人生チカクカビン その6
見た目にすごく恥ずかしくなってしまった怪物は、緑ストッキングのまま、6車線の道路に沿って、のっしのっしと歩んでいる。怪物の後ろには緑色のロープで繋がったローズが満足気に歩いている。どこかイヌの散歩・怪物バージョンである。ただし、飼い主側のローズは、リードを手に持っているのではなく、頭から緑髪をズーンと伸ばしてロープをつくり、怪物に繋がっているのだ。
そして、うなだれた怪物を良く見れば、昭和の地球防衛隊をめっちゃ翻弄した凶悪怪獣ではないか。
が、何故か平成にタイムスリップして、ローズ一人にストッキングを穿かされ、こんなハズかしい状態になっている・・・なんとなく気の毒。加えて、昭和ではよくやっていたポーズであった、両手を挙げ、アタマを振り回し、『オレさまは強いぞー!!!』的な覇気は、全く失われ、ローズに補導され、うなだれたまま、多分ストッキングに強制され、連行されているのだ。
「しかし、どこへ?」
カンフー女に地上へ降ろされた鈴木は、成り行きを見るべく、怪物の歩く道路へ向いながらつぶやく。
全くローズの行動は先が読めない。まもなく鈴木の行く手には「売物件」という看板が、ハデに目立った、めちゃめちゃボロいビルが見えてきた。屋上には前出の男二人(長ーい金髪の少年と、どこからどこまでもグレーな青年)が立っているのが見える。
☆☆☆☆☆
「そろそろ・・・かな? ハザマ」
「はい、ローズさん、意外と予定通りに動いてくれましたね」
「“意外”は失礼だよ。でも、暴走しなくて何より」
金髪の少年は、いわゆる『惑星の王子さま』である。
地球での仮名は『亀井リナ』(結構投げやり・・・)。深い青の瞳は、男女問わず吸い込まれそうな美しさをたたえている。が、ストッキング怪獣を見ている微笑みは、なかなかのS。しかし、物腰はすべて上品、すべて優しく・・・。
対して、グレーの青年。こちらは王子さまに『ハザマ』と呼ばれた男。気はあまり大きくなさそうだが、忠実さにおいては逸品! 加えて、只の人間ではなく、只の宇宙人でもない、不思議な男。常に王子と行動を共にするあたり、執事か付き人っぽいのだが。




