「朝の登校に元気すぎる乱入者」
春の朝、学園の門前は柔らかな日差しに包まれ、生徒たちの笑い声が小さく響いていた。
黒髪のレイナ・フォン・シュヴァルツは、制服を整えながら、少し緊張した面持ちで殿下エリオット・フォン・アルトハイムと並んで歩いている。
「今日は…落ち着いて登校できるといいわね」
レイナは心の中でため息をつく。昨日の二人きりの時間で少し安心したものの、胸の奥にはまだ小さな不安が残っている。
「レイナさま、殿下!」
元気すぎる声が遠くから響く。振り返ると、自由奔放なミラ・フォン・リーヴァが駆け寄ってきた。
胸元には鮮やかなスカーフを巻き、手には小さなペンダントやブローチを持っている。
レイナは小さく眉をひそめる。
(朝からまた邪魔されるのね…でも、この無邪気さは少し羨ましいかも…)
ミラはにこにこと笑い、二人の横にぴょんと飛び込む。
「二人で登校ですか?私も一緒に!」
殿下は微笑み、レイナの手をそっと握る。
「大丈夫だよ、レイナ。彼女は元気なだけだから」
しかし、ミラは遠慮なく手にしたペンダントやブローチを取り出す。
「今日は誰のアクセサリーが一番似合うか、勝負ですわ!」
レイナは一瞬戸惑ったが、思わず笑みがこぼれる。
(自由すぎるけど…こういう遊びも、意外と楽しい…)
ミラはスカーフをふわりと翻しながら、二人の前に立ち、ペンダントを首にかけようとする。
「さあ、どちらがより素敵に見えるか、殿下に判定してもらいます!」
殿下は微笑みながら、レイナの肩に手を添え、落ち着かせる。
「君も楽しんでいいんだよ、レイナ」
レイナは小さく頷き、心の中で思う。
(学園では元気すぎるミラに振り回されるけれど、殿下と一緒なら安心できる…そして、こんなふうに自由な楽しさも悪くない…)
ミラは元気いっぱいに歩き回り、ペンダントやブローチを少しずつ位置を変えたり、スカーフを軽く絡めたりして二人の登校を奇想天外に盛り上げる。
「負けませんから!」
レイナは小さく笑いながら、殿下の手を握り返す。
「殿下…元気すぎるけど…面白い子ですね」
殿下は優しく微笑み、レイナの頬にかすかに手を添える。
「君が楽しめるなら、彼女の元気も悪くないだろう?」
レイナは小さく頷き、心の中で思う。
(確かに…ミラみたいに自由で元気な人もいる。でも、私は殿下と一緒にいるだけで幸せ…)
三人は笑いながら学園の正門をくぐる。
元気すぎるミラに振り回されながらも、二人の絆は少しずつ深まり、甘くて笑える日常が今日も続いていくのだった。




