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序章 誕生
初めて見たのは、真っ赤に焼ける大地だった。
地平線まで続く瓦礫の山。ただそれだけがあった。
燃え盛る業火は風に煽られ勢いを増し、どこか遠くで悲鳴が重なり合う。
ゆっくりと、彼はその中を歩いていく。目的は自分でも分からない。あるいは、そんなものがあったのだろうか。まるで思い出せない。
素足で大地を踏み締める。破片が刺さる感触を無視して、それでも彼は先を求めた。
そして彼は、一人の少女と出会う。
空っぽの記憶のどこを探したって、彼女の存在は見つからない。しかし、言わなければならないことがあると、漠然とそう思った。
「……君も、一人なの?」
躊躇うことさえなく、彼は声をかけた。
俯き膝を抱えて泣きじゃくる、その少女へと。
「なら、僕と一緒に行こうよ」
――それが、彼、七峰蒼汰の始まりだった。