人生チカクカビン その14
王子は、サンディの淹れた紅茶を口にすると、ゆっくりソファーにもたれながら、すでに骸となったダイスの姿を見つめている。
ローズには読めなかった。王子がダイスにそそぐ視線にどんな感情が含まれているのか。少なくとも、悲しみや哀悼などという種類のものでは無いのは、確か。視線はダイスに置きながら、・・・何か思考は別のところにあるようだ。
「とにかくこのままでも仕方ない、ダイスを葬ってやろう」
「えっ」
さすがにローズでも、びっくり。諦め良すぎない?
「土葬でいいですか?」
サンドラの返事もどこか事務的。ローズだけが一人やきもきしている。が、何をどうしたら良いのかも分らない。そこへハザマが戻って来た。
「鈴木さんの本体は、異常無いそうです。機器類の誤作動は確認されていません」
「ありがとう、ハザマ」
王子はゆっくり立ち上がると、視線を再びダイスへ。しかし、感情の全くこもっていない視線。何か考えているのか?
「僕はすこし、ここで休みたい。悪いけどダイスを移動してもらえる?」
王子がハザマに声をかけると、速やかにストレッチャーが運ばれ、ダイスはそちらへ「1」、「2」、「3」! の掛け声と共に移動された。そしてそのまま、王子以外の全員で土葬の準備に別室へ。
なんというか、お亡くなりになった方への対応にしては、ちょっと尊厳無視な態度だが、王子には何か考えがあるのだろう。ということで、皆、素直に動いている。が、もし、本当になんの考えもナシだったら・・・、いや、まさか、いくらなんでもそこまで。が、もし、本当になんの考えもナシだったら・・・、いや、まさか、いくらなんでもそこまで。が、もし・・・。
土葬をする一同の心の中は、メビウスリング的にというか、エンドレスに疑惑がグルグル回るのだった。




