35話 本屋
「カラン、カランー」
そのお店の中には、本棚が沢山ありました。
本棚には、色々な本が置かれています。
このお店は…
まぁ、普通に見た目通り、本屋なんですけどね。
(フムフムフム…)
『誰でも出来る魔法薬の作り方』、『今年流行りの魔法具100選』、『君も強い魔法使いになろう―1から始める魔法使い講座』、『疲れている人は必見―温泉の国バルキードの秘湯巡り』、『科学とは果たして存在するのか―?』などなど…
中々、興味が湧く様な本もありますね。ですが、今はちょっと通り過ぎて、小さな明かりが灯る…薄暗いお店の奥へと進んでいきます。
店の奥のカウンターには、店員らしき…
お喋りが好きそうなオバサンが座っていました。
そして―
私と目が合うとニッコリと笑い、私に話しかけます。
「あら、これは可愛らしいお嬢さんね」
「いらっしゃいませ。どんな本をお探しなのかしら?」
(可愛らしいお嬢さん…?)
(このオバサンは、何を言っているんだ。あっ、私の事か…)
そういえば…今の私はオッサン間近のフリーターの青年ではなく、可愛らしい少女なのでした。ウッカリしていると、忘れてしまいますね!!
「いや、私は本というよりかは…」
「ちょっと、道をお尋ねしたいと思いまして…」
「あら、そうなの。どこかしら?」
「ギルドの場所が知りたいんですけど…」
「あら…」
お喋りが好きそうなオバサンは、少し困った様な表情になります。
「この町には、ギルドが無いのよねぇ」
「もっと大きな町に行かないと、ギルドは無いわよ…」
「えっ、そうなんですか」
「えぇ、残念だけど。まぁ、この町がその昔…もっと栄えていた頃はあったみたいだけどね。というのもね―」
「…」(私)
お喋りが好きそうなオバサンは、この町が何故この様になってしまったのか、ペラペラと教えてくれました。
それはその昔…いや、それはそう遠くない昔(今から百数十年前)
このパーシャの町は、ヴェル王国でも有数のとても栄えていた大きい町だったみたいです。しかし、隣国のバルキード王国とこの王国…ヴェル王国との間に勃発した戦争以来、この町は廃れてしまったとか。
―この町の丘の上にある朽ち果てた廃墟は全部…その戦争当時の建物との事です。
この町は、バルキード王国との国境近くにあるみたいでして、戦争の際に、その戦火の被害を一番大きく受けた町らしく…当時の傷跡が、まだ生々しく残っているみたいですね。
それは、百数十年の月日を経た今現在も―
変わる事がなく、その姿のままで。
ですが、何故…
そんな長い時間が経っていても、そのままなんでしょうか?…いくら戦争の被害が大きかった町とはいえ、それはもう100年以上前の出来事のはずだと思うのですが。
戦争自体は、ヴェル王国が大きな被害を出しながらも、最後は辛くも勝利したみたいです。戦争後はバルキード王国の軍備も解体されて、長い月日を経た今では、バルキードも平和で穏やかな国になっているそうですね。
因みにですが…
火山帯にあるバルキード王国は、その地熱により温泉が沢山湧いており、温泉の国と呼ばれているそうですね。その温泉はとても効能が良く、ヴェル王国からもその温泉目当てに訪れる人は多く、人気の観光地になっているとか。
(ふ~ん、そうなんですね…)
(今度、私も行ってみようかしら?)
「…」(私)
「ゴホン、ゴホン…」
そして…
戦争に勝利したヴェル王国も復興が進み、戦争で壊された町はみるみる内に元の姿へと戻されていったとの事です。勿論、この町もそうなるはずでした。そして、この王国の全ての町が復興を遂げるはずでした。
しかしー
そうはならなかった。
復興したくても、この町だけは復興が出来なかったらしい。
それは…
戦争終結と同じタイミングで、どこからともなく…
この町にやってきた
『呪い』
と呼ばれる得体のしれない何かの為に。
「―この町はね…定期的に得体のしれない恐ろしい霧が発生して、町全体を覆うのよ。その見た目もねぇ、普通の霧じゃなくて、黒みがかった…何かが蠢いている様な不気味な霧なんだけどね、その見た目以上に恐ろしい効果もある霧なのよ…」
「…」(私)
オバサンは薄暗い店内で、ため息をついて言う。
その霧の恐ろしい効果とは…
ザックリと言いますと、その霧に触れた者は全身の古傷が開いていき、酷い場合はそこから身体が腐っていくとの事です。そして…致命的な事としては、その効果が治まるまでの間は、一切の回復魔法や回復薬が効かず、今まで受けた傷(古傷)が多い人は確実に死ぬらしい。
古傷が少ない人は、軽症で済むみたいですが…
しかし、殆んどの人が軽症だけでは治まらないらしい。
それは、何故かー?
この世界には、ゴブリンなどの害獣も多く存在しますので…
それらと闘い、傷を受けている人が多いみたいです。
そして…ある程度の傷ならば、回復薬や回復魔法で、すぐに完治します。骨折などの大きな怪我でも、高位の回復魔法を使い、しっかりと手当てすれば、それほど恐れる事のない傷みたいですね。また自身の魔力が上がれば、傷の痛みに対する耐性も強くなり、治癒能力自体も格段に上がります(小さな傷ならば、闘ってる最中に自然と治る事もあるとか…)
なので、極端に言うとですが…この王国(…というか、恐らくこの世界)の人は皆、傷を受ける事に対しての抵抗が少ないそうです。
―この様な世界の特色も相まってか…殆んどの人がこの町に近づけず、ろくに復興が出来ないまま、今に至るらしい。
特に冒険者や騎士が、この霧に触れると簡単に死んでしまうそうです。
この霧は『カコシ』と呼ばれており、その性質から呪いとされて、皆から恐れられているとの事です。カコシの名前の由来は、過去の傷が開いて死んでいくから『過去死』と誰かが言ったのが、そのまま定着したみたいですが…
「…」(私)
こんな訳あり町に住んでいるとは、このオバサンは中々肝がすわっていると思いますけど。
「オバサンは、この町に住んでいて大丈夫なの…?」
「私は闘いもしない、只の本屋の店員だから平気よ。只…怪我をしない様だけは、気を付けているけどね。因みに…この町に住んでいる人達も皆、闘いとかには無縁の人達よ」
「そ、そうなんですね…」
「この近辺じゃ『カコシ』は有名な話しだけどねぇ」
「貴方…もしかして、旅人さんかしら?」
「そういえば…この辺じゃ、見ない格好をしているしねぇ」
「若いのに、逞しいわね~!!」
「…」(私)
「まぁ、残念だけど…こんな状況の町だから、貴方も『カコシ』が出る前に、早くこの町から立ち去った方が良いわよ」
「そうなんですか…」
この町には、ギルドが無いらしいです。
そして、何か…訳ありの町らしい。
「ゼニィー、どうする…?」
「この町には、ギルドが無いんだって」
私は、隣でパタパタと飛んでいたゼニィーに問いかける。
「いや、ボクに言われてもねぇ…」
ゼニィーは、困った様な表情で言った。
「ハァ…」
「…」(私)
…それはそうと、お喋りが好きそうなオバサンは、私が『ギルドの場所を知りませんか?』と聞いただけで、ペラペラと色々な情報を教えてくれましたね。何かとても、助かります。
「ありがとう、オバサン」
私はオバサンにお礼をして、店を後にします。
「えぇ…どういたしまして…」
オバサンはキョトンとした表情で、私達を見送った。
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