ペルア村・1
ディパングはうん、日本です。
日本の姓ではないんですけど国の形態は日本に近いです。
そして何故だろう、コミカルじゃない。
元々ぶっ飛ばして書きまくったんですけど、ものすごいギャグ要素高めだったはずなんですけどね。
くそ……ギャグじゃなきゃ楽しくない……
テレジア城、大きなテラスから満月を見る少女が一人。
彼女の名前はティアレシア・T・セレスティア、テレジアの姫君である。
美しい金髪は月の光に映え、ただそこに立って眺めているだけだというのに、まるで一枚の絵画のようなそれの後ろに、一人の騎士がいた。
「……ティアレシア様」
「ナターシャ、彼は見つからないのですか」
「申し訳ございません」
「……そう」
ナターシャと呼ばれた女性騎士は頭を垂れる。
その返答に、ティアレシアは少し悲しそうな声で短くそう答えた。
そして再度満月へと視点を戻す、その光景に酷く心を痛めた様子のナターシャは何かしら声を駆けなければと言葉を選び出そうとする。
「……心配、でしょうか?」
でてきたのはそんな言葉。
言った後にしまったとナターシャは思い、ティアレシアの顔をちらりとみる。
その顔はまっすぐと自分を見据え、その顔は力強く左右に揺れる。
「いいえ、心配ではありません、彼と共にいられないのがさびしいのです、ナターシャ、彼と共に最後の決戦までいて、彼のことが心配だと、そう思いますか?」
そういわれてナターシャは思い出してみる。
彼と共に最前線をかけ続けた日々を、そして即座に答えは出る。
「いえ、心配ではありません、彼はどんな窮地でも笑って帰ってくるでしょう、それを出迎えるのが今から楽しみで仕方がありません」
「そうでしょう、その時は沢山聞かせてもらうの、彼がここに来るまでどんなことがあって、どんなことをやってきたのか――」
そういって二人の女性は笑った。
風に揺れる稲穂、微かな土の臭い。
風景は山が遠くに見え、視界の中では家が数軒ほどしか立ってはいない。
まさに田舎というべき風景がそこにはあった。
そして、その風景に現れる荷馬車がある。
その荷馬車は一軒の宿屋の近くへと止まると、そこから黒髪の少年、シオンが現れる。
それに続いてガルン、そして二人に手を貸され、ユナが地面へと降り立ち、ガルンとシオンは中から荷物を取り出していく。
「とめてくるからな、すぐに飯だぞ!」
「本当!?お腹ぺこぺこだよー!」
そう荷馬車の先頭で馬を操作するアルアから声を駆けられてユナが嬉しそうに万歳をしてはしゃぐ。
その光景をみてシオンは微笑ましそうにすると、ガルンがさっさと宿屋内部へと向かっているのに気が付きそれを追った。
宿屋の受付で鍵をもらい、さっさと内部へと入っていく。
大量の荷物を置き、ふぅとシオンが一息を付くと、ガルンがこちらを見る。
「――剣をお持ちのようですが、どれほどの腕前でしょうか」
「……誇れるだけの努力をしてきました」
「すばらしい、一手お願いできますか」
「はい、こちらとしてもあなたの身のこなしからしてかなりの腕かと、剣士としてこちらこそ一手お願いしたいくらいです」
「では、食事の後で」
「はい」
その返答を聞いて、ガルンは初めてシオンへと笑みを見せる。
ガルンにとって最初の質問はただの蛇足でしかない。
目の前の少年が言った通り、身のこなしからや筋肉の付き具合、そして剣がかなり使い込まれている状態であることをみるに、かなりの腕前だということははっきりとわかっていた。
ならばなぜ、問いかけたのか。
それはガルンの主やその娘であるお嬢様を護るためである。
返答の言葉や、その中にある嘘などを見ぬき、目の前の男の人柄を知る。
――剣を携え、川から流れてきた剣士などあってすぐに信頼できるわけもない。
それもシオンはわかっていたのではっきりと嘘もなく、まっすぐに自分の言葉をいいきった。
「おい、飯食うぞ!」
両者が笑みを浮かべていると、下からアルアの声が響き渡る。
シオンが腰につけてある財布を取り出そうとしたとき、それをガルンが手で静止する。
「おごる気満々だと思いますよ?」
「いや、だが――」
「主に恥をかかさない、それも私の役目です」
「……はい」
そして二人は下の階へと降りると、二人が出迎える。
「遅いよ!」
「ユナは飯になるといつもの十倍は怖いぞ」
「ちょ、お父さん、それじゃあ私が食べてばっかりみたいじゃない!」
「そうですね」
「ガルン!?」
「そうなんですか……」
「違うよ!?ねぇ違うよ?私食べてばっかりじゃないからね、ちゃんと毎日髪はお肌のお手入れしてるし、運動もしてるからね?!」
そんな会話をして、食事を始める。
少しユナが拗ねてはいるが各々で会話を始めると、すぐに入ってくる。
「へぇシオンってテレジアで兵士やってたんだ!英雄の話知ってる?」
「英雄ですか?」
「最前線で切り開き、テレジアを勝利へと導いた英雄、だそうだ、会ったことがあるならどんなやつか聞いてみたいんだが」
そういわれて、シオンは考える。
自信が駆け巡った戦場は最前線だ、そこで一際輝いていたもの――。
「ナターシャさん、ですかね」
「へぇナターシャさんってことは女性なの?憧れるちゃうな!」
「いやいや、そんな名前じゃなかったはずだ」
「えっと、それではどんな名前だったんでしょうか?」
「……すまねぇ」
「……はい」
謝られて、シオンは小さく返答した。
忘れたんですね……と顔には書かれてはいたが。
食事を終えて、即座に立ち上がり、シオンとガルンは剣を掴む。
「なんだ、戦うのか?」
「はい、シオン殿と模擬戦を一度」
「じゃあ見てるぞ、ユナはどうする?」
「……私も見てるよ」
そうして四人は外へと出て、シオンとガルンは剣を構えあう。
ガルンの剣の形状は一般的だが、シオンの剣は少し違った。
少し細く、片刃であり、妙に存在感のある独特の雰囲気をもっていた。
「……刀、というやつでしょうか」
「はい」
小さく言葉を返す。
この時点で目の前の少年が何者であるかはガルンにはわかりきっていた。
瞬時に走り出す、剣と剣が銀色の軌跡を作り上げる。
数回ほどの攻撃を繰り返し、すでにガルンは目の前の存在が自分の予想を超えていたことを見抜いていた。
完全に流されている上に隙を作らされている。
冷や汗が流れる、剣を構える、息を深く深く吐き、吸う。
目の前の存在の護りを打ち崩せる、そんな未来が想像できない。
ならば、守りを固めてみる。
その瞬間だった、剣と剣が数回交わったのは。
もはやそれは本能だった、本能によってガルンは救われた。
一瞬のうちの数回の攻撃、それを理解した時剣を下す。
「負けました」
「ありがとうございました」
礼をし合う。
そして一息をついたその時だった、見知らぬ少年が近づいてきたのは。
シオンとガルンが同時に視線を合わせると、少しひるんだ様子の少年は、意を決したように言い放つ。
「に、兄ちゃんたち!」
「……うん?」
「ね、姉ちゃんを助けてくれ!」
「……はい?」