人生チカクカビン その10
「地球の時間軸で合わせましょう」
王子はそう言いながら鈴木の腕に、白いセラミック状のバングルをつけた。特に時計らしき表示も無く、ただ真っ白。
「これでどうなるんだ?」
鈴木は宇宙人の文化もすっかり忘れている。
「僕とハザマも着けます。こうすれば、僕達が時空の狭間を通って別の星へ行っても、先輩と同時刻で連絡し合えますから、作業もスムーズなんですよ」
「成程」
良く分っていないのに鈴木はとりあえずの返事。
「じゃあ、僕達はこれで・・・」
王子とハザマは早速立ち去る気配。
「ちょっと待ってっっ! アタシは留守番なのっっっ??」
やっぱり口を挟んできたローズ。
「君は『亜種』では無いけど、地球産だからね。僕らの星に入るには検疫とか、いろいろ時間がかかるんだ・・・」
「それじゃ、アタシ一生、王子さまの星へは行けないって事っっ!?」
王子の説明に、ローズは結構な衝撃を受けている。(ちょっと思考が幼稚というか極端じゃ・・・?)ムンクの『叫び』メデューサバージョンになってるし。
ふいに、王子が何かを感じ振り返ると、そこには、ローズに対して完全に背をむけたハザマが・・・。 もの凄く強く降りかかる威圧感に耐えているもよう。ローズの『がっかり感』が、完全に怒りとジェラシーに変化し、鋭くハザマに降りかかっているらしい。負けるなハザマ! 耐えろハザマ!!
「『一生』なんて事はないよ。君を連れて行く時は、もっとゆっくり出来る時にと思ってるんだ。いろいろ案内したいしね」
「えっ! そ、そんな風に考えて下さってたの? ヤだ、アタシったら焦っちゃって・・・」
何をどう焦ったのかは知らないが、王子の口先親切発言にローズは百パーセント感動している。更に恥じらいまでみせているではないか。
『コイツ、相変わらずアシライ上手・・・真に受けると、ほんっとバカ見るよ』・・・と、口に出そうなところをグッと押えつつ呆れているのは、少し離れた所で一連の様子を見ていたサンドラであった。
お庭番の家系は、自分から発言しないのが基本らしい。
『それにしても・・・王子のような相手を恋愛対象にしたら人生破滅だな。』・・・という言葉が偶然にも同時に心に浮かんだのは、王子とローズ以外の全員であった。




