝から美味い飯が食べられる。この家のいいとこだ。
「お父様、お母様、おはようございま…まだ誰も来てないのか、珍しいな」
いつもなら父親か母親が先に来て座っているはずだ。そして遅れてきた自分を、まだ寝てたのかと少し笑いながら注意する。日によっては、自分より出来た弟のほうが早かったりもする。
「食器すら並んでない…そういえば廊下歩いてる時も誰にも会わなかったな。おかしいな…おーい、誰かいないのか?」
厨房に入ってみるが料理長すらいない。
「しょうがない、ニュースでも見て待ってるか」
自分の魔法板を取り出し魔力を送る。そうして起動した魔法板は携帯端末になり様々な用途に使えるようになる。起動した魔法板を操作し、ニュースを見ようとしたが
「ん?おっかしいな…映らない。俺の魔力の通りは問題ないし、見た感じ魔法板の回路も問題なさそうだしな…」
画面にはただ黒い映像が流れるだけだった。
「通信魔法の不具合とかでもないよな、それならそれで表示出るし。真っ黒な画面なんて見たことない…」
いったん魔力を切り流しなおしてみるも画面は変わらない。
「そういえば、誰からも連絡着てないな。起きたら大抵誰かから宿題写させてくれとか来てるはずなんだがな」
そうしているときにふと時間を見るともう朝の8時半だった。
「こんな時間になっても誰も来ないなんてさすがにおかしいな…ちょっと探すか」
そういって、椅子から立ち上がる。
「”サーチ”」
そう唱え、屋敷の中を魔法で調べる。が、
「誰もいない…?いや、そんなはずない。お父様やお母様がいないだけならまだわかるがハスクやレストまでいない?」
自分の両親も教育係も弟さえも魔法に反応しなかった。
「もう一回やってみるか。寝起きで精度が落ちてるんだろうし」
しかし、結果は同じだった。
「そいえば、王都の開発チームが探査魔法を潜り抜ける特殊な布を開発したとか聞いたな。もしかして俺を驚かせるためにわざわざやってるのか?まったく、うちだってそんなものを人数分買うほど余裕があるわけでもないだろうに」
そんな便利なもの聞いたことなんてなかった。そもそもそんなものがあったら、戦争が一瞬でひっくり返ってしまう。でもきっとそうなんだろうと思い屋敷を歩いていく。
「ここから一番近いのはハスクの部屋か。おい、ハスク!いつまで寝ている!もう8時半を過ぎてるぞ!」
いない
「そうかそうか、この歳になってまで俺にかくれんぼの鬼をやれということか。まったく、今日は平日だというのに…しょうがない奴だ」
次に弟の部屋に向かう。
「おい、レスト!もう朝だぞ!まったくお前ももう15なんだから兄なのに起こされるとはだらしのない」
もちろんいない。きっとどこかに固まって隠れているのだろうと思い母親の部屋に向かう。
「母上!起きてください!息子に起こされるなんて母上らしくないですよ!」
いない。次で最後にしようと思い父親の部屋に向かう。
「まったく、皆には困ったものだ。俺がこんな簡単な遊びに引っかかると本気で思ってるんだろうからな。じゃなきゃ、こんなにじらさないだろ」
そう言って父親の部屋のドアを開ける。
「まったく、父上はなんでこんないたずらを許してしまったのですか?私だって暇ではないのですよ。ましてや今日は平日なのです。私だって学校に行かねばならないのですからいい加減にしていただきたいです」
反応はない。誰もいないからだ。
「…ま、まったくたちが悪いな!こんなドッキリ番組でも見ないぞ。なるほど、そうか!これは企画か!私はそこまで詳しくないのだがな、こういうのはだいたい少しわかりにくいところに小型の記録装置が隠してあると友人が言っていたな。例えばベッドの下とか箪笥の上とかにな!今日は冴えてるな!さあ、早くあれをやるがいい!あの、ドッキリ大成功とかいうやつを!」
父の部屋に自分の声だけがむなしくこだまする。
「ま、街ごと探してみよう!きっと街のどこかに隠れてるんだろ…」
声が震える。最悪の想像が頭をよぎってしまう。
「これでかくれんぼは終わりだ!”サーチ”!」
魔法に反応は、無い。
「は、はは…なんだこれ…屋敷どころか領地にも誰一人いないなんて…ありえない、たった一夜でこんなに大勢の人が消えるなんて」
その場に膝から崩れ落ちてしまう。たった今自分は一人となったのだと思った。しかし、そこに
