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6月の雷鳴

作者: スミンズ

北海道には梅雨がない。そう学校の先生は言ってたし、実際に教科書にもそう書いている。だから北海道には梅雨がないと言うのは事実であって、実はそうではないのかもしれない。近年になって、北海道でも6月にはよく雨が降るから、その事を道民は「蝦夷梅雨」だなんて呼んだりする。降水量だけ見れば、冬の方が多いけど、冬に降るものは雪であり、雨ではない。だから、蝦夷梅雨とは結局一年のうちでも一番雨が降っている時期だとすれば、あながち北海道には梅雨があるのかもしれないあるのかもしれない。


そんな蝦夷梅雨真っ盛りの6月中旬。俺は自分の家でゴロゴロしてるなかで雷鳴を聞く。久しぶりに聞く雷鳴だったので、俺は少しビクッとする。だがその雷鳴が何度も何度も聞こえてくるようになると、流石に馴れていく。雨の音も、雷が鳴る度に強くなっていく。それが僕には面白く感じる。


ゴロゴロ...。


ザー...。


ゴロゴロゴロ...。


ザァー...。


ゴロゴロゴロゴロ...!


ザァァ...!!


そんな音を聞いて、俺はただ口をポカンと開けて、暗い部屋の天井を見る。6月特有の湿っぽく、寒いのか暑いのかも分からぬ中性的な温度の中、外からみると、まるで部屋に浮く埃を食べてるようにみえるかもしれない。だがそんな6月が好きだ。


出会いの季節を過ぎ、少しずつ新しい生活に馴れる時期。


夏休みは遠く、祝日もない。だが目立った行事もなくこの上なく平凡な時期。


そして全ての匂いが、雨と埃で埋め尽くす時期。何もかもを忘れて横になれば、俺はそんな匂いだけ嗅いで幸せになるのだ。


だがその幸せはつかの間、北海道にも夏はやってくる。だからこそ俺は6月の匂いを沢山味わう。7月から始まる、出会いを越えた先にある、息苦しい匂いを、少しでも紛らわすためにも。


ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!


また、雷が鳴る。6月の雷は、味気なくて好きだ。人の辛さを、まるで知らぬようで。

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