俺が魔王を倒して、僕が君に成り代わるまでの物語
初投稿、初書きです
書きたいところだけ書きました
なにかありましたらコメントまでよろしくお願いします
これはいつかのどこかの時代
剣と科学とモンスターが栄えた時代の物語
そして、少年が世界の真理を知る物語
遥か昔、この村から勇者が出た
こんな王国の片隅の村から出たからそれはそれは讃えられた
俺はその勇者の物語が大好きだった
今度は俺が勇者になる
そう決めたのはガキの頃だった
そしてついに……
「おーい、スイー」
「なんだシェルか」
「何だって何よ!この幼なじみの僕に何も言わずに村を出ていこうとするのんて……って話しを聞きなよ!!」
「どっから聞いたんだよ……」
「もう村中の噂になってるよ」
「ばぁさんめ……」
俺には両親がいない
村のばぁさんに育ててもらっている
ばぁさんには力でも頭でも叶わない
俺が勝てないと思ってるのはばぁさんくらいだ
「それで、その……」
「お願いしますから血液を買ってください!!!」
「今月はもうお前からは買えないんだよ!!」
「お願いします!!お願いします!!」
「チッ、血液銀行のヤツらまたきてんのかよ」
「月に売れる量は決まってるのに……リワードさんは奥さんが病気だからその足しにしたくてくて売ろうとしてるんだね」
「はっ、それでも俺は血液銀行に売るやつの気持ちは分からねぇな」
「…………そうだね」
「所でシェルさっきいいかけたのは……」
「ううん!いいんだ。なんでもないんだ……なんでも……スイこそ明日の準備は終わったの?」
「ん?あぁ、まぁ……」
「本当に行っちゃうんだね」
どこか悲しそうな声をするシェル
生まれてから幼なじみとしてずっと育ったシェルに特別な感情がないとは言えない
ただ、それを伝えるすべを持たないだけ
「もう、暗くなるよ。いこっか」
「そうだな」
勇者の石碑を後にする
勇者……か……俺も、憧れていた時期がある
勇者になると言っていたが俺には無理だ
この村から勇者が出たのはもう500年も前だ
それでも……
「スイ?どうし……っ!!!!!」
「シェル!?」
一瞬だった
俺らの後ろから馬の蹄の音がしたと思ったらシェルを乱暴に抱き抱えて走り去って行った
「人攫いだー!!!!誰か……!!!誰かー!!!!」
叫んでも周りには誰も居ない
シェルはどんどん遠くなっていく
シェルの悲鳴が聞こえないのは気絶しているからだろうかや、シェルは細身だがそれを一瞬で攫う相手の能力の高さ
それらを考慮しても俺には勝ち目はない
だけど……!!!
「シェル!!!!シェルーー!!!」
夜の帳が落ちる
そこには自分が強いと思っていただけの男が1人叫んでいるだけだった
シェルの両親にシェルが誘拐されたと言った時にスイくんに怪我がなくて良かったと言われた
また、惨めになった
ばぁさんは何も言わなかった
俺は明日村を出る
そして、1つの目標が出来た
「シエルをぜってぇ見つけ出す」
そして、伝えるんだ
愛してるって
魔王に今までの旅で培ってきた最強の攻撃を当てる
「神……よ……」
魔王は倒れた
そこには赤い石が一つだけ残っていた
「はぁ、はぁ、終わった……?」
「その石を寄越せ!!」
「それは私のだよ!!」
「やっと、やっと手に入った!!」
「え?みんな、どうし」
「どけ!!!」
ミヒャエルさんに突き飛ばされる
え?どういう……?
ミヒャエルさんはいつも皆の怪我を心配していた
リーリーはつっけんどんとしていたけど、誰よりも仲間も思いだった
サンズは初めは皆と仲が悪かったが誰よりも優しく、皆を気にかけていた
そんな、俺の大切な仲間がたった一つの石を取り合っている
「皆!!どうしたんだよ!!魔王はもう倒したじゃ……!!」
俺が叫んだ瞬間みんなピタリと止まる
「……そんな御伽噺をまだ信じてたんですか?」
「どう言う……?」
「魔王は勇者だ。そして、この石は……」
「賢者の石だ!!」
「賢者の石……?」
「これさえあれば何でも。そう、何でも出来るんですよ」
例えばこの世界を支配する魔王にもなれるし、この世界を発展させてきた勇者にもなれる
「これこそが、今までクソつまらねぇ旅を続けてきた理由なんだよ!!」
「え、サンズは奥さんが……」
「そうだよ。俺の妻を、サラを生き返らせるんだ」
「私のお兄ちゃんを生き返らせるんだよ!!」
「やっとやっと、娘に会える………その石を寄越せ!!!」
3人が血みどろの戦いとなるのを呆然とした目で見ていることしかできなかった
「カリーナ……!!」
「お兄ちゃん……!!」
「サラ……!!」
そんな争いを繰り広げている中、カツンと俺の前に石が落ちてきた
「「「石を寄越せ!!!!!!」」」
「こんなのが、こんなのがあるのが悪いんだ……」
石にグッと刀を突きつける
「何を……!?」
「やめて!!!」
「やめろー!!」
あと少しで石に切っ先が届く時にサッと横から石を奪われ、刃が石の床に刺さる
3人の時が止まったかのように動かなくなる
「あっぶないあっぶない。もー、僕のことを忘れちゃ困るな」
「ペンギン!?なんで……お前、消えたんじゃ……」
「ん?あぁ、あの体は消えたね。これは2号機だよ」
「……は?」
「僕のこと、忘れちゃった?……スイ」
「シェ、ル……?」
「あったりー!!久しぶりだね、スイ!」
「なんで、どういう事なんだよ!!」
「これは僕で、僕はこれだよ」
意味が分かるかな?
