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38話 引き分け







「ハァハァハァハァ…」


私は息を切らして、草原に仰向けに倒れていました。





…もう闘いは、すでに終わっていました。




それで勝敗はと言いますと、引き分けでした。






「ハァハァハァハァ…」



あの後、安らぎの匂い以外の技も使ったんですけどね…

殆んどの技が期待外れで、全然役に立ちませんでした。


まずー

“しつけの音” は、親和を築いた魔獣が悪さをした時に、嫌な音を出して叱る技みたいですが、ゴブリンの様な害獣に対しては、追い払う時に使うらしい。害獣はその音を聞くと嫌がり、逃げてしまうとの事です。



これは…


耳を凄く澄まさないと聞こえない程の小さな音しか出ませんでした。そんな聴力検査をやっているみたいな音は、ゴブリン達に届くはずもなく、風の音にかき消されて終わりました。






他には…



“魔獣の気持ち” は、動きを予測する事なんて出来ませんでしたし。



“創鞭” は、魔法の鞭を作れる技みたいですが…まぁ、調教師といえば鞭を使うイメージですからね。これは…とても短くて細い棒が出来ました。



サイズでいうと、爪楊枝くらいですかね。


爪楊枝ならば、ピッタリのサイズですね。


そして、何故か先端が程よく尖っているので、本当に爪楊枝ですね(笑)





(ハハハハハハ…)





「…」(私)





“魔獣にお願い” と “魔獣操作” も、まぁ…名前の通りの技なんですが、勿論そんな事は出来ませんでした。



因みに “魔獣にお願い” は親和を築いた魔獣に対して、自身の気持ちが伝わり易くなり、より具体的な指示が出来る技との事です。つまり “魔獣の気持ち” が相手の気持ちを読み取る『受信』ならば “魔獣にお願い” はその逆に『発信』になる訳ですね。但し、この技が有効なのは親和が築ける知性がある魔獣ですので、知性が殆んどない害獣には、あまり効果は無いらしい。



ですので…


害獣を使役したい時は “魔獣操作” を使うみたいです。勿論、親和を築いた魔獣にも使えますが、強制的に動きを操るので、かなり嫌がられるとか。



あとですが親和契約は、今は置いときまして…


少し期待していた召喚魔法も…












―それで闘いの行方は、私がそんな魔法を試している間にも、ゴブリン達は攻撃を続けていました。そして、ゴブリン達に数百回くらいは叩かれた頃でしょうか。



ゴブリン達も、流石に疲れてきたのか…


息を切らして動けなくなっており、その隙を見逃さず―



私はゴブリンの顔を手で鷲掴みにして、ダイレクトに何度も “安らぎの匂い” を発動させました。そうすると、辛うじて効果が出まして、ゴブリン達は酔っ払いの様にフラフラとどこかに行ってしまいました。止めも刺したいと思ったのですが、私自身も疲れ果てていまして、もう何も出来ず草原に倒れて…今に至ります。






そんな…


何とも情けない感じで、闘いは終わりました。








ゼニィーのバリアが無かったら、普通に死んでいましたね。


ゼニィーを呼んでいなかったら、もうゲームオーバーだったかもしれない。



ギルドカードには大層に、それぞれ魔法の技についての説明が書かれていましたが、実際はどの魔法もかなりショボかったです。いや…これは魔法がショボいというよりは、私自身が滅茶苦茶弱いからなのでしょう。





(まぁ、この人はか弱い少女みたいだし…)


(こんなもんなのかしら…)



こんな弱さじゃ、ギルドで依頼なんて受けられないわね。


私は、少し過度な期待をしていました。













「ハァハァハァハァ…」




「フゥ…」








いや…


防御面では、普通にチートでしたね。


私は乱れる息を整えて、冷静に考えます。




…ですので、正直の所、私自身も強いのか弱いのか分かりませんでした。


まるで、強さと弱さが混在している様な感じです。











「アアア~ア…」



(ゴロゴロゴロゴロ…)


疲れた果てた私は、草原をゴロゴロと横になります。




そして…


モヤモヤした気持ちになりながら、遥か空高くを見つめます。私達の周りには誰もいないので、人目を気にせず、大の字になって草原に寝そべる事が出来ますよ!!









     「「ゴオオオオオオオオオオオオオ―!!」」







―相変わらず、草原には湿った強い風が唸りながら吹いています。




私の耳元には、風の音しか聞こえませんでした。






強い風に吹かれた雲達は、早いスピードでユラユラとどこかに流れて行く。




分厚い灰色の雲の合間からは、僅かに日差しが漏れ出して、そんな雲達を神々しく輝かせていた。








そんな漏れ出す日差しと、灰色の雲が織りなす光と影のコントラストは…




とても綺麗で見蕩れました。



…なんて、雄大な自然の景色でしょうか。



私が必死になって、生きるすべを探しているのが、何だかとても小さな事に感じます。










色々と悩んでいた事ですら―



この雄大な景色の前では、全てを忘れてしまう。



私は、流れ行く雲を目で追いながら、眺めていた。











    「「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ―!!」」











(そうそう…)




私は、ゴブリン達との闘いで使っていない魔法がありました。


それは、私をモヤモヤとした気持ちにさせた元を作った




“果ての魔法 魔法強化”


という魔法を―



この魔法の説明は、とてもザックリでした。


『自身の魔法技を1回、強化して使う事が出来る。但し、その反動も大きく、諸刃の剣である』


―以上です。



…まぁ、この魔法は試さなくても、すでに1回使っていますからね。

この魔法を使って、ゼニィーを呼べたという事は中々、使える魔法なのでしょうね。しかし、諸刃の剣とか…中々、平和でない事が書かれていますけど。



そして、どんな反動なのかの記載も無く、イマイチよく分からなかった。



流石に大きい反動ならば、ゼニィーを召喚した時に気付くでしょうし…もしかして、これから遅れて出てくる可能性もあるかもしれないわね。





なので、しばらくは使わずに様子を見る事にしました。









「ゼニィー、果ての魔法ってどんな魔―」





「…」(私)





私はゼニィーに聞こうとするが…




ゼニィーは、いつの間にか消えていた。







そうでした…


ゼニィーは私の闘いに見飽きて、途中で食べ物を探しに行ったのでした。召喚中は、ある一定の距離を離れられないみたいですが、この町の周辺くらいの範囲ならば、別行動も出来るとの事です。


とりあえず私は、このまま休憩しましょう。




(お疲れ様で~す)




私は、ボソッと独り言を呟いた。









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