学園の朝、三角関係の始まり
学園の広場は朝日を浴びて輝き、生徒たちの声が賑やかに響く。
漆黒の髪と青い瞳を持つレイナ・フォン・シュヴァルツは、整然とした歩幅で広場を横切る。長身でスラリとした立ち姿は、学園でも「完璧」と称されるほどで、通りすがりの生徒たちは思わず息を呑む。
その横で、肩までの栗色の髪を軽やかに揺らし、茶色の瞳で笑顔を振りまくミラ・フォン・リーヴァが駆け寄ってきた。
「おはようございます、殿下!今日も素敵でいらっしゃいますね!」
しかし、殿下ことエリオット・フォン・アルトハイムはすでにレイナの隣に立っていた。金髪の短髪に緑色の瞳。端正な顔立ちと長身で、学園の空気さえ格上げしてしまうようだ。
「おはよう、レイナ」
「おはようございます、殿下」
二人の微笑み合う姿を見て、ミラの内心は穏やかではなかった。
「ふん、レイナさえいなければ…私が殿下の隣に立てるのに…!」
しかし、現実は厳しい。ミラがせっせと用意した小さな花束を殿下に渡そうとした瞬間、手が滑り、花束は床に落ち、レイナの足元に転がった。
「わっ…!す、すみません、レイナさま!」
レイナは一瞬驚いたが、優雅に屈んで花束を拾い上げ、微笑む。
「ありがとう、ミラ…あなたらしいわね」
ミラは頭をかき、顔を真っ赤にして必死に言い訳する。
「え、えっと…その、殿下に差し上げようと思ったのですが…あはは…!」
殿下は緑の瞳を細め、二人を見比べる。
「ふふ、ミラは相変わらずだね。でも心配しなくていいよ。レイナは僕の…」
レイナは微笑み、そっと殿下の腕に触れる。
「そうです、殿下は私のものですから」
ミラは悔しさをこらえつつも、顔はまだ笑顔。
「そ、そうでございますか…でも、私もめげませんわ!」
学園内に小さな笑いが広がった。ミラの天然ドジぶり、レイナの完璧さ、そして殿下の優雅な困惑が絶妙なバランスで三角関係を彩る。
さらに広場の片隅では、他の生徒たちがひそひそと噂していた。
「レイナ様と殿下、まるで恋人同士みたいね」
「でも、ミラもあの笑顔で殿下に近づいてるから見てて面白い」
ミラは自分が笑われていることに気づき、少し顔をしかめる。
「な、なんですって!?」
だが、次の瞬間には再び笑顔を作り、懲りずに殿下の方へ駆け寄る。
「殿下、今日の授業もご一緒にいかがでしょうか!」
レイナは腕組みをし、目を細めて冷静にツッコミを入れる。
「ミラ、あまり無茶をしない方がよろしいのでは?」
殿下は微笑み、両者の間で困惑しながらも楽しげに応じる。
「ふふ、ミラは明るくて楽しいね。でももちろん、レイナの方がずっと素敵だけどね」
こうして、学園の朝は、完璧な悪役令嬢、無邪気で明るい男爵令嬢、そして両思いの殿下の、ドタバタ三角関係から始まった。




