人生チカクカビン その1
大変ご迷惑お掛けしますが、本作を幾つかに分けることに致しました。なるべく読みやすい文章作りにしたいのですが・・・。それでもお読み下さろうという方・・・心から感謝します。
登場人物については追ってご説明いたしますが、今回の主人公「鈴木」と同じ視点になって頂いて、「分からないことだらけ」からのスタートをします。
ただ、ローズ・ケアレ・スミスという女性について、
彼女は、古代には地球に咲く単なる薔薇だったのですが、時空を自由に移動できる「王子さま」に出会い、彼のケアレスミスで『人間』になってしまった人物であります。加えて、王子が『平成の日本』に来る時に、ついてきちゃった人でもあります。結構強気で凶暴の気が強い、緑髪の色っぽい女性ということでご記憶頂ければ...。
あっ、忘れてた。鈴木だ。
鈴木は地球を救うためにやってきたエージェントなのに、記憶がなくなっちゃって、とりあえず警察官をやっている、ガニマタのつるぴかハゲの大男であります。(敬礼)
「うるぁぁぁ!!!!」
何時もそうであるように、事件は突然やってくる。
「ぎゃぉぉぉ!!!!」
平成の平和なカンジの日本の空から、イキナリ怪物が落ちてきた。『降りてきた』じゃない、まさしく落ちてきた。しかも、何かの反動で吹き飛ばされたと言っていい。平べったい放物線の途中だけ・・・を描いて、こげ茶色なのか黒なのか区別をつけるには速すぎる勢いで落ちてきた。
日本の空と言っても、鈴木が勤務する派出所の目の前、つまり東京のド真ん中に怪物は落ちてきたのだ。それも、ゴジランやウルルンマン並のデカさ。建築物及び人的被害は大大大!
しかし、だ。作用と反作用って同時に起きるものではないのか? 何かの反動で飛んできたらしい怪物を吹き飛ばした『モト』が分らない。いや、モトなんか今はともかく、やれることをやらねば。
…と、鈴木は逃げ惑う人々と車の交通整理に身を投げ出している。命がけの交通整理だ。命がけの交通整理・・・思えばそうある任務ではなかろう。「俺は全うしてみせるぜ!」鈴木の心は燃えた。怪物はすでに瓦礫と土埃の中、体勢を立て直している。
「ちょっと待ちなさいよ! 交通整理もイイけど、アンタならもっとやるべきことがあるでしょ! 何の為の仮の姿なんだぁー!」
と、女の声。どこから発しているのか分らないが、鈴木の耳にはビンビン聞こえてくる威勢の良過ぎる女の声。
「誰だ?誰だ?誰だーーー!」(メロディつけないで言ってます。)
「誰だ、じゃないよ。この声聞いて分らないようじゃ、アンタもお終いだよ、リーダー。」
「リーダー・・・リコーダーよりも懐かしい響き・・・」
「バカ言ってんじゃないって、そんなヒマないんだって!」
という声と同時に鈴木の目の前には女性の後ろ姿がパッと、まさしくパッと現れた。
「ちくしょう! 思ったよりタフだ」
先程から鈴木の耳に聞こえていた女の声だ。こいつだったか。しかし女は次の瞬間、上空高く飛び上がると、怪物に向かって突っ込んでいった。サ、サイア化している・・・(汗)
そして女が蹴ったのか体当たりを食らわせたのか、人間の視点では確認できないが、再び怪物は放物線を描いた。
女は鈴木を知っているらしい。が、当の鈴木は交通整理をしながら「エー、何だっけ何だっけ?」状態。解説者を一名付けて下さい!!! の気分。
あの人マジックの助手か雑技団員ですか? と言いたくなるような朱と銀色のチャイナなイデタチの女は、後ろで一つに括った髪だけが重力を反映させて、再び空中から鈴木の前に現れると呆れた風のため息をついた。
「ホントに王子サンの言ったとおりだ。マジ忘れてる。が、待ってらんないから実力行使だ。悪く思わないでよリーダー。んじゃ、ケツ・キ―――ック!!」
「んあぁぁ―――!?」
鈴木の臀部に切り込む様な痛みが走る。と同時に地面が遠く遠く・・・って、鈴木がくるくる回りながら空を飛んでいる。思えば怪物と同じ放物線ではなかろうか。
っていうか、鈴木の目に怪物がどんどん大きくなる。どんどんどんどん、大きくなってゆく―! そして次にはパーツしか見えなくなるぅ―!! パーツもデカくなる―! もう鈴木の視界には怪物の手のみ、掌のみしか入らない。まるで鈴木はグローブに納まろうとしているホームランくずれのボールみたいではないか。
「んぎゃぁぁぁ―」




