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高嶺の花と無自覚なライバル  作者: はるさんた


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15/23

午後の陽だまりと、恋の距離感


秋の午後、庭園の奥にある小さな温室に、アーロン・ラングレー侯爵とミラ・フォン・リーヴァは歩みを進めていた。

前の庭園での散策から少し時間が経ち、日差しが傾き始める中、温室の中は太陽の光を受けた植物の緑と、花々の鮮やかな色で満たされていた。


「ミラ嬢、こちらの温室は初めてでしたね」

「はい……学園では、こんなに植物に囲まれることは少ないですので……とても新鮮です」

ミラは少し緊張した面持ちで微笑み、アーロンはその笑顔に心を奪われる。


「……ミラ嬢」

「はい、アーロン様?」

「君とこうして二人きりで歩くと、時間がゆっくり流れるように感じる」

ミラは少し息をのんで目を伏せる。

「……わ、私も、同じです」


アーロンは紅茶を取り出すと、温室内の小さなテーブルに置いた。

「温かいうちにどうぞ」

「ありがとうございます……あ、温かいです」


ふと、ミラがうっかり肩をアーロンに寄せると、二人の距離は自然に縮まる。

アーロンは微笑みながらそっと手を添えた。

「……温かいな」

「……はい」

お互いの視線が交わるたび、胸の奥が熱くなる。


その横で、庭園のベンチにはレイナ・フォン・シュヴァルツとエリオット・フォン・アルトハイムが座り、二人の様子を見守りながらも、自分たちの甘い時間に浸っていた。


「殿下……こうして手を握っていると、胸が……」

「君のすべてが愛おしい。表情も仕草も、全部だ」

レイナは赤くなり、そっと手を握り返す。


温室では、アーロンが微笑みながらミラに尋ねた。

「ミラ嬢、君の好きな花は何ですか?」

「わ……わたくしですか?」

「ええ。君のことをもっと知りたい」

ミラは少し照れながら目を伏せるが、ゆっくりと答えた。

「……私は、薔薇が好きです。華やかで、でも慎ましいところもあるので……」

アーロンは頷き、そっと手を重ねる。

「君に似合いそうだ」

ミラは頬を赤らめ、息をのむ。

「……あ、ありがとうございます……アーロン様」


庭園のベンチでは、レイナが少し照れた笑みを見せる。

「殿下、わたくしのこと……本当に愛してくださいますか?」

「もちろんだ。君の笑顔、君のすべてが愛しい」

エリオットはそっとレイナの肩に手を置き、顔を近づける。

「……俺の心の中は、君だけでいっぱいだ」

レイナは胸をドキドキさせ、頬を赤く染めた。


温室の中、アーロンは紅茶を一口すすり、勇気を振り絞って言った。

「ミラ嬢……君といると、自然と笑顔が溢れる。君のことを、特別に思っている」

ミラは驚きと喜びで目を見開き、少し息をのむ。

「……アーロン様……わ、私も、同じ気持ちです」

「そうか……なら、これからもずっと一緒にいたい」

ミラは小さく頷き、手を握り返す。


一方、レイナとエリオットも手を繋ぎながら互いの距離を縮めていた。

「殿下……こうして触れ合うと、心が温かくなりますわ」

「俺もだ。君の手を握るだけで、何もかもが輝いて見える」

レイナは恥ずかしそうに俯き、ふわりと笑った。

「殿下……ずっと、こうしていたいです」

「もちろんだ。君といる時間が、俺にとって一番の幸せだ」


午後の光が柔らかく差し込む中、二組のカップルは心の距離を少しずつ縮め、甘くて初々しい時間を過ごす。

アーロンとミラは、初めてのデートでお互いの気持ちを確かめ合い、自然な笑顔を交わす。

レイナとエリオットも、互いの温もりを感じながら、心の奥にある愛情を確かめ合った。


庭園に吹く風は、落ち葉を舞わせ、二組のカップルを優しく包み込む。

午後の日差しと紅葉の色が、恋の予感をさらに深く染め上げていた。

初めての距離感、初めての触れ合い、初めての告白の予感――

そのすべてが、二人の心に甘く刻まれ、忘れられない午後となった。


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