26話 カップ麺
どこからともなく現れたオッサンは
瞬く間に、ゴブリン?を斬り捨てていた。
(あ、有難う、オッサン…)
私は、まず助けてくれたお礼を言おうとするが…
「…」(思考)
助けてくれたのは嬉しいが、果たして…すぐに、このオッサンの事を信用して良いものなのか?
明らかに、怪しい風貌をしてますし…
オッサンの薄手の長い黒いコートは、まるでマントの様に風に靡いており、その姿は…私が思い描いている悪人の姿そのものであった。
アメコミに出てくる敵キャラの様な感じです…
(オッサンの方こそ、こんな所で何をしているの!?)
オッサンの手にまだ握られた剣が、更に不気味さを感じさせる。
もしかしたら、私を助けたフリをして、拐うつもりかもしれない。
そういえば、今の私は、とても拐いがいがある、か弱い少女だし。
このオッサンは、ゴブリン?よりも危ないんじゃ…
((ブルブルブルブル―))
私は猜疑心が頂点に達して、怖くてオッサンに話しかけられずにいた。
オッサンは、そんな私を察したのか…
「俺は、只のしがない旅人さ…」
「今、倒したのは、ゴブリンという魔獣だ!!」
「この世界には多くの魔獣が住んでいる。子供が1人で、こんな所にいるのは危険だぞ」
((ゴブリン…魔獣うううっ!?))
やっぱり、ここは地球ではないのか―
地球には、ゴブリンとか魔獣はいないからね。
私はオッサンの言葉を聞き、ここは地球ではない事を悟る。
オッサンは、更に私の事を不思議そうにジロジロと見ながら言葉を続ける。
「フムフム…君は、どうやら見た事が無い服装をしているなぁ」
「まさか、違う世界からでも来たのかい?」
「…」(私)
(あれっ?)
このオッサンは…私が今、置かれている状況を知っているのか?
オッサンは、遠回しに『君は違う世界から来たんだね、ようこそ異世界へ』と言っている様な感じがした。このオッサンは、何かを知っている。
私は、そう確信して―
「「そうです!!」」
「「私は、違う世界から来たんです!!」」
私は、ハッキリと答える。
「ハハハハハ~、面白い事を言う子だ…ヒック!!」
「…」(私)
普通に、笑われました。
いやいや、アンタからその話題を言ってきたんだろうが。
…というかオッサン、もしかして酔っ払ってない?
オッサンの手には、いつの間にか酒瓶を持っていて、なんか…フラフラとしている。そして、なにより酒臭いし。あの~、助けてくれたのは嬉しいのですが、こんな所で酒を飲んで酔っ払っている貴方の方も、中々危険なんじゃ…
私はそんな考えで、オッサンを見ていると…
オッサンは、察したのか―
「俺は、強いから良いんだ!!」
「それに酒を飲んでいるが、飲まれてはいないぞ」
「はぁ、そうですか…」
「おっ!!」
「これは、何だ!?」
オッサンは、レジャーシートの上に置いてある私の晩飯に興味を示す。
「あ~、良かったら…一緒に食べますか?」
「助けてくれたお礼に是非」
「それは有難い、丁度つまみが欲しかった所なんだよ」
「それで…これが一番に気になるのだか、これは一体何だ!?」
オッサンは目を爛々とさせながら、カップ麺を手に持ちます。
「あ~、それなんですけど…」
「お湯が無いと作れないんですよ。残念ですけど」
「お湯ならば、あるではないか」
オッサンは、湯沸かしポットを指差す。
「…!?」(私)
まぁ、そうなんですけど、それ…水が入ってないですし、第一にコンセントがないですからね。オッサンは酔っ払っているから、分からないんだろうか。
「ホレ、貸してみろ。これは魔法具と言ってな…わざわざ、水を入れる必要はない。勿論、コンセントもな。まぁ、コンセントからでも使えるが、自身の魔力からでも作動させる事が出来るのだ!!」
自信に満ち溢れたオッサンは、湯沸かしポットの取っ手を持ち、何かの力を込める。
すると、あら不思議―
何も入ってないはずの湯沸かしポットから、蒸気が沸き出して、お湯が出来ていた。
「おお…」(驚嘆)
「凄い、魔法ですか!!」
「あぁ、これは魔法だ」
「どうやって、やったんですか?」
「ザックリと言うとだな~…まずは、頭の中で湯を沸かしたいとイメージをするんだ。そして、湯沸かしポットの取っ手を持っている手に意識を集中させる。そうすれば、自身の魔力が湯沸かしポットに流れる。自身の魔力が、湯沸かしポットに流れると…湯沸かしポットに付与された魔法が発動して、お湯を作り出す事が出来るのだ!!」
「へぇ…」
「どうだ―君もやってみろ!!」
「えっ…」
オッサンは折角沸いた、お湯を捨ててしまうと、私に空の湯沸かしポットを手渡す。私は、ドキドキしながら…言われた通りにやってみる事に。
~10分後~
「グツグツグツグツ…」
「グツグツグツグツ…」
ポットから蒸気が沸き出した。とても不思議だ!!
…だけど、とても疲れた。これは凄い集中力を使いますね。
「ハァハァハァハァ…」
「ハァハァハァハァ…」
息を切らしている私を横目に、オッサンは笑いながら言う。
「ハハハハ~、面白いだろ。今の温度は、大体80℃くらいだな。沸騰させるには、もう少し魔力を流さないといけんな!!」
「まぁ、その内に慣れるだろうよ」
オッサン曰く、魔力を流す量を上手くコントロールする事で1℃単位で温度を調節する事が出来るらしい。
「へぇ…」(驚嘆)
私は、改めて驚嘆していた。
お湯が沸いた事に…では無く、ここが魔法の世界だった事に。
「ハァ…」
そういえば…なんだかんだで、魔法が使える様になったじゃないか。
嘘から出たまことだな。
あの時、冗談で言ったつもりが本当になっていた。
別に、嬉しくはないよ…感動もしていない。
今更―
「…」(私)
いや、やっぱり少しは嬉しいけど…そこまでは、嬉しくはない。
だけど…何故か分からないが、私の目頭は熱くなっていた。
(ウルウルウルウル…)
ウルウルしている私を見て、オッサンは軽くため息をつきながら笑う。
「ところで、これはお湯でどうやって作るんだい…?」
オッサンはカップ麺を持ちながら、質問してくる。
あ~、それはですね。簡単ですよ。まずは蓋を開けて、お湯を…
…私とオッサンはとりあえず、晩飯にカップ麺を食べる事に!!




