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エウリカ首都・ガルナ2

剣を磨きながらベッドの上から動かずに、シオンは警戒していた。

戦場にいた時のような空気を漂わせながら、剣に集中する。

最終決戦のあの騎士を思い出す、あの戦いは屋敷への奇襲であり、此度の反乱の将であるマルクスを倒すことを目的とした戦いだった。

裏口と入り口の二方向からの攻撃、入り口が最初で裏口が後に起こす時間差による奇襲、夜間に行われたそれはどちらも囮だった。

しかし囮とは言え、すぐにやられてしまっては元も子もない。

そのためにナターシャさんが作戦決定するときに有力貴族の一人がシオンを推し、シオンは入り口からの奇襲を担当することになった。

そして、あの騎士との死闘とも言うべき戦いが起こった。

力の差は大きく、速さは変わらない、ならばできうる技術をすべて結集し、全身全霊で戦うという選択肢のみしか浮かび上がらなかった。

――戦いは内容的には負けていたといえる、勝利した時は歓喜に打ち震えたが同時に自らの剣術の至らなさを痛感した。

あの騎士は何者かはわからないがマルクスを倒した――ということは聞いてはいないが、おそらくナターシャさん――いや、アルアさんのいっていた勇者といったやつが倒したのであろう、そいつのほうが自らより強いのだろう。

――上には上がいるというが、それ故にシオンは笑う。

さぁ強くなろう、名も知らぬ顔も知らぬ、そんな存在だが、倒せると確信できるほどに強くなろう。


「……ん?」


鈍い音が窓付近から聞こえ、振り向くとそこに人影があった。


「誰だ」


鍵を開けて小さく窓を開けた後に少し後ろへと下がると、そこにいたのは赤い髪をした青年がいた。


「ペルア村」


その言葉にピクリとシオンは反応して、目の前の存在を見る。

男はにやりと笑い、後ろを親指で指す、


「知りたいならついてこい」








「はぁ~」


「ティナ、落ち込み過ぎだよ」


役所で整理をしていたティナと呼ばれた、先ほどの眼鏡をかけた栗色の髪の女性は、大きくため息をつき、それに苦笑いをしながら小柄な女性が慰める。


「しかし本当におかしなことだよね、私覚えているもの、ティナが冊子へと入れるところ、紙に手足が生えてテッテケテーと逃げて行ったわけじゃないんだし、なんで無くなっちゃったんだろうね」


「わ、私の不注意だ……」


「いやいや、決まったことじゃないから、ちゃんと報告してお小言の一つはもらったんだから、気持ちを切り替えなきゃ!さもないと本当に大きな失敗に繋がっちゃうかもしれないよ?」


「うう……エミリアぁ~」


「はいはい、私の貧しい胸なら貸してあげますから」


そういってエミリアは泣くティナの頭を撫でながら、抱きしめる。


「硬い……」


「うん、自虐ネタとしてはいいけど言われるのはむかつくね」


エミリアとティナを比べると、結構な差がある。

小さなころからの親友で毎日いっしょにすごしたのになぜこうなった……何故こうなった!

――まぁいいや、うん。


「飲みに行こう!パーッと飲んで気持ちキリッと切り替えていこう!」


「う、うん」


「おいしいお酒においしい料理を堪能して、明日からキッチリやろう!」


「あ、ありがとうね、エミリア」


「よぉしそうと決まれば出発進行!どうせ業務を終えてから整理してたんでしょ?ならば今から行く、店は逃げないけど、おいしい料理は材料がなくなっちゃうからねー!」


そういってエミリアはティナの腕をつかんで歩き出す。


「おつかれさまでした!次の日のティナは『ファック!貴様ら全員ファーック!』と挨拶するほどのテンションになってますよ!」


「おつかれさ成りませんからね!?」


そういって去っていく喧騒に、他の役員たちは苦笑い、されど温かい笑顔を向けて、彼女たちを見送り『お疲れ様ー』と返していく。

そういして二人は薄暗い道を行き、淡い光を放つ飲み屋へと到着し、エミリアはドアを豪快に開け放つ。


「店主、今日も寒くてつまらないギャグと安くておいしいお酒と料理をいただきに来たよ!」


「未成年はお断りだぜ」


「先日と同じネタを使うとは程度がしれたな、店主ぅ!」


「おっとお隣さんはお姉さんかな?よかったなーお姉ちゃんと一緒かー」


「うん!私ティナお姉ちゃんだーいすきっ!じゃなくて飲みに来たんだって」


店主と好例と言えるほどに良くしている言葉のドッチボールをしていると、横から客のおっさん連中が声をかけてくる。


「おーエミリアちゃんとティナちゃんかー色気がある方がティナちゃんだったか?」


「それは私が貧乳だといいたいのか!ほれほれピッチピッチの女の子だぞ!」


「すまんが未成年はお断りだぜ」


「また言うか店主!」


「というか座って落ち着け、ティナちゃんもな」


「よっしゃ、奢ってやろう、ティナちゃんのはな!」


「私も奢れ!」


「酒豪を奢ってたら嫁さんから地獄を見せられるからな」


そういうと店内が笑いに包まれる。

ここにきた初日におっちゃん連中に地獄を見せたエミリアである。


「まぁいいや、座ろうよティナ」


「うん」


そういって座った瞬間に、酒と料理が出てくる。

その素早さにティナとエミリアが驚いて店主を見る。


「まぁ俺からの奢りだ、……ティナちゃん少しは明るくなったじゃねぇか、そんな明るくさせたエミリアにご褒美だ」


「さすがおっちゃんだな!男前数値が1.05倍になった!」


「微妙すぎるだろ!」

うんマルクス倒したのシオンですけど、自分で自分を追ってどうするのだろう。

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