27話 スマホ?
「旨い、旨い!!」
「この国には、こんなに旨いものがあったのか!!」
オッサンは、カップ麺を食べながら感動していた。
「有難うございます…」
「…」(私)
まぁ、この国の食べ物ではないけどね。地球のカップ麺だからね。
私はそう思いながら、オッサンの事を見つめる。
「スナックもありますので良かったら、どうぞ」
そして、私はスナックも1袋開けて、オッサンに勧める。
「どれどれ…フムフム、これも旨いな!!」
「つまみにピッタリではないか。この国は、天才かアア!!」
オッサンは感動して目頭が熱くなったのか、目がウルウルとしていた。
「ハハハっ、有難うございます」
てか、オッサン感動しすぎでしょ。
まぁ、私も…まさか、こんな所でカップ麺が食べられるとは思ってなかったから、少し感動しているけどね。オッサンはその怪しい見た目と反して、意外に絡みやすい感じがした。
そして…オッサンは何故か、私に魔法の事を丁寧に教えてくれた。
私はそれを有り難く、聞いていた。
○
オッサンの話しによると…
魔法具とは、その用途に応じて、様々な魔法が付与されている物の事を言うらしい。
私が持っていた湯沸かしポットには “水の魔法 創水” と “火の魔法 発熱” の水と火の2つの魔法が付与されているらしく、自身の魔力を流すと、その魔法を発動させる事が出来るみたいです。
そして…
魔法具は特に珍しい物ではなく、どこの一般家庭においても普通に揃っている物みたいですね。この世界の人達は、自身が使える魔法と便利な魔法具を使いながら、色々と生活を営んでいるらしい。
それで、『自身が使える魔法』とは…その人の性格や、生まれ育った環境、種族によって、使える魔法の属性(水、火、土など…)や技が決まるとの事です。また、魔獣と闘ったりして鍛える事で、魔法を強くしたり、新たな魔法を使える様になったりするらしい。
「因みにだがな~」
「基本的に魔法の使い方は、湯沸かしポットで水を沸かすのと流れは同じだ。まずは、自身が使える魔法の中から使いたい魔法をイメージをする。そして、その魔法を発動させたい場所に意識を集中させるんだ。そうすれば…その場所に自身の魔力が集まり、魔法を発動させる事が出来るのだ。自身の使える魔法は、ギルドカードから確認が出来るぞ!!」
「へぇ~、とても凄いですね!!」
「魔法で、なんでも出来そうですね(キラキラ)」
私は、童心に返った様なキラキラとした目で言うが…
(んっ、ギルドカードとは何だ…?)
普通に、聞き流してしまった。
あの訳が分からない事が書いてあったスマホ?の事でしょうか…?
心なしか、私は頭がボーっとしていた。
「あぁ、魔法は色々な事が出来るぞ。そして…望んだ事を何でも出来てしまう様な魔法もある。だがな…その様な魔法は発動条件として、自身の何かを犠牲にしなければならないのだ。それは使わない方が良かったと思う程にな…高位の魔法になればなる程に、その犠牲も計り知れないものになるのだ。それは “制約” “反動” “代償” とか、まぁ…使う魔法の種類によって、呼び方が違ってくるがなぁ」
「…」(私)
「そうなんですか…」
オッサンは、私のテンションとは真逆に、暗い表情で言う。
「まぁ、子供にはまだ分からんと思うがな、ガハハハハ~!!」
いや、そうでもなかった。
しかしながら、やはり…便利なものには、それなりのデメリットもあるのでしょうか。
「ファアアア~ア…」
私は、ランタンの揺らめく灯りを見つめて…
眠そうに、あくびをしながら染々と考える。
(ボオオオオー…)
「ところで…君の名前は、なんと言うんだ?」
オッサンは、一通り魔法の事を話し終えたのか、話題を切り変える。
そういえば、私もまだオッサンの名前を聞いていなかったですね。
魔法の事に、夢中になっていましたので。
「私の名前は…」
「…」(私)
私は、名前を言いかけますが…流石に、地球の私の名前をそのまま言う訳にはいかないし、スマホ?に書いてあった『イブ』の名前を使う事に。
「…イブです」
「そうか、イブというのか」
「オッサンの名前は…?」
オッサンは、答える。
「俺の名前は…ザァァァァァ…と言う」
名前の部分にノイズみたいな音が入り、聞き取れなかった。
「…ザァァァァァ…ですね」
しかし、私は特に気にする事はなく話しを続ける。
「この場所は、どこなの?」
私は、オッサンに尋ねる。
「イブよ…俺は、君が魔法の事を凄く聞きたそうな顔をしていたから、なんとなく魔法の事を教えたが…まさか、記憶が無いのかい?」
