42話 蛙と目的
「ザアアアアアアアアアアアアア―」
「パシャパシャパシャパシャ―」
私達が、町に着く頃には雨がそれなりに降っていました。
まぁ…昨日ほどの強さじゃ、ありませんけどね。
私とゼニィーは傘を差しながら、暗い町並みをパシャパシャと音を立てて歩いています。そして、ユラユラと揺らめく町の外灯を頼りながら―
どこかに向かっていく。
「どこに行くの~?」
ゼニィーは、そんな私に聞きます。
「とりあえず、あの廃墟にまた泊まろうかしら…」
私は、昨夜の廃墟の部屋にまた泊まろうと思い…
そこに向かっているのでした。
「えっ―!!」
「あの怪奇現象が、起きた部屋をまた使うの~!?」
ゼニィーは、怯えながら言います。
「…」(私)
「あのさ、ゼニィーさん…」
「朝は物凄く流していた癖に、何で今それを言うかな?」
「ボクは、怖い事が駄目で…」
「あの時は、現実逃避をしていました~!!」
「そ、そうなんだ…」
「…」(私)
まぁ…そんな私も、しっかりと流していたんですけどね!!
でも私の場合は、現実逃避というよりかは、あまり気にしてなかった部分が大きいですね。私も怖い事は苦手なんですが、どうもこの異世界に来て色々と不思議な体験をしている内に、恐怖の感覚が麻痺している気がしました。いや、感覚が麻痺しているのでは無くて、恐怖に対する耐性が強くなったという事にしましょう!!
もしー
地球であんな怪奇現象が起きていたなら、もう怖くてあの廃墟の部屋に戻れないでしょうね。それどころか一生のトラウマになって、今も精神的に立ち直れてないかも。
私の中では、そんなレベルの怪奇現象でした。
地球でいうとの話しですが―
あの私が泊まった部屋は…
そんな不思議な現象があって、朽ち果てたはしましたけど…それでも他の部屋と比べたら、断然に綺麗な事実は変わりません。ですので…引き続き、今日もあの部屋にお世話になろうと考えたのです。
「まぁ、最悪さぁ…」
「何かあっても、バリアがあるから大丈夫でしょ」
私は深く考えず、言います。
「貴方のバリアは、高性能なんでしょっ」
「それもそうだけど…」(ゼニィー)
そもそも私が、また町に入れましたのも、このゼニィーのバリアのおかげですし。ゼニィーのバリアが無かったら…『カコシ』のいう得体の知れない霧の恐怖で、この町に再び入る勇気は無かったでしょう。
ゼニィー曰く―
マネーバリアは、物理攻撃は勿論、精神攻撃、超能力、呪いなど…自身を危険に晒す、あらゆる現象から身を守ってくれるとの事なんですが、特に呪い関しては、耐性が優れているみたいです。ゼニィーの十八番の魔法がマネーバリアならば、マネーバリアの十八番の能力は呪いを防御する事らしい。この『カコシ』と言われる霧も、その性質から呪いらしく、バリアが問題無く弾き返してくれるそうです。
ゼニィーは…『まぁ、カコシは見た事は無いけど、ボクのバリアは呪いの防御に特化したものだから、全然大丈夫でしょう』と自信満々に言っていました。
そう、自信満々に…
それは、呪いに対してー
どこか対抗意識を燃やしている様な感じもありました。
精霊と呪いの間に、何か因縁でもあるのでしょうか…
(…と言いますか、呪いとは一体?)
「パシャパシャパシャ―」
(ピョンピョンピョンピョン―)
私は、道端に出来た水溜まりを、軽やかにジャンプして避けます。
周りの他人から見れば…
それは、スキップをしている様に見えるでしょうか。
雨が降っているのに…
どこか、はしゃいで遊んでいる様にも見えます。
通り過ぎる人達は、相変わらず重たい雰囲気を纏っていますね。
ですが、私は…その反面、身体が何となく軽くなった感じがしました。
肩の荷が、少し下りた様な…そんな感じですかね。
一応は…
この見知らぬ星での『身の安全』と『食料』は何とかなりそうでしたので、すぐにゲームオーバーになる事の心配は消えましたから。私の心の中の不安は、和らいでいました。
ですが―
「あああ~あ、これから何しようかな…」
私は、はしゃいでいたと思ったら、今度は落ち込みながら考えます。
下を向きながら、雨の道をトボトボと歩いていく。
私は…これから、何を目的に生きていけば良いのでしょうかね。この異世界に来てから、色々と新鮮な体験をしていましたが、やっぱり何か物足りない感じもしていました。
心の中の不安が、消えていく度にー
虚しさが膨らんでいく。
正直…この世界に来たからといっても、特にやりたい事とかは無いんですよね。例えばですが、お金を稼いで『豪邸に住んで贅沢な生活がしたい』とか『美味しいものが食べたい』とか…そんな気持ちも、特にありませんでした。
今は、簡単に食料が手に入りますし。
(まぁ、あの味が薄い魚の味さえ、我慢すればの話しですが…)
更に、生活に困らない便利な魔法具も揃っていますので、野宿に慣れてしまえば、住む所もいらないですし。
(まぁ、雨の日は、困りますが…)
私的には、それで大丈夫でした。
異世界に来てまで、夢の無い事を言って申し訳ないのですが。
私の心を満たす事は、この世界では(でも)―
「「あっ、カエルだ!!」」
「!!」(私)
ゼニィーは、道に跳ねていたカエルを捕まえる。
「パクっ―!!」
(モグモグモグモグ…)
「いや、喰うなよ…」
「ハァ…」
あ~、そういえば…
ゼニィーのバリアは、有料だったわね。
我がパートナーのゼニィーさんの。
「…」(私)
(そう、だから…)
とりあえず…今は、ゼニィーのバリア代を何とかしないとね。
まぁ、300Gですけど。
リンゴ3個分くらいの値段ですけど。
(フフフフ、そうね…)
だから、どうして、稼いでいきましょうかね…
私は、ため息をつきながら、軽く微笑みます。




