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短編・恋愛

眠り姫は不眠症

スマホが使いこなせなくて、空白のあけかたがわかりません。見にくかったらごめんなさい。

 




「駄目だ。眠れない」



 オーロラは地を這うような声でひとつ、呟く。


 100年の長い眠りから覚めて、早一年。オーロラの体感時間で言えばたったの1日。線の細い美少年にファーストキスを奪われ、何がなんだかわからないうちに美少年の家(城)にお持ち帰りされた後は激動の日々に終われた。


 気付いたら100年経っているし、たかが100年と思うかもしれないが、されど100年。人々の美醜感覚は恐るべき変貌を遂げていて。


 美少年、改め王子の外見は素晴らしい。(私の方が綺麗だけど)さらさらの金髪に大きな青い瞳。ぱっと見、ぱっと見は、お人形みたいに精巧で整った顔つきをしているが口を開いてみると。



 違う。全然、違う。

 口から漂う酸っぱい臭いに真っ黒く染められた歯。



 お歯黒というものらしい。

 なにそれ、気持ち悪い。



 私が目覚めた切っ掛けは運命の人からのキス(ハート)ではなく、急に舌に感じたお歯黒の酸っぱい味のせいだ。だって、気付け薬は酸っぱいと聞いたことがある。だから、私は目覚めたのだ。目覚めちゃったのだ。だいたい、初対面でそのままキスってどうかしてるぜ、コノヤロー。


 今、住んでいる所は王城のはじっこ。ちょうど一年前までは、伝説の眠り姫ともてはやされていた私は今や変わり者で。どんなに美しくともお歯黒なしで、淡い色のドレスを着る時点で生理的に受け付けないらしい。


 いや、あんたらの方がおかしいから。


 ショッキングカラーの服っておかしいから!!本当にどうかしてるよ?ショッキングカラーにショッキングカラーを重ねられたら、もう目が痛くて見てられない。マジで。

 この100年で何があったんだよ。


 ファッション革命か?いらない革命だよ、本当。


 美意識感覚100年超えて、1000年位退化しちゃってるよ。おめめの色彩感覚つかさどる神経死んじゃっているのかなー?もう呆れるを通り越して心配になってきた。


 絶対にあんなショッキングカラー着たくないから、頑として淡い色のドレスを貰ってるんだけど。頼むたびに、うわぁって顔されるし。

 いや、こっちがしたいから。その表情。


「やってらんない」



 そんなわけで、悩みすぎて不眠症になった。私、なんだかんだ言って、か弱い乙女だもん(笑)

 ……っておい、(笑)ってなんだ、ゴラァ!!!てめ、作者!たたた、たん。!!お前ふざけんなよ、コノヤロー。お前の「た」ひとつ引っこ抜いてたたた、ん。にしてやるぞ。おい、ゴラァ。てめぇ……(省略)



 だから、軟弱なんだよね。まあ、見た目からして病弱そうだし。お似合いじゃない?性格はネコかぶってんだけど。しょうがないよね。

 あ、そう言えばネコって言ったら100年後のこの世界でも衆道って流行ってるかしら。久しぶりに見たい気がする。


 ええ。婦女子ならぬ腐女子はしつこいし、ゴキブリ並みに生命力強いから生きているはず。信じてるぜ、腐った同士ども!



「ふぁ」



 それにしても暇だ。連日眠りにつけない私には隈がはっきり出来ていて。この100年後の世界においても、私は口を開けなければ国一番美しいと言われている。だから、王子にはお歯黒つけろー。ショッキングカラーを着ろー。それが出来たら結婚しろー。と迫られていて辛い。絶対に無理だから。いくら顔が綺麗でも、お歯黒つけてショッキングピンク着ている男は無理。お前と結婚するくらいなら、ちゃんとした服を着た野獣と結婚する方がましだ。


 いっそのこと、この城から出ていってやろうかと思うが、私は世間知らずの元姫だ。ここを出たら絶対に死ぬ。のたれ死ぬ。

 

 そんなこんな考えていたら結局、今日も眠れない。眠ろうと思えば思うほど目が冴えてくるし、眠れない。最近では眠ろうとすることにも飽き飽きしていて、眠ろうとする努力さえ止めた。この暇な時間を有効に活用してやるのだ。

 本棚の中からひとつの本を取りだし、横にスライドさせる。実は、ここに秘密の階段が眠っているのだ。隠し扉。おいおい、ロマンがあるじゃないか~きみぃ。

 螺旋階段をくるくると下って、たどり着いた地面の芝生は昨日の雨でぐちゃぐちゃ。


 うわ。オキニの靴履いてこなくて良かったーと思いながら絶景の夜空スポットに向かい歩きだす。私の趣味は、星空観賞だ。


 えっ?意外ですね?

