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ホーム・カミング

 ジーキンスのとあるバーでアルコールが高いだけのまずい安酒を煽っているのはノックだ。

 擬似ドラッグの被害者も含めれば死者が多数出た今回のゾンビ事件の犯人がまさか一介の学生などと誰が予想しただろうか。

 とはいえ魔の道に通ずるネクロマンサーだ。彼等に身分だ年齢だなんてものは関係ない。

 そう言ってやればノックは苦々しく髪を掻き乱した。

「ヤツは――人として何か欠落してる」

 それがノックの抱く苛立ちの原因であった。

 今回の事件を起こしたネクロマンサー、コール・キルニアドの意見は簡潔なものだった。

「ダチを喜ばせたかったのさ」

 子供の悪戯かのようにコールはけろりと言いのけたらしい。

 ちなみに彼のいう友人というのは同じ同好会に属するブラム・スティッカ-とリリス・サタニアだ。

 この二人、実は調べたところによると7年ほど前に死亡している。交通事故だそうだ。

 この事件にコールも巻き込まれており、怪我はしたが幸い命に別状はなかった。

 一人だけ生き残ったコールは友人であるブラムとリリスにも教えていなかった己の才能で二人を生き返らせた。

「ブラムは生前黒人だった。リリスはチャイニーズ系のアメリカ人。今の彼等は全く違う」

 ノックは忌々しげにグラスを握った。

「つまり俺が会った二人は既にもう誰かの体で作られたものだったって事か。うぅ~。ゾッとしてきたぜ」

 ダニーが身震いする。それはそうだろう。平然と話していたがネクロマンサーとゾンビ二人に囲まれていたのだ。といってもブラムとリリスがゾンビなのは途中から気付いていたようだが。

「捕まって気がついたらブラムとリリスが頭下げてきてな。コールは自分たちを楽しませるためにやってるんだと言い出したワケだ。

 全く驚いたね。ネクロマンサーの操る死体ってのは攻撃的な奴等ばっかりなのかと思ってた」

 ノックは噛み付くように言った。

「温厚だろうがなんだろうが人外には違いない。その人外のために奴が今まで何をしてきたか。想像するだけで反吐が出る」

 ゾンビの主食。考えれば簡単な事である。そしてゾンビ二人の借り物の体。あの二人を7年生かす為に犠牲があるはずだ。

 この時点でコールにまともな価値観などない。ノックが憤るのも無理はなかった。

「彼を擁護するつもりじゃないけど」

 口を開いたのはハジメだ。

「小さい頃から霊だなんだといった者が見えると人とそれ以外の境界が曖昧に感じる事がある。

 彼等は意思を持つ。こちらに問い掛ける事もある。

 悪さをする霊ばかりでもないしね。彼らが発する感情も理解出来る事が少なくないし」

 元は人間である者の思念。悪魔等と比べれば確かに境界は曖昧なのかもしれない。

「彼は純粋に友達を助けたかっただけなのかもしれない。勿論やり方は間違っているけれど、その想いは純粋な気がするよ。だからこそ恐ろしい」

 ハジメの言葉にダニーが頷く。

「俺もコールとはちょっとしか喋ってないが変わってると思ったな。

 フィクションのスプラッタだろうがリアルだろうがそれを純粋に楽しんでるようなクレイジーさみたいなのを感じた」

「何にせよ被害者は多い。凶悪犯には違いない」

 ノックはそう言い切る。

 友人を亡くし生き返らせたネクロマンサーの青年は多くの人間を巻き込んで友人を楽しませるエンターテイメントを作り上げたのだろうか。

 そう思うと背筋が冷えた。


 事後調査の大方が終わり、やっと自由の身だ。

「ジャジャーン! 見ろよこれ!」

 ダニーが見せびらかしてきたのは休暇許可証だ。

「取っちゃった」

 語尾にハートが付きそうな声で言われ「そうか」と半ば引きながら答えると「もうちょっと喜べよ!」と怒られた。

「旅は道連れだぜ、相棒。こっち着いてからずっとバタバタしてたしよ。観光案内ぐらいさせてくれよな」

 ウィンクするダニーに苦笑する。

「観光も何も俺はUSA生まれだ。短い間だが暮らしてもいた」

「え? そうなの? あ、でもそうか。ロビンはUK本部の施設出身だっけ」

 頷く。

「この休暇で生まれ故郷を見に来たんだ」

 両親が悪魔に殺されUSA支部を跨ぎUK本部の施設に入った。それからUSAの地を踏んだ事はない。

 USAに戻る勇気がなかったのかもしれない。

「んじゃ俺もそれに付き合うとするかな。お前の生まれた町、見てみたいし」

 そう笑うダニーにつられる。

「普通の田舎町だ。でも多分、行ったら懐かしいんだろうな」

 きっと今なら両親と暮らした幸せな日々も思い出せるだろう。

 ダニーは肩を抱いて言った。

「じゃあ相棒の故郷に向かうとしますかね。これからは楽しい休暇の始まりだ」

 ダニーが拳を突き上げた。

 空は青く澄み渡っている。


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