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王太子様の評価が貴族から高いので、私は国から逃げる準備を開始します!

作者: リュルク

「お父様!絶対にこの婚約は断るべきです!」



 王太子様が私にどうやら良い印象を持ったらしく、私に婚約話が持ち掛けられたことを、父に告げられたのであった……




「何故だ?レミリア、幸い王太子様は貴族内の評判もよく、さらにお前を気に入っているのなら、酷い扱いをされることもあるまい、私はお前に政略結婚をさせようなどと強く思ってはいなかったが、これよりも良い縁談など無いではないか。そして私もハッキリ言うが、これで他の公爵家よりも、我が家が有利になった!無理せずにチャンスがあるのなら狙うのが貴族である!」



 お父様は私を愛し、家族を愛する男だから、私からすればありがたい存在なのだが、どうしてもこの価値観では困るのであった……



「何が不満なのだ?そういう顔をしている時は、明らかに嫌な時だろう!」




 流石に生まれた時からの付き合いだからバレている……



 でもこれをお父様に説得する術が私には分からない……




 何故ならお父様と私の価値観は違いすぎるのだから……





「お父様……私はお父様が家族であり、困って欲しくないと考えています」





「ならば困らせずに婚約に応じて欲しい……」




「しかし私とお父様では考え方が違いすぎます、何に困るのか、何が良くないのか、その見通しが違いすぎて会話が成立しないのです……」




「……レミリアよ、お前の言うことはよく分からないことが多い。良いではないか、先ほど言ったように王太子様は貴族の評判が良く、さらにお前を気に入っている。これほど良い条件がどこにあるのだ?人格、地位、それから関係性、全部が完璧では無いか!」




 ……ああお父様は分かっていない、その前提が間違っているということに……




「私の言うことのどこがおかしいのだ?」





 こうやってガチガチに考えた人を説得できるほど、私も話術に優れているわけでは無いのだ……




 しかし今回だけは自分のために、家のために言うしか無いのであった……




「私はその、『貴族の評価が高い王太子様』こそ、問題だと考えているからです!」




「よく意味が分からないぞ!」





「そうですね、一から説明しないと分からないと思いますが、お父様はちゃんと聞けますか?」





「私が聞かなかったことはあるのか?レミリアの話を常に聞いているぞ」





「……やはり自覚が無かったのですね、お父様は確かに私を無視したり軽視したりはしませんけど、無自覚に自分が正しい気でいるので、私の言いたいことを理解しようと努力はなさらないですよね……」






「……うぐ……だがさっきの私の言ったことは正しいだろう?」





「だから言ったでしょう、それは貴族の評判が高い王太子が良いと言う前提があるからこそ成り立つのであって、私はそこが問題だと言っているのです……」





「難しいことを言うなぁ……」





「ほらこうやって考えることをやめるじゃないですか……」




 だが今お父様に愚痴を言っても仕方ない、この分からないけど私を愛してくる人を見捨てるのは、私も嫌なのだから……





「……分かったよ仕方なく頑張るよ、だから聞かせてくれ……」





「お父様、簡単に言います、お仕事は大変ですか?」




「もちろん公爵の仕事は大変であるぞ!」




「なるほど、では大変な理由は何がありますか?」





「そりゃあもう色々あり過ぎて……」




「……分かりました、ではその仕事の成果について、陛下は厳しいですか?」





「……幸い陛下には認められているから問題が無い!」





「……だから今の陛下は貴族内の評判がいいですよね、ようは貴族の怠慢な仕事を指摘しないのだから。そして王太子様はそんな陛下の元、陛下以上にそういう方です……」





「何が言いたいのだ?」




「つまり貴族はちゃんと仕事っぷりを見れる有能な君主ほど評判を落とし、ダメな君主ほど愛するのです……」




「それのどこが問題なのだ?貴族に優しい君主がいい君主では無いか!」




「ではお父様、農民がサボっている場合どうしますか?」




「当然働くように促すぞ!優しくばかりはしていられない!」




「ならば陛下からしたら、貴族がサボっていたら同じことを思うはずですが、それでも注意しない。それはサボることを認めているか、サボっていることに気づいていないか、どちらにしても問題じゃないですか」




