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ガタンゴトン ガタンゴトン、次は...

作者: ニシン兄
掲載日:2026/07/26

この作品に興味を持ってくださりありがとうございます。

この作品は一話完結型の短編小説です。(本当に短いです。)

通勤通学の時間や、休憩時間などに気軽に読める量となっております。

それでは、物語の世界へ行ってらっしゃいませ。

ガタンゴトン、ガタンゴトン


(そろそろ降りようかな。いや、まだいいか...。)


行きたい場所など特にない。勝手に電車が進んでいくのだ。真っ暗な景色を眺めたところで意味もないから、僕はとりあえずスマホでゲーム。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


古い機種のせいか、充電があっという間に減っていく。


モバ充を取り出し、慣れた手つきでスマホにつなげる。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


新しく登場した現環境最強のアタッカーがピックアップされている。


僕がこれまで育成してきた"最強"のアタッカーの時代が、たった一体の新キャラによって終焉を迎えたのだ。


残酷だ。あまりにも。


でも、当たり前だ。


長きにわたってソシャゲをプレイし続けてきた僕にとって、こんなことは全く驚くことではなかった。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


しかし不幸中の幸いだったのは、そのキャラが超かっこいいドラゴンだったことだ。


おそらく雄だ。


ほしいと思ったキャラは数えきれないほどいる。しかしそのたびに、それらのキャラがいらない理由も考える。


だてに無課金でやり続けてきたわけじゃない。


しかしそれだけで終われば、誰もが無課金でソシャゲをするだろう。


ソシャゲだって、お金が必要なのだ。


新キャラクターが追加されると同時に、そのキャラクターへの忖度が始まる。


当たり前だ。


でも残酷だ。


新たに追加されるステージはどれも、必ず新キャラクターが活躍できるように作られている。


場合によっては、そのキャラクターがいないとかなりの苦戦を強いられることもある。


そのため、しっかりとステージをクリアしていきたい人にとって、新キャラの確保は欠かせないのだ。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


僕は改めて自分の編成を見直す。これまでの僕の経験と努力、それと有識者の方たちが運営する攻略サイトのすべてが詰まった、"最強"の編成。


新しく追加された、一つ目のステージにさっそく挑んでみる。


一つ目というだけあって、簡単にクリアすることができた。


推奨レベルを見れば、クリアできることはわかっていたが、やっぱり自分の作り上げた編成でステージをクリアできる楽しみは、何度味わってもいい気分だ。


しかしステージを進むにつれて徐々に難しくなっていき、途中のステージで止まってしまった。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


きりがいいので、ゲームをやめ、スマホを一旦カバンの中にしまった。


しかしそうすると、目のやりどころに困る。


とりあえず目を閉じ、聞こえてくる音に意識を向ける。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


少しずつ、電車の速度が落ちていくのがわかる。


するとアナウンスが流れた。


「まもなく、受験、受験です。お出口は左側です。高校線、通信制高校線、中卒線、職業訓練校線などは、お乗り換えです。大学線をご利用のお客様は、高校線、または通信高校線から、お乗り換えいただけます。なお、この電車は次の駅から急行電車に変わります。終点まで停車いたしませんので、お気を付けください。まもなく、受験、受験です。」


車内では、大勢の人が下りる準備をしている。あらかじめドアの前で降りる準備をしていた人や、今になって慌てて準備をしだした人など、いろいろだ。だがこのターミナル駅では、やはり多くの人が降りるのだろう。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


徐々に外が明るくなり、電車は駅に到着した。ドアが開く前から、車内ではすでに競争が始まっているようだった。可能な限りドア付近まで行き、ドアが開くのを今か今かと待っている。


一人一人から焦りを感じる。


しかしさすがはターミナル駅だ。駅のホームでは、大勢の人たちがドアが開くのを今か今かと待ち望んでいる。


ようやく電車は停車し、ドアが開いた。


その瞬間、一斉に車内から駅のホームへ人があふれ出す。時間がないのか、各々急いでいる。


全員降りたかと思うと、今度は駅のホームから大勢の人が急いで車内に入ってくる。


空いている席に我先にと座り、腰を掛けた瞬間に大きなため息を吐く。


まるで何かから必死に逃げるかのように、皆スマホを見始める。


あっという間に満員電車となった。


しかし思いのほか、この電車を利用する人が多いことに驚いている。


ドアが閉まろうとしたその時、慌ててもう一人駆け込んできた。


ドアが閉まる。


「お客様にお願いいたします。駆け込み乗車は大変危険ですので絶対におやめください。」


心なしか、その人の表情からは安心と疲れと不安と絶望のすべてを感じた。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


