人生チカクカビン その12
鈴木の怒りが充満した思念が足元に到達すると同時に、サンドラからカミナリが、ローズからは緑の鞭が放たれた。いくら頑丈な身体の鈴木でも、両者の容赦ない攻撃はきつい。足元はスクわれ、全身に痺れが走る。
だが、鈴木の心はすでに別の所へ行っていた。
「ダイス・・・」
薄暗い視界の向こうに立つ誰かが呼ぶ。
「ダイス・・・」
誰の声だろう?
☆☆☆☆☆
サンドラとローズの破壊力で、鈴木は元のサイズまで縮小したようだ。いや、それ以前にそれは始まっていた。思えば、サンドラからの執拗な打撃も落雷も効果が無かった覚醒が、王子の言葉だけで起こったのだ。縮小もまた王子の言葉によるものかも知れない。意識を失いくず折れる鈴木にハザマがかけより抱きかかえた。サンドラもローズも・・・。
王子も傍らに駆け寄ったが、黙り込んだまま立っている。その瞳は遠くを見ているようだ。
「故郷へ行くのは取りやめだ」
王子がポツリと言った。
「え、でも鈴木さん。どうするんですか?」
ハザマは王子を見上げたが返事は無い。それに鈴木はハザマの腕の中でグタッと・・・まるで生命反応が無い。呼吸も脈も・・・。
「先輩の『心』、どこかに弾け飛んだみたいだ」
「・・・何ですか? それ」
ハザマの質問に、王子は答える元気が無いようだ。よほどの事が起きたと見ていいだろう。とにかく、鈴木の身体は、怪物騒ぎのドサクサに紛れて造っておいた秘密基地に運ぶことにした。




