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高嶺の花と無自覚なライバル  作者: はるさんた


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14/23

午後のデートと、恋の予感


秋の午後、王立学園の広場には柔らかい日差しが降り注いでいた。

レイナ・フォン・シュヴァルツとエリオット・フォン・アルトハイムは、いつものように静かな木陰のベンチに腰を下ろす。


「殿下、学園の中で二人きりなんて珍しいですね」

「ふふ、そうか?」

「ええ。……なんだか、嬉しいですわ」

レイナが微笑むと、エリオットはそっと彼女の手を取り、指を絡める。


「俺も、嬉しい」

「……殿下」

「ん……?」

「手、握ったままでいいんですの?」

「もちろん」

紅葉した葉がひらひら舞う中、二人の間には甘い沈黙が流れる。

エリオットがレイナの頬に指先をそっと添えると、レイナは小さく息をのんだ。


「……殿下……」

「どうした?」

「……そんなに、じっと見ないでください」

「見ないわけにはいかないだろう」

レイナが少し赤くなると、エリオットは満足そうに微笑む。


「ふふ、殿下……本当に意地悪ですわね」

「意地悪じゃないさ。君の表情が可愛すぎるだけだ」

「……もう、殿下」

その甘いやり取りの横を、軽やかな足音が近づいてくる。


「失礼いたします。……アーロン様、ミラ嬢」

振り向くと、アーロン・ラングレーとミラ・フォン・リーヴァが、少し照れくさそうに手をつないで歩いてきていた。

アーロンは胸の奥で小さく深呼吸して、ミラに微笑む。


「ミラ嬢、今日は来てくれてありがとう。学園内の散策、楽しんでくれると嬉しい」

「はい……アーロン様と一緒ですので、楽しみです」

ミラの声は少し震えていたが、頬の赤みは明らかに幸福の色だった。


二組のカップルは、学園の庭園をゆっくりと歩き出す。

レイナとエリオットは甘く言葉を交わしながら、互いの肩に寄り添い、歩幅を合わせる。

「殿下……今日は、特別に楽しいですね」

「君といるだけで、楽しいさ」

その声にレイナは小さく笑い、自然とエリオットに寄り添う。


一方でアーロンとミラは、初めての二人きりの散策に少し緊張していた。

「……あの、ミラ嬢、歩きやすい場所で……いいですか?」

「はい、アーロン様」

手をつないで歩く距離感は、ちょうど心地よい。


「ミラ嬢、紅葉した木々がこんなにきれいだとは思わなかった」

「……はい。学園では、ここまで自然を感じることは少ないです」

アーロンは一歩近づき、そっとミラの肩に腕を添える。

「それなら、今日は特別に、君とゆっくり楽しもう」

ミラは驚いた顔をしながらも、頷く。

「はい……アーロン様と一緒ですので」


二人の間に静かな時間が流れる。

アーロンがふと紅葉の葉を一枚摘み、ミラに差し出した。

「これは……?」

「君の笑顔を、少しだけ記念に」

ミラは照れくさそうに手を伸ばし、葉を握る。

その瞬間、指先が触れ、胸が熱くなる。


「……アーロン様」

「どうした?」

「……その、手……温かいです」

アーロンは少し微笑み、そっとミラの手を握り返す。


その時、ふと振り返ると、レイナがエリオットに寄り添い、頬を赤らめて笑っていた。

「殿下、あまり私ばかり見ないでくださいませ」

「いや、君の表情を見るのが楽しくて仕方ない」

レイナが微笑むと、エリオットはそっと彼女の肩を抱き寄せた。


「……ああ、見てください、殿下」

「何を?」

「紅葉が、私たちの歩く道を彩っていますわ」

「……確かに。君と歩くこの景色、特別だな」

互いの距離は自然と近くなり、言葉のひとつひとつが甘く絡み合う。


その横で、アーロンとミラも徐々に打ち解けていた。

「ミラ嬢、今日は……君と一緒にいて、本当に嬉しい」

「わ、私も……アーロン様とご一緒できて嬉しいです」

アーロンはそっとミラの肩に手を添え、二人は笑い合う。


レイナとエリオットの笑い声が、アーロンとミラの耳にも届く。

「ふふ、二組同時に甘々ですね……」

「……うん。でも、この雰囲気、悪くない」

アーロンはミラの手をしっかり握り直し、二人の世界を静かに楽しむ。


日が傾き始め、庭園の影が長く伸びる。

四人は一緒に歩きながらも、それぞれの恋の予感を胸に抱いていた。

アーロンは次の週末に計画するデートを心の中で思い描き、

エリオットはレイナの手を握る指に小さく力を入れる。


午後の陽光が、二組のカップルをやさしく包み込む。

紅葉と笑い声が、甘く静かな午後を演出し、

学園の庭園には、恋の予感と幸福の風がそっと吹き抜けていた。


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