33話 食費
「「「「ピシャアアアアアアアアーン!!」」」」
「「ザアアアアアアアアアアアアアアア―!!」」
降り注ぐ雷雨は、辺りの視界を遮り…
とても近くに来るまで、その姿は全く見えませんでした。明かりは何も灯っていなく、真っ暗な暗闇に溶け込んでいたのか…稲光に照らされて現れたのは、とても大きな建物だった。
その建物全体は、蔦が絡まり…窓ガラスは…とうの昔に朽ちたのか、全て粉々に割れているか、窓ガラス自体が嵌まっていませんでした。
そして、所々大きく崩れている。
場所は、この町がある大きな小高い丘の中腹くらいでしょうか…
もし天気が良ければ、そこから丘の下の方に広がるパーシャの町並みを見渡す事が出来そうな、中々の良い立地だと思いますけど。…どうやら、これも廃墟なんでしょうか。しかし、他の廃墟とは違い、その原形を綺麗に留めている様な感じがしました。私が先程まで通り過ぎて見た廃墟は、朽ちたレンガの壁が多少残っているくらいで、殆んどその原形を留めていませんでしたから。
なので、とても頑丈な造りの建物だと思います。
兵隊さんの基地だった所でしょうか…そんな感じもします。
雨宿りをするにも、これは絶好の場所ですね!!
「…」(私)
…まぁ、かなり不気味ではありますけどね。
私はその建物を見上げながら、どうするか迷っていると。
「「「「ピシャアアアアアアアアーン!!」」」」
「ヒィィィィっ―!!」
「へぇ~、ここがイブのお家なんだね。凄い立派なお屋敷だね!!」
「んっ…イブって、本当はもしかしてお金持ちなのー!?」
ゼニィーはいつの間にか、私の横をパタパタと飛んでいて、意外そうな顔で言いました。
「…」(私)
いや、どこからどう見ても、これは廃墟でしょ!!
精霊の目は、節穴なのか…
「いや、違いますけど…」
私はため息をついて、ゼニィーに答える。
まぁ、とりあえず建物の中に入りましょうか。
(お邪魔しま~す…)
私達は建物の入り口を見つけて、ノックをしないでそこから中にお邪魔します。だって…入り口には扉もなくて、そのまま中に入る事が出来ましたので。
「「「「ピシャアアアアアアアアーン!!」」」」
「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…」
―中に入ると、そこには大きな空間がありました。
この建物のエントランスでしょうか。そして稲光と共に、まず最初に私達を出迎えてくれたのは、気味の悪い彫刻達でした。それは…まるで、悪魔をかたどった彫刻なのでしょうか。
大小様々な悪魔達が、楽しそうに…
暗闇の中を遊んでいる様に見えます。
そして、エントランスの壁や天井にも、そんな黒い翼が生えた無数の悪魔の彫刻が施されています。この屋敷を建てた人は…どうやら、中々の悪趣味だった事が伺えますね。
「コツコツコツコツコツコツ…」
(んっ、あれ…!?)
…と思いながら、私は近くの彫刻にランタンを照らして、よく見ていましたら、それは違う事に気付く。私が悪魔だと思っていた彫刻は、悪魔ではなく天使の彫刻みたいでした。しかし、その天使の彫刻は何故か真っ黒に変色していまして、遠くから見たら…悪魔と間違ってしまう程です。
(時間の経過と共に、こうなってしまったのでしょうか…)
「「「「ドオオオオオオオオオオオオオオ―!!」」」」
「…」(私)
叩きつける強い雨は、この朽ちた建物を染み渡る様に、雨漏りとなり…いや、雨漏りというよりかは水道管が破裂してのではないかと思う程に、勢いよく天井から流れていました。そして、辺りには瓦礫が散乱しています。
…やはり、この建物は外からの見た目通りの廃墟の様でした。
私達は頻繁に轟く雷鳴にビクビクしながら、ランタンの灯りを頼りに…瓦礫を避けて進んでいきます。そして、大きなエントランスを抜けますと、長い廊下を歩いていました。
―廊下の先は暗闇で、どこまで続いているのか分かりません。
その途中に幾つか部屋もありましたが、どの部屋も瓦礫で埋め尽くされていたり…雨漏りが酷かったりと、入れる様な状態ではありませんでした。
「コツコツコツコツコツコツ…」
「コツコツコツコツコツコツ…」
しばらく、歩いていくと…その廊下の先には、2階に続く階段がありました。1階はどこも酷い有り様でしたので、私は淡い期待を胸に階段を上がっていきます。
まるで、何かに導かれる様な感じで…
「フフフ…」
○
古びた階段を上がっていく私ー
階段の上を見上げると、廊下同様にその先は漆黒の闇に包まれています。そして…手すりに備え付けられた、黒く変色した天使の像がとても不気味です。また、進んで行く内に、誰かの視線を感じる様な気がする。もしかして、このおぞましい形をした天使さんが、私の事を見ているのでしょうか…
(ブルブルブルブル…)
「コツコツコツコツコツコツ…」
それで、しばらく2階を探索する私…
―2階も瓦礫が散乱していまして、所々壁や天井が崩れていたり、雨漏りが酷かったりと…まぁ、1階と同様にどの部屋も酷い有り様でした。
只、1つの部屋を除いては…
(この部屋は…?)
