「放課後の三角関係、嫉妬と本心?」
文化祭の翌日、学園は放課後の静けさに包まれていた。
黒髪の長いレイナ・フォン・シュヴァルツは、図書室で文化祭の書類整理をしている。周囲の生徒たちは放課後を楽しむが、レイナは黙々とペンを走らせる。
一方、無邪気で天真爛漫なミラ・フォン・リーヴァは、廊下で花束や小さなお菓子を抱えながら、放課後の殿下との再会を楽しみにしていた。
「殿下、本日は少しだけご一緒にお話しいただけませんでしょうか!」
しかし、ミラの元気さはいつも通り空回りする。廊下の角でつまずき、手に持った花束は床に落ち、隣の机に置いてあった書類まで巻き込んでしまった。
「わっ…!す、すみません、レイナさま!」
レイナは眉をひそめつつも、落ち着いた動作で書類を拾い上げる。
「ミラ、また無茶を…でも、あなたらしいわね」
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その時、殿下ことエリオット・フォン・アルトハイムが通りかかる。
「ふふ、ミラは本当に明るくて元気だね。でも、レイナの美しさには誰も敵わない」
ミラは一瞬うっとりするが、すぐに奮起する。
「そ、そうでございますか…でも、私もめげませんわ!」
レイナはその様子を見て、わずかに胸がざわつく。
(…私の殿下なのに、なぜ少しだけ嫉妬してしまうのかしら…)
顔は冷静な笑みを作るが、心の中は少し動揺していた。
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三人は学園庭園へ移動。
ミラは今度こそ殿下に花束を渡そうと全力で駆けるが、殿下は先にレイナと会話中。
「ミラは明るくて楽しいけれど、レイナがそばにいると安心するね」
ミラは心の中で悔しがるが、全力で笑顔を振りまく。
「殿下、私も頑張りますわ!」
その瞬間、殿下がふと勘違いして声を出す。
「え、もしかしてミラは僕を狙っている…?いや、違うな…」
レイナは腕組みをし、殿下に軽く眉を上げる。
「あら?殿下、また勘違いですか?ミラ嬢と私、比べていらっしゃるのですか?」
殿下は赤面しつつ微笑む。
「比べているわけじゃないよ。ただ、レイナの美しさは誰にも敵わないし、もちろんミラも明るくて楽しいけれどね」
レイナは少し顔をしかめ、でも微笑みを崩さず、そっと殿下に尋ねる。
「…殿下、私の見た目だけが、いいのですか?」
殿下はすぐに笑顔になり、優しく答える。
「もちろん、見た目も中身も素敵だよ。レイナは完璧で、心も美しい」
レイナは胸の中で少し安心し、わずかに嫉妬していた気持ちも柔らぐ。
ミラは「わぁ!」と歓声を上げ、二人の様子を見てさらに張り切る。
そしてミラは大きく腕を振りながら、元気よく叫ぶ。
「負けませんから!」
そう言うと、ミラは笑顔で走り去り、広場を駆け抜けていった。
レイナはため息をつきつつも、微笑む。
(…やれやれ、本当に毎日が騒がしい学園生活ね)
こうして、放課後も、完璧な悪役令嬢、無邪気で天然な男爵令嬢、そして両思いの殿下による、甘くて笑える三角関係は続くのだった。




