人生チカクカビン その2
「うおぉぉぉ―――!!」
鈴木は激しい勢いで怪物に衝突・・・しないで、そいつの懐深く擁かれた!? ある意味『ナイスキャ―ッチ! 怪物!』だが、
「何で? 何でだ?」
もう鈴木の理解は及ばない。最初から及んでないが・・・。しかし、怪物との最初の接触で命は落とさなかったものの、生身の人間が数十メートル飛ばされりゃ、無傷とはいかないだろう。が、鈴木は無傷だ。ということは、「生身の人間」という前提を疑わなければならない。
「俺は何様だっ・・・じゃなかった、何者だっっ?」
「だ・か・らっ! じれったいんだって!!」
再び、激しい口調で先程の謎のカンフー女が現れた。&セットになってしまった鈴木と怪物に雷を落とす。落とす、落とす、落としまくる。どうやって雷を誘引するのか分らないが、いちいち確実に命中するわ飛ばされるわ、
「お前! 公務執行妨害! いや殺人未遂だぞっっ」
と言いたいのに、セリフも出ない鈴木は涙目だ。もう上空はカミナリ様のお陰で窒素たっぷりだろう。地面の方は、女の無茶苦茶な攻撃のおかげでめちゃくちゃ破壊されてるし。女一人で地球に優しくない事をここまで・・・! なんて言ってられない。事態の収拾に努めねば。警察官魂発動だっ!
「ああ、でも、その前に、胃がっ、うぅぅ痛くなってきた・・・」
・・・ヤマネ発動だ。
☆☆☆☆☆
逃げ惑う車と人々が入り乱れる新宿で、一連の事態を見つめる人影が2人。激しい爆風と振動で、崩れそうな「売物件」の看板を掲げた、めっちゃボロいビルの屋上で、妙に落ち着きを見せている。
「あれだから先輩はヒーローになりきれないんだなぁ・・・」
「身体はホント、丈夫なんですね。でも、宝の持ち腐れにならなければ良いのですが・・・」
黒いスーツで長ーい金髪をなびかせた細身の少年と、グレーの髪にグレーの瞳、グレーのスーツ、グレーの・・・(しつこいっ!)青年である。




