「二人きりのデート…そして元気すぎる邪魔者」
午後の学園庭園は、柔らかい日差しに包まれ、花々の香りが風に混ざっていた。
黒髪のレイナ・フォン・シュヴァルツは、今日も完璧な制服姿。黒髪をそっと手で整えながら、少し緊張した面持ちで殿下を見上げる。
「今日は二人だけで散歩なんですね…」
レイナは小声でつぶやく。
エリオット・フォン・アルトハイムは優しく微笑み、手を差し伸べる。
「そうだね、今日はレイナとゆっくり過ごしたくて」
レイナは頬をわずかに赤らめ、手を握る。
(でも、前回も比べてませんか…って聞いたときのことを思い出してしまうわ…)
自然に歩きながら、レイナは勇気を出して尋ねた。
「殿下…前回も、私とミラ嬢、比べてはいませんか?」
殿下はにっこり笑い、レイナの手を軽く握り直す。
「比べてなんかいないよ。君の美しさや心には誰も敵わない」
レイナはその言葉に少し胸をなでおろす。
(やっぱり殿下は私だけを見てくれているのね)
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その時、突然元気な声が響く。
「わーっ、殿下にレイナさま!偶然ですね!」
振り返ると、自由奔放なミラ・フォン・リーヴァが、満面の笑みで駆け寄ってきた。
自分で選んだ華やかなリボンを胸元に飾り、両手を大きく振る。
レイナは小さく眉をひそめる。
(また来たのね…あの自由さは、本当にずるいわ…)
ミラは無邪気な笑顔で近づくと、わざとレイナと殿下の間に入る。
「殿下、今日は何してるんですか?私も入れてください!」
殿下は微笑みながら軽く手を振る。
「ミラ、君は元気だね」
ミラは嬉しそうに跳ねるように笑い、レイナの横をすり抜けて前に立つ。
「負けませんから!殿下に一番元気って思われたいんです!」
レイナは胸の奥で小さく嫉妬を感じつつも、思わず笑ってしまう。
(本当に…自由すぎる子…でも、殿下は私一筋よね…)
殿下は二人を見ながら微笑む。
「君の心配は無用だよ、レイナ。君が一番だ」
レイナは頬を赤らめ、でも少し安心する。
(完璧でいる私と、自由奔放なミラ…二人とも学園では特別な存在…でも、殿下は私を見てくれている)
ミラは元気に庭園を駆け回り、旗やリボンを揺らしながら声を張る。
「負けませんから!」
レイナは小さく微笑み、殿下の手を握り直す。
(完璧すぎる私と、元気すぎるミラ…どちらも、殿下にとって大切なのね…でも、私は負けないわ)
こうして、完璧な悪役令嬢と、自由奔放で元気な男爵令嬢、そして両思いの殿下による、甘くて笑える三角関係は、今日も学園で続くのだった。




