人生チカクカビン その4
ビル十階建と同じくらいのデカさがある、怪物の腹にのめり込んだ鈴木に忍び寄る緑色のロープは、先端からすべて生きているように、というか、ヘビそっくりの動きでもって何本も近付いてくる。
鈴木のどこか、ロープの巻きつきやすい、出っ張っているところを探しているようだが、昔のギャグアニメの地面に落ちたキャラよろしく、人型になってメリ込んでいる状態では巻きつきようもないらしい。が、見つけた! 頭と肩のつなぎ目の後ろ側が若干隙間を作っている。そこだっっ! ロープは鈴木に突き進む。
「待て! 待て! 待て! うぐぐぐっっっ」
ロープが巻きついた所は、まさしく首であった。
「まてぇぇぇ〜 死ぬぅぅ〜」
「リーダー!!! 今、助けてやる!!!」
またあのカンフー女が叫ぶと、拒否する間もなく例の、カミナリ! カミナリ! カミナリ! 怪物ごと鈴木は吹っ飛ばされていく。・・・どこも助けてないだろう、ドンカン女! と言いたいところだが、もう鈴木に叫ぶ気力は無い。近くにいる生物の中で、今、一番鈴木に優しいのは怪物なのでは? という悲しい現実がそこにあったりなかったり・・・。
しかし一応、カミナリの効果か、緑ロープは鈴木の首から離れたもよう。目先の難は去った。人々を助ける前に、今、最も気の毒な状態にある自分を救わねば! が、鈴木の気持ちに火が点かない。「他人の為」ならばやる気も起きようものだが、怪物に合体した場所から、周囲の人々の避難が終わった様子を見てしまうと、どこかもう“完了した”気分。なんかちょっとした、アキラメもよう。
「鈴木っ! どうしたのっ!? 早くそんな所から降りなさい! もうっ、手が掛かるんだからっ」
!!!ローズの声だ。見れば怪物の足元で叫んでいる。
「お前こそ、そんな所でうろうろすんな! 踏みつけられたらどうすんだっっ!」
鈴木の声で悟ったように怪物は片足を上げる。ローズの真上で。
「リーダー! バカじゃないの? うすのろな怪物にヒント与えてどーすんのっ」
カンフー女だ。じゃあ、お前がローズを救出しろっ! と言い出そうとした瞬間、ローズの上空にある3坪程の足は、地面に着地。
「ローズはっ? あの女は?」
・・・どこにも見当たらない。・・・エ、まさかっ。




