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すみっこ童話・短編

かみさまたちのおしょうがつ

作者: 神 雪

 みなさんは、せつぶんに豆まきをしましたか?

 豆まきは、びょうきなどの目に見えないわるいものを豆でおいはらうぎょうじです。

 「おにはそと」と言いますが、この「おに」は、ほんとうは目に見えないわるいもののことなのですよ。


 さて、せつぶんのつぎの日のことを立春(りっしゅん)といいます。むかしはこの日から、一年がはじまりました。そして、かみさまたちのおしょうがつでもあるのです。かみさまたちには、とてもたいせつな日なのです。


 このおはなしは、せつぶんの日のよる、ある町のじんじゃにあつまった、かみさまたちのおはなしです。さてさて、かみさまたちは、あつまってなにをなさっているのでしょう。ちょっとのぞいてみましょうか。






「よう、おにのだんな、ごくろうだったなあ。これからかえるのかい?」


「これはこれはかみさま。はい。これからかえって、またらい年までおやすみです」


「どうだった? たくさんまいてもらったかい?」


「それはもう。いたいのなんのって、たいへんでしたよ」


「おつかれさん、まあゆっくりやすみなよ」



 あらまあ、かみさまとおにさんは、けっこうなかよしのようですね。おにさんには目に見えないわるいもののかわりをしてもらっていますから、これから、ながいながいおやすみになるんですね。そうやって、またらい年に、たいせつなおしごとをするための、げんきをつけるのかもしれません。



 さて、おにさんを見おくったかみさまは、つぎにごきんじょのかみさまたちを、おまねきします。この町にはじんじゃは一つしかありませんが、かみさまはたくさんいらっしゃいます。


 川のかみさまや山のかみさま、だいどころの火のかみさまや、トイレのかみさまだっていらっしゃるのです。そんなおおぜいのかみさまが、きょうはこのじんじゃにあつまってきました。


 まふゆのよるの、つめたくすきとおった、おもわずせなかがピンとしてしまうような、あいいろにそまったせかいの中で、かみさまたちのまわりだけが、ほんのりとひかっているようにみえます。


「みなのしゅう、ごきげんよう。ぶじに一年おわってよかったよかった。さあて、日づけがかわりそうだ。そろそろはじめようかね? さあ、(はる)をむかいいれよう!」


 じんじゃのかみさまは、大きなおこえでおっしゃいますと、ほかのかみさまたちといっしょに、まるい()になるように、ならばれました。どのかみさまたちも、とてもうつくしい、いしょうをおめしになられておられますので、それはそれはきらびやかで、まるで大きなおはながさいているかのようでした。


「いざ、まいらん!」


「「いざ、まいらん!!」」


 じんじゃのかみさまが大きく手を広げれば、ほかのかみさまたちも、おなじように手を広げられます。かたあしをトン、とならされますと、おなじようにトン、とならされます。クルリクルリとまわりながら、かみさまたちは、(まい)をまわれているのです。


「やれ、めでたや」


「それ、めでたや」


 クルリ、トン、クルリ、トントン



 かみさまたちがクルリとまわられると、いしょうもひらひらとなさって、このばしょにだけもう春がきたかのようです。


 そして、かみさまたちがまわれていくにつれて、輪のまんなかに、うすいさくらいろのひかりがあつまりはじめました。


 クルリ、トン、クルリ、トントン



「春よ、きたれ」


「めぐみよ、きたれ」


 

 かみさまたちが、いっせいにりょうほうの手を広げ、天にむかってのばされました。そのとたん、まんなかにあった、うすいさくらいろのひかりが、ふわっとしたあたたかいかぜとともに、じんじゃから町じゅうへと、広がってゆきました。







 こうして、春をぶじにむかいいれたかみさまたちは、それから天へといちどおもどりになられます。かみさまたちのおしょうがつですから、そこでたのしくおすごしになられるのです。

 

 かみさまたちは、天で、どのようなおしょうがつをおすごしになられるのでしょうね。おいわいのおことばがかわされ、おいしいおりょうりをめしあがられるのかもしれません。そしてそこでもまた、舞がひろうされることでしょう。


 


 もしかしたらみなさんのちかくのじんじゃでも、ひっそりとかみさまたちがあつまって、春をまねいてくださっているかもしれませんよ。



 *おしまい*

ご閲覧ありがとうございました!


「ひだまり童話館」には、沢山の個性的な「めでたい」お話が集っております。

どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m

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