さすがに満員電車が好きだとは言わないが、まったく人がいない電車に比べれば、同士がいるような気分になって気持ちがいい。


車内での人間観察を終えると、僕はまたスマホを取り出した。


スマホを見れば、様々な人々の"日常"を見ることができる。金持ちの豪遊や、自分のすごさをアピールする人、幸せの絶頂期など、本当に様々だ。


しかしだ。この電車の車内の様子もきっと同じように見れる。


誰かしら、発信する人がいるだろう。少なくとも僕は、わざわざ見てもらおうとは思はないが。


でも、まだこの電車に乗ったことがない人たちには、少しでもいいから知ってほしい。


近年、急速に路線の数が増えだした。


人々のニーズに合わせて、最適な路線が作られ始めたのだ。


しかしその反面、今の路線図を完全に理解している人はほとんどいないだろう。


というか、数年先には全く違う路線図になっていても何の不思議もない。


余りにも複雑化した路線図を前に、多くの人々が乗り間違いをし、駅での迷子を経験しているだろう。


この電車にも、もしかしたら誤って乗車した人がいるかもしれない。


だとしたら本当に気の毒な話だ。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


そもそも目的地が決まっている人がどれほどいるのだろうか。


決まっていたとして、結局駅に着いたとたん次の駅に行くための準備をしだす。


俺もそうだ。だからいつしか、電車を降りなくなった。


忙しそうにしている人々をよそ眼に、ただただボーっと電車に乗り続けている。


真っ暗な外が少し明るくなったかと思うと、電車は大きなターミナル駅を通過していた。


相変わらず駅の人々は忙しそうだ。


そんなに急いでいったいどこへ向かうというのだろうか。


そんなことを考えていたらあっという間にターミナル駅を通過していた。


「ただいま、電車は予定通り、"人間関係"を通過いたしました。」


少しほっとした...。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


車内は相変わらず静かだ。


目を閉じていたら、そこに人がいることはわからないと思う。


各々寝ていたり、スマホを見たり、真っ暗な外を眺めたり、いろいろだ。


話をしている人は一人もいない。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


ゆらゆらと揺れる電車の中で、俺はただ真っ暗な外を眺めている。


そのくらいしかやることがないのだ。


無気力になり、頭が空っぽになる。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


俺はまたスマホを取り出した。


画面を開くと、輝かしい景色がこれでもかと目に入ってくる。


車内の静かな雰囲気が、画面の向こうの輝きをより一層引き立たせる。


まぶしいその画面を、俺はすぐに閉じた。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


眠たくなってきた。


外を見ても何もないし、これと言ってやりたいこともやれることもない。


そっと目を閉じ、力を抜く。


どうせ次は終点なのだ。


(到着するまで寝てよう。)


ガタンゴトン、ガタンゴトン


電車の音が耳を叩く。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


その音もだんだん遠くなる。


ガタンゴトン、ガタンゴトン...


(着いたら何をしようかな...)


ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン...


気が付いたころには、電車の速度がかなり落ちていた。


外は真っ暗だ。


(なんで遅くなっているんだ?)


車内を見渡すと、皆死んだような眼をしている。


「まもなく終点...」


車内のアナウンスが流れる。


ようやく俺は終点にたどり着いた。


俺の旅も終焉を迎えたのだ。


(あっという間だった...。もうこんな電車の旅はこりごりだ。もしも、もしもまた別の電車に乗る機会があったら、今回とは違った旅ができるとといいな...。)



ご乗車ありがとうございました。いかがでしたでしょうか。

この作品はこれにて完結です。

感想やアドバイスぜひ!!

今後とも応援よろしくお願いいたします。

現在新たな短編小説を制作中ですが、一話完結型でシリーズ化を検討しております。

興味がある方は、そちらもお楽しみに!!

定期的な活動報告もしておりますので、そちらもチェック!!

それでは、またお会いしましょう。

ありがとうございました。

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