「無理もない、が、そろそろ目を覚ませ。リベッド・ボーテ。いや、枕田翼。これは私の夢だ、他人であるお前がいていい場所ではない」
と誰かの声が聞こえた。が、それどころではない。
「な、なんだ貴様!何者だ!お前がこの状況を作ったのか!?」
そこにいたのは、黒いローブを被った、隈のひどい老人だった。
「まずは落ち着け。それと今の問いだが、違うがそうとも言い切れない」
「お父様を!お母様を!弟をどこへやった!答えろ!さもなくば…」
「落ち着けと言った。それにこれは私の夢だ。お前では私には勝てんよ」
「なんッだと、このっ!食らえ”ファイア”!…”ファイア”!なぜ魔法が出ない!」
「言ったはずだ、これは私の夢だと。いい加減理解しろ、枕田翼」
「わた、俺は枕田翼などという名前では、名前では…」
「思い出したか、リベッド・ボーテは私だ。枕田翼、お前は私が呼んだのだ」
「は、呼んだって…俺、今まで何を…確かに自分の部屋で寝たはずなのに、起きたら知らないところにいて、でも、そんな違和感も疑問もすぐ消えて、自分がリベッド・ボーテだって…」
「まずは、すまない。それは私のせいだ。私が想像していた以上に君の適合率が高かった」
「適合率?なにそれ?てか、何?夢?え?」
「君が混乱するのも無理はない。なにしろ君は魔法という文化がない世界から来た。だから、これからいうこともきっと信じられないだろう。だが、信じて聞いてほしい」
「あ、はい…」
正直何が起きているのか全く理解できていない。自分が他人になり、自分だと思っていた他人が目の前に現れ、魔法だの適合率だの訳の分からないことを言っている。だが、なんとなくその話だけは信じられる気がした。
「今、お前が見ていた私の世界はもうない」
「は!?」
思わず声が出てしまった。
「話を最後まで聞いてから反応してくれ。そんなに長い話ではない。私のいた世界は『夜の王』というモノに吸収され消えてしまった。夜の王はその圧倒的な力で、まず世界中の人間を消し去ろうとした。最初から、まともに抵抗できるのが人間だけと知っていたのだろう。だが、我々もただでやられるわけにはいかなかった。幸いというか残念なことに夜の王の襲撃は100年ほど前に予言されていた。同時にその打開策もだ。それが、『夢魔法』という一つの究極魔法だった。その魔法は強力な代わりに、習得が難しく、また、扱いが困難だった。すぐさま、各国が適合者と思われるものを集め、その魔法の習得をさせた。しかし、ことごとくが永遠に眠ってしまった。しかし、あと数年というところで習得者が現れた」
「それが、リベッドさん、ですか」
「そうだ。しかし、習得したはいいもののこの魔法は扱いが難しい。通常なら十年単位で修業をつむらしいがそんな時間はどこにもなかった。仕方なく未熟な夢魔法で立ち向かたが結果は惨敗。あとはさっき話した通りだ。世界は夜の王に吸収された」
「はぁ、すごく大変だったとかの話じゃないのは分かりましたけど。それと俺とにいったいなんの関係が?」
嫌な予感がする。だが、なんとなくあたってしまう予感もする。そして、リベッドを名乗る老人は決定的なことを告げた。
「夜の王は世界を渡ることができる。夜の王が次に狙いを付けたのは君がいる世界だ」
「まじか…」
あまりにも現実味がない。到底信じきれない。だが、なぜか信じてしまう。
「ど、どうすればいいんだ!?その話が仮に本当だったとして、そんなものが攻めてきたら俺らには対抗手段がないことになるんだぞ!?」
「落ち着け」
「これが落ち着いていられるか!訳わかんねー話された上に俺らの世界はもうすぐ滅びますなんて言われてよぉ!」
「最初に私が適合率と言ったのを覚えているか?」
「あぁ、覚えてるけど…まさか」
「正解だ。枕田翼、君には私の『夢魔法』を覚えてもらう。そして夜の王を倒してもらう」
「なんじゃそりゃ…」
全身の力が抜ける。ずっと信じられないこと続きの上に突拍子もない話を聞かされ、最後にはお前が魔王(的なモノ)を倒せと言われたのだ。これが夢だとしたらあまりにも痛すぎるし、現実だとしても信じられない。
「とりあえず、今日はここまでにしておこう。また、明日の夜夢で会おう」
そう言われてリベッド・ボーテ改め枕田翼は夢の中で眠りに落ちた。
色々書きなおすことにしました。書き直しても相変わらずつたない文章ではありますが応援よろしくお願いいたします。また、最後まで読んでいただきありがとうございます。