「その石が……シェル……?」
「そうそう。この石の作り方、知らないんだね」
「いったいその石はなんなんだよ!!」
「賢者の石」
「賢者の……石……?さっき皆もそう言って……」
「なんでも叶う科学と魔法の融合した物だよ」
「魔法……なんて、そんなものあるわけ……」
「あるんだよ。僕も魔力持ちだったらしいよ」
至極どうでもよさそうに石を弄りながらそう言うペンギン……いや、シェル
「魔力持ちだからって……なにが……」
「賢者の石の材料は魔力持ち。こう言えばわかるかな?」
「まさか……そんなはず……!!」
「そう、この石は僕で出来てる」
「シェルは……シェルは……もう……?」
「そう、死んでるよ。僕はシェルが魂だけになった存在」
頭から血の気が引いていくのがわかった
俺はずっと、ずっと、気づかなかったかのだ
いや、気付こうとしなかったのだ
何回も何回もシェルだと分かる要素はあったのに、それを見逃したの俺だ
「なぁ、シェル、一緒に村に帰ろ?
ペンギンの姿だって、俺が説明して……」
「ん?僕は村に帰るよ」
「よかった……なら早く帰ろう!というか3人はなんで固まっているんだ?」
「僕が賢者の石でこの場の時間を止めたんだよ」
「なら……!!」
「はいはい。わかったよ」
その瞬間シェルが俺の目の前に文字通り現れた
「じゃあね、スイ。大好きだったよ」
バリン
「石を!!あれ?私は一体何を……」
「魔王は倒したはずなのに……まさか、魔王の最後の力で……?」
「2人ともすまなかった……オレはどうかしちまってたみたいだ」
「さ、魔王はもう倒されたし帰ろっか」
「そうだな」
「こんな辛気臭い所にいつまでもいたくないからね」
「帰ったら4人で飲むぞ!!」
「僕はまだお酒飲めないんだけどー」
「ははっ!少しくらい良いだろ!!」
「えー」
そこには旅をしていた時と同じく仲が良い『4人』の姿があった
「くー」
「あ、アサルトペンギンじゃないか
倒していくかい?」
「別にいいんじゃないかな?こっちに攻撃とかしてこないし」
「しかし、アサルトペンギンには凶暴性があるのにあの個体は攻撃してこないですね」
「まぁ、いって。さ、帰ろうか」
俺らの物語はこうして終わった
ここからは僕の物語だ
「さーて、まずは焼畑でもしようかなー」
村に戻ったらぜーんぶ燃やさないと
僕がこうなると知ってたのに何もしなかった両親も、村の連中も……
「スイにはお礼を言わないとね。ここまで強くなってくれてありがとう」
これはいつかのどこかの時代
剣と科学とモンスターが栄えた時代の物語
そして、これは『僕』が全てに復讐する物語
仲間になった時
ペンギン
「ねぇねぇ!私を仲間にして!」
「アサルトペンギンが喋ったー!!!!
というか目キモっ!!」
「失礼ね!そこら辺のペンギンと一緒にしてもらっちゃは困るのよ!!
あとキモイって言うな」
「なんで、俺なんだよ……」
「あんたならやれるって信じてるから」
「なにを?」
「魔王討伐」
「は!?無理に決まってんだろ!!」
「スイなら出来る!!」
「なんで俺の名前……」
「えっと……さっき聞いた」
「そうか……俺なんかかが……出来るだろうか?」
「出来るよ。信じてる」
「人間に捨てられた俺が、魔物に信じられちゃあ……やらない訳にはいかねぇな……」
「やる?」
「やってやんよ!!」
「きゃーかっこいいー」
「棒読みだな!?」
ミヒャエル
「私なんて、どうせ……」
「あんたの医療の腕、俺に寄越せ!
ぜってぇ後悔はさせねぇ!!
一緒に魔王を倒そう!!」
「魔王……それなら、私の夢を叶えてくださいますか?」
「約束する!」
リーリー
「ヒック、私に何か用かい?」
「あんた強ぇえんだろ?俺にその力を貸してくれ!」
「めんどくさい」
「なら、この旅でお前の願いが叶うように俺も協力してやる!!
魔王を倒せば願いが叶うんだ!」
「魔王……仕方ない。このリーリー様の力、貸してやろうじゃないか」
サンズ
「お前俺らから強盗しようなんてすげぇな!!なぁ、お前も仲間にならねぇか?」
「は?俺はただの野党だ……そんな俺には……」
「一緒に魔王倒しに行こうぜ!お前のその索敵が俺は欲しい!」
「…………魔王……ね。…………良いだろう。このサンズ、チカラを貸すぜ」
こうして出来た魔王討伐一行
『魔王』と言い出したのは誰だったかな?
ここまで読んでくださってありがとうございます