オッサンは、いきなり核心をついた。
そして、先程の酔っ払ったアホらしい顔とは、まるで違う真面目な顔で聞いてくる。
―辺りに散らかっていた酒瓶が、いつの間にか消えていた。
私はしばらく、黙りこみます。
「…」(私)
「…そうなんです」
私は頷いて、答える。流石に…もう『違う世界から来ました』とか、言える空気じゃないですからね。私は、頭の中で思考を巡らせた結果、違う世界から来た事はもう言わずに、目覚めたら突然ここにいた事にします。
まぁ、実際にこの少女の身体の記憶は無いので、あながち間違ってはないと思うけど…
「ーそうか」
オッサンは、ゆっくりと立ち上がり
両手を広げながら言った。
「パアアアアアアアアアアアアアアア―」
同時に―
厚く覆っていたはずの雲が開けて
夜空の星の明かりが、オッサンを照らす。
『この場所は、ヴェル大陸にあるヴェル王国のパーシャと言う町の近郊だ』
「パ、パーシャ…」
「イブよ、パーシャの町に行って情報を集めてみたらどうだ!!」
「もしかしたら…そこに思い出すキッカケがあるかもしれないぞ。パーシャの町は、この近くに流れる小川沿いに行けば、その内に着くだろう」
「は、はいっ!!」
「あ、有難うございます!!」
オッサンは更に続けて、提案をする。
「そうだ!!」
「俺も、暇を持て余した旅人だ。良ければ、明日町に一緒に行こうではないか。そして、一緒に町を巡ろう。君に手を貸そう」
「えっ…良いんですか!!」
「有難うございます!!」
これは、とても助かります。私はこの世界の事を何も知らないし、とても心強い助っ人です。私の行き先に、一筋の光が射し込んだ様な感じがした。
オッサンも寂しそうに微笑み、満足げに頷いていた。
そして…私は安堵感に包まれたのか、とても眠くなっていた。
オッサンも、心なしか足早に話している感じがしますし…
(ウトウトウトウト…)
「…」(私)
(あっ、そうだ!!)
オッサンに、スマホ?の事を聞いてみよう。いや、これはギルドカードと呼ばれているものなんでしょうか。色々と聞いてみたい。
私は、ポーチからスマホ?を出そうとする。
「スマホ?よ、出てこーい」
(シーン…)
「…」(あれっ?)
私は、ポーチをトントンと叩くが…中々出てこない。
何か、詰まったのか…?
「「スマホ?よ、出てこーい!!」」
「「バンバンバンバン―!!」」
(((オラアアアアアアア~!!)))
私は、バンバンっと強くポーチを叩くと
スポオオオン―
(あっ、出てきた!!)
「コロコロコロコロコロコロ…」
強く叩いた反動か、ポーチから飛び出たスマホ?は、暗いレジャーシートの上のコロコロと転がっていきます。
そして、レジャーシートの中央に置いてあるランタンに “コツン” と当たると止まった。
私は、ランタンに目を向ける。
瞬間―
「「「ギョギョオオオオー!!」」」
出てきたのは、スマホ?では無く、焼けただれた女の生首であったアア!!
【ジイイイイイイイイイイイイイイ―】
―真っ赤な血で染まった女の目は、私の事をジッっと見つめている。
「「ヴヴっ…」」
私は、声にもならない声を出していたが…あれっ?
よく見たら…ランタンの所にあるのは、スマホ?でした。私のスマホ?はランタンの灯りにユラユラと照らされて、置いてあった。
「えっ…、今のは一体?」
「どうしたんだい、おぞましい顔をしているが…?」
オッサンは、心配そうに聞いてくる。オッサンには、見えていなかったのか…
(今のは、幻覚なのか…)
そして、不思議と私は恐怖を感じていなかった。衝撃度と言えば…先程のゴブリンと出会った時以上の衝撃さはあったが、何故か何も感じなかった。
「いや、何でもありません…」
私は只の幻覚として、流す事にする。
「…」(私)
…というか、頭がクラクラとする。猛烈に眠いです。私は、手で頭を抱える。そんな私を見て、オッサンは言う。
「魔法で魔力を使い過ぎて、きっと疲れたんだろう。魔力の源は、自身の生命力と精神力だからな。使い過ぎると、身体も疲れるし、精神にも異常をきたしてしまう」
「あ~、湯沸かしポットの事ですか…」
「…そうだ。だから、今日はもう休め」
「俺が見張りをするから、先に寝ていいぞ。そして、3時間交代な!!」
オッサン曰く…外で寝る場合は害獣が出るので、見張りを立てるのが常識らしい。
ハァ…何から何まで有り難う、オッサン。
じゃあ、お休みなさい。




