午後の陽だまりと、恋の距離感
秋の午後、庭園の奥にある小さな温室に、アーロン・ラングレー侯爵とミラ・フォン・リーヴァは歩みを進めていた。
前の庭園での散策から少し時間が経ち、日差しが傾き始める中、温室の中は太陽の光を受けた植物の緑と、花々の鮮やかな色で満たされていた。
「ミラ嬢、こちらの温室は初めてでしたね」
「はい……学園では、こんなに植物に囲まれることは少ないですので……とても新鮮です」
ミラは少し緊張した面持ちで微笑み、アーロンはその笑顔に心を奪われる。
「……ミラ嬢」
「はい、アーロン様?」
「君とこうして二人きりで歩くと、時間がゆっくり流れるように感じる」
ミラは少し息をのんで目を伏せる。
「……わ、私も、同じです」
アーロンは紅茶を取り出すと、温室内の小さなテーブルに置いた。
「温かいうちにどうぞ」
「ありがとうございます……あ、温かいです」
ふと、ミラがうっかり肩をアーロンに寄せると、二人の距離は自然に縮まる。
アーロンは微笑みながらそっと手を添えた。
「……温かいな」
「……はい」
お互いの視線が交わるたび、胸の奥が熱くなる。
その横で、庭園のベンチにはレイナ・フォン・シュヴァルツとエリオット・フォン・アルトハイムが座り、二人の様子を見守りながらも、自分たちの甘い時間に浸っていた。
「殿下……こうして手を握っていると、胸が……」
「君のすべてが愛おしい。表情も仕草も、全部だ」
レイナは赤くなり、そっと手を握り返す。
温室では、アーロンが微笑みながらミラに尋ねた。
「ミラ嬢、君の好きな花は何ですか?」
「わ……わたくしですか?」
「ええ。君のことをもっと知りたい」
ミラは少し照れながら目を伏せるが、ゆっくりと答えた。
「……私は、薔薇が好きです。華やかで、でも慎ましいところもあるので……」
アーロンは頷き、そっと手を重ねる。
「君に似合いそうだ」
ミラは頬を赤らめ、息をのむ。
「……あ、ありがとうございます……アーロン様」
庭園のベンチでは、レイナが少し照れた笑みを見せる。
「殿下、わたくしのこと……本当に愛してくださいますか?」
「もちろんだ。君の笑顔、君のすべてが愛しい」
エリオットはそっとレイナの肩に手を置き、顔を近づける。
「……俺の心の中は、君だけでいっぱいだ」
レイナは胸をドキドキさせ、頬を赤く染めた。
温室の中、アーロンは紅茶を一口すすり、勇気を振り絞って言った。
「ミラ嬢……君といると、自然と笑顔が溢れる。君のことを、特別に思っている」
ミラは驚きと喜びで目を見開き、少し息をのむ。
「……アーロン様……わ、私も、同じ気持ちです」
「そうか……なら、これからもずっと一緒にいたい」
ミラは小さく頷き、手を握り返す。
一方、レイナとエリオットも手を繋ぎながら互いの距離を縮めていた。
「殿下……こうして触れ合うと、心が温かくなりますわ」
「俺もだ。君の手を握るだけで、何もかもが輝いて見える」
レイナは恥ずかしそうに俯き、ふわりと笑った。
「殿下……ずっと、こうしていたいです」
「もちろんだ。君といる時間が、俺にとって一番の幸せだ」
午後の光が柔らかく差し込む中、二組のカップルは心の距離を少しずつ縮め、甘くて初々しい時間を過ごす。
アーロンとミラは、初めてのデートでお互いの気持ちを確かめ合い、自然な笑顔を交わす。
レイナとエリオットも、互いの温もりを感じながら、心の奥にある愛情を確かめ合った。
庭園に吹く風は、落ち葉を舞わせ、二組のカップルを優しく包み込む。
午後の日差しと紅葉の色が、恋の予感をさらに深く染め上げていた。
初めての距離感、初めての触れ合い、初めての告白の予感――
そのすべてが、二人の心に甘く刻まれ、忘れられない午後となった。