私達は、綺麗な部屋を発見していました。その部屋は…雨漏りもしていなくて、窓ガラスもあります。壁や天井も崩れておらず、床にも瓦礫は散乱していません。全体的に、少し汚れているくらいでして…他の部屋の朽ち果て具合からすると、異様な程に綺麗な部屋でした。
そして、そこにはベッドが1台ありました。
「…」(私)
どうやら、良い場所がありましたね…
この場所で、一晩過ごしましょうか。
(ワ~イ!!)
という訳で、私は早速ポーチから晩飯をポンポンと弾き出します。
「晩飯よ、出てこ~い!!」
「ポンポン―!!」
出てきたのは、菓子パンが4個とスナックが2袋です。
因みに…これが、今の私の全食料です。あっ…あとは飴も1つありましたね。節約して食べれば、あと1日分くらいはありそうですかね。
今日は菓子パン1個にして、残りは明日の分にしましょうか…
「ジィィィィィィィィィィ―」
「…」(私)
ゼニィーがジィーと物欲しそうな顔で…無言で、私の事を見ている。
あの~、やっぱりゼニィーさんも食べるんですよね?
「そりゃ、勿論食べますとも~!!」
ゼニィーは、当たり前の様に答える。
(精霊って、ご飯を食べるんだ…)
というか本当にコイツは、精霊なんでしょうか。甚だ疑問に感じる所ではありますが…とりあえず、私は部屋の真ん中にランタンを置いて、ゼニィーと晩飯にする事に。ゼニィーには、なけなしの菓子パンを1個あげました。
~数分後~
「―旨い、旨い!!」
「…」(私)
私は、味気ない菓子パン1個をムシャムシャと食べながら…目をキラキラと輝かせてパンを食べているゼニィーを見ていました。
「この町には、美味しいパンの匂いがしていたから期待はしていたけど、まさかここまで旨いとは…こんな旨いパンは、食べた事がないよ~!!」
ゼニィーは、絶賛していました。
まぁ、この町のパンではないですけどね…
地球のコンビニで、適当に買ったパンですからね。
「じゃあ、スナックもどうぞ」
私はスナックを1袋開けて、ゼニィーに勧める。
「ありがと~、これも旨いね~!!」
「ハハハっ、そんなに美味しいの?」
しかし、ここまで喜んでくれるとは…
地球人としても、なんか嬉しいわね。
(そうね…)
もし、地球に戻れたら―
地球のパンは、異世界の人?が絶賛していたよ…と誰かに教えたいわね。
(フフフフ…)
私は、そんな事を思いながら…
揺らめくランタンの明かりをボオオーっと見つめていた。そして気付けば、私はいつの間にかパンを食べ終わっていました。
ゼニィーは、まだパンを食べている。
バクバクと凄いペースで…身体は小さいのに、食欲は旺盛なのね。
「…」(私)
「「!!」」
いやいやいや、てかお前食べ過ぎだろオオー!!
それは、食べちゃダメなやつだよー!!
気付けば、ゼニィーは…床に置きぱっなしにしていた全食料も食べていた。
「ゴメン、美味しすぎて、つい…」
「コ、コイツっ…」
「食欲が凄いわね。これは、食費も結構かかりそうね…」
「ハァ…」
私は力無く、ため息をつく…
「「「「「バンバンバンバンバンバン―!!」」」」」
「「「ー!!」」」(私)
雨は降り止まず、時折風と共に窓をバンバンと叩きつけていた。
「明日、ギルドに行ってみるとして…今日は、もう寝ましょうか」
折角ベッドもある事ですし、使わせて頂く事に。
「じゃあ、ゼニィーお休みなさい」
「うん、お休みね~!!」