「だが貴族は農民とは違う、誇りがあるからだ!」





「誇りとはサボることを許容することなのですか?」





「……そういうわけではないが農民と違い貴族は自発的に働けるから凄いのだ!」





「そうでしょうかね?現状凶作の気配があるのにお父様は気づかずに、私がお母様に進言することで、うちの領内はある程度対策がされていますが、それを理解されていますか?ほら貴族が仕事をしているなんて、本当にそうなのか疑わしいじゃないですか……」





「……そうは言っても仕方ないじゃろ!」




「仕方ない?それで誇りなんてよく言えたものですね、とは言え今はお父様を責めたいわけではありません……」





「一体何が言いたいのだ……」





「同じように考えて下さい、農民がサボっていたら貴族は働くように促すのは普通である。ならば貴族が仕事ができていないのなら、王はそれを改善するようにするのが仕事である。今の陛下以上にそれができないことが予想されるからこそ、王太子様は評判が素晴らしいんです……」





「……つまり、王太子様の代になるとこの国がまずいってことか?」




「ええ、そういうことです、そんなものと結婚することが、いかに危険なことか、国内反乱、または外国の侵入どちらにしても、一緒に殺されてしまいますよ、私はそんなことはお断りです!」





「だがお前なら何とかなるのではないのか?」




「無理を言わないで下さい、私の容姿を気に入っただけの王太子様が王になったところで、私があれこれ言って通じると思いますか?お父様ですら可愛い娘の私の意見を軽視するのだから、赤の他人に過ぎない王太子様では余計にそうですよね……」




「わ……私は軽視していないぞ?」





「ええ、別に無視しようとする意図が無いことは知っていますが、私の意見よりも自分の考えが正しいと思うのは変わらないじゃないですか、ならば評判の高い王太子様は自信を持っており、自分に反する私の意見を聞くわけが無い、そうでしょう?」




「うぬぬ……」




「つまり自分が何かしようにも通じずに、それなのに巻き込まれて一緒に責任を取らされて酷い目に遭う、そんな人生は嫌だと言っているのです!」




「では一体どうしたいのだ?」





「……ここで断ったらお父様にも問題があったり、私もしつこくされる可能性があります、だから私は国外に退避しようと思います」




「なんだと!それはならん!」




「いえ、考えて下さい、貴族として私が国外で関係を作れば、リスクヘッジになります、この国が駄目ならばお父様達は私の元に最悪避難することができるし、特に問題が無いのであれば、私とお父様の協力で、外交に貢献できるはずです、どっちの場合でも意味があるのです……」





「しかしだな……」





「お父様、先ほど言いましたよね、私の発言をちゃんと聞いてみると、別に何か反論があるのなら言ってください、無いのに何となく反対をしないで下さい!」




「だけど娘のお前と離れたくないし、それに王太子様はきっと大丈夫、あれほど評判のいい方だ!」




「……だから最初に言いましたよね、私と離れたくないって気持ちは理解できますし、私もそう思います。でも結局私の言ったことを無視して振りだしに戻って、王太子様は大丈夫になったじゃないですか!」



 正直私はイライラした、こういう振りだしに戻る間抜けさがお父様の嫌いな部分である!



 だから話が通じないと思うのである。




「わ……分かった!妻に、妻に相談しよう!そうしよう!」



 ああ結局お母様に逃げるのね、でもお母様は私の言うことを聞いてくれるから、これできっと問題無いでしょう。




 ……さようなら、この国、貴族の強みって何だと思いますか?


 王族が代わっても次の王家に仕えればいいだけなんですよ……


 王族は敗北によって死ぬ、貴族はそうならない、そのポジションを利用しないと……



 お父様のように国のシステムにどっぷりつかって、その結果一蓮托生に滅んでどうするんですか……

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― 新着の感想 ―
認知バイアスのあるあるなやり取りっすね まぁこういうのは相手にしないでそっ閉じ、身内でもなんとか距離とって他人の距離感にしてますw
この後どうなったかを知りたいですね。
いやまあ厳しくしたらしたで、国滅ぶときに借金ごと爵位返還ラッシュ起こるけどな ソースは廃藩置県
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