 うん。始まりは男受けが良さそうって理由だったし。


 べちょべちょと歩いていたら草の茂みから何か動く音がした。

 カサカサと聞こえる音は、随分と近い。あ、やべー。部屋出たのばれるわ、と焦った所そこにいたのはなんと、ウサギだった。





 ウサギがいる。




 ただのうさぎじゃない。洋服を着て、丸眼鏡をかけたウサギは困った顔をしながら、手に持った時計を見て忙しそうにかけていく。


「なんと!?」



 私は、感動した。




 あのウサギは……

 あの何故か見覚えのあるウサギは……





 普通のファッションセンスをしていらっしゃる!!私は久しぶりに会えた普通のファッションセンスの(ウサギ)と話したくて、いや、もう私がおかしいのかなって自信なくなっていたから。取り敢えず話したくて、忙しくかけるウサギの後をこれまた忙しく追いかけた。

 5分走ったくらいだろうか。


「ヒューッヒューッ。あ゛ーー死ぬ。元姫だったから運動なれてないんだわ」


 瀕死になっていた。私が。

 もう疲れたし諦めよっかなぁと思った矢先、前を走っていたウサギが急に消えた。


「えっ!?ヒューッ、何で!?」


 驚き走るのを止めた私は恐る恐るウサギの消えた場所に近付く。そこには、底知れぬ穴があった。(ダジャレじゃない)


 何となく怖くなって後ずさるが、地面は雨でぬかるんでいる。ずるッと体勢を崩した私は穴に一直線。


 あれー!!なんか混ざってる気がするーー!!!








「あいたた」



 目覚めた先は見知らぬ場所だった。でも、周りを見るにどうやら屋敷の中のようだ。真っ赤な絨毯に見事なシャンデラス。凄く立派な外見なのに屋敷には、蝋燭がポツポツと必要最低限の灯りしかついていない。


 ここは、何処だと考えているとひとつの部屋から人の話し声が聞こえた。


「あの子は、誰だ、」

「知らないわよ。急に現れたんだもの」

「じゃあ、早く追い出さなきゃ」

「いや、待てよ。あの子は、何だか性格が良さそうだ。旦那様に会わせてみては」

「確かに。凄く綺麗な娘だし」

「そんな、駄目よ。あんなか弱そうな娘では旦那様に怯えてしまうわ!!」


 どうやら私の話をしているらしいが、綺麗やら性格良さそうやら意外と歓迎されるかもしれない、と話しかけてみることにした。ちょっと常識はずれかもしれないが、もうこの状態が常識を超えているし、ここを追い出されたら私はどうすればいいのか。


 崩れた髪を整えて、精一杯怯えた表情を作った私はその灯りのついた部屋の扉を勢い良く開けて。


「あの!!助けて下さ……ってあれ?」


 さっきまでこの部屋から声が聞こえたはずなのに、中には誰もいない。どうやら厨房らしいが、机の上では蝋燭、ポット、コップに時計が、今さっきまで誰かが弄っていたかのようにゆらゆら揺れている。


 おかしいな、と首を傾げていると後ろから声が聞こえた。


「早く旦那様にお伝えしなくちゃ」


 それと共にコトコトとした足音……この音は足音なのか!?まあ、気にぜすにその足音を追った。旦那様なる人に会って、ここにおいてくれるよう頼もう。それと、この足音の人物が万一私の事を悪く報告したらまずい。


 足音は、ドンドン上に向かいこの建物は屋敷じゃなくて城であることが分かった。まだ、着かないのか。





 ぎぃぃ……


 そうして、着いたのは重厚感溢れる大きな扉。開いているその部屋にそっと入ると、寝室だ。中央の丸いテーブルにはガラスケースに入った薔薇が浮いている。一輪がふわりと宙に浮き、キラキラ輝く姿は幻想的。まあ、100年眠った私の方が、凄いけどね!!


 誰かが部屋に入ったはずなのに、人は見当たらなくて少し探してみたら奥のテラスに獣が寝ていた。


「嘘でしょ……」


 ベンチにぐっすりと寝た獣は、私が近付いても目覚める気配がない。本物の獣みたいに気配には敏感じゃないらしい。


「本当に現実?」




 私は、また感動していた。もう、泣きそうだ。

 だって、だって。




「ちゃんとした服を着てる。ファッションセンスが完璧だわ」


 洋服を来ている。ショッキングカラーじゃない。ちゃんとした紳士の着る服だ。目がおかしくなっているのかもしれない。もう、ショッキングカラーを来ていない獣(暫定オス)がかっこよく見える。

 身体もがっちりとしていて筋肉質。私のタイプだ。



 そう言えば、さっきあの王子より獣の方がましだと思っていたし、あれはフラグだったのか?……フラグ、か?


「でも、カッコいいし……」



 ドキドキしながら、キスをしてみる。熊のような大きく裂けた口は酸っぱい臭いがしなくて最高。もう一回言おう。酸っぱい味のしないキスは最高だ。


「えっ!?」


 ちゅう、としたキスを終えるとなんと獣(暫定オス)の身体がフワリと浮き上がって少しずつ毛皮が剥がれていく。何で急にグロ映像!?と思ったがそこから現れたのは、人の肌。

 顔は、男らしく精悍でワイルドな顔立ちで。モロ私のタイプだ。


 これは運命だ。きっと私みたいに運命のキス……違った。私はお歯黒の酸っぱさで目が覚めたけど。

 私はお歯黒をつけていない。今度こそ運命のキス(ハート)じゃないのか!?


 目の前のイケメンがゆっくりと目を開ける。


 ドキドキと胸を鳴らす私。遂に、ついに私は運命の男と結ばれるのか!?



「初対面でキスはちょっと……」









 あ、デスヨネー。





それから、獣(元王子)とオーロラは恋愛していきます。きっと。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後のデスヨネーがいい感じに面白いです笑 なんか落ちが落語のノリですね!最初のお歯黒もぶっとんでましたが私も日頃から平安時代の美意識にはついていけねぇ!と思ってましたのでかなりソウダヨネー…
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