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《ROUND1−1》木の実と鉄拳と奈落者

 ――日本列島の国境離島。大いなる自然が齎した未知の島にて、一人か一匹か、赤いたてがみの野生児と遭遇した高橋豪樹。


(しっかし、まぁ……興味の塊みたいな奴ちゃ。長年島に住んでるつったって、ここまで隆起した筋肉と肉体は中々培えへんで。ホンマにこの自然で育ってきたんやろうか……?)


 半ば困惑を交えながら、『赤城玲王(あかぎレオ)』と名乗る野生児に興味を惹かれつつある豪樹。


「あ、そうだ。()()()のおっちゃん!」

「誰がゴリラや!? ワイは高橋豪樹っちゅー名前があんねん!」


「おっちゃんこそ、どこから来たんだ? この島はオイラ以外の人は来たこと無いんだぞ。何か用があって島にきたのか?」


 やはり孤立された未知の島故に、人間がこの地に着く事自体が極稀であるらしい。

 そんな情景もあって、玲王は豪樹がこの島に用があると見たか。精神的には幼いが、推察力は鋭いようだ。


「……あぁ。この島に用があるのはホンマや。実はワイの()()に頼まれて、あるケースの中のもんをこの島で献上せぇ言われてな。セスナの不時着はアクシデントや」


 と言いながら豪樹は、自分の身よりも大事に保護していたアタッシュケースを取り出した。


「なんだぁ? ……ウマそうなニオイはしないぞ」

 等と玲王はケースを鼻で嗅ぐも、期待には外れていた様子。


「いや、食いもんじゃあらへん。ワイの師匠が言うにゃ、この島の何処かにある遺跡に、ケースの中のもんを納めよって言われてん」

「いせき? 良く分かんねぇけど、あそこにデケェ石ならあるぞ」


 と、玲王が指差す先には、平地からかなり離れた密林の奥行きに聳え立つ石碑のような洞窟があった。


「……おそらくそこやな。玲王、ちょっと案内してくれへんか?」

「いいぞー! オイラについてこーい!!」


 と言った矢先、玲王は全力疾走で密林の中に突っ込んでいった。豪樹、置いてけぼり。


「案内って意味分かってんのか!?」



 〚SETTING...〛


 ――なにはともあれ、玲王の後を付いて密林の中を進んでいく豪樹。すると……


「あ、クマー!」

「くま……ファッッ!!?」


 玲王と豪樹の眼前にそびえ立つ黒い影。

 仁王に二本脚で立つ大きな熊が、木の実を両手に持って通せん坊してるではないか。


(あ、アカン……んな所で襲われたら献上どころちゃう! 距離置いて離れな……)


 豪樹は熊に背中を見せず、目を逸らさずにゆっくり後退する。熊は背中を見せて逃げ出すと攻撃性を高める場合がありますからね。死んだふりは絶対にダメですよ! ホントに死にますよ。


「お前、オイラに木の実取っといてくれたのかー! ……え、さっきの勝負のやくそく? いけね、すっかり忘れてたよ!」


(なに熊と近所付き合いしとんねん?!!)


 野生児に怖いものなしか、大熊を近所のおじちゃん感覚でじゃれ合う玲王に豪樹は唖然。

 つい数刻前に勝負してた熊と同類であり、勝負約束に木の実を集めてた事を忘れてた玲王に対し、グルグルと低く唸って『やれやれ……』と呆れていたが、人情味がある熊のようだった。


「あんがとなー!」


 玲王は大量の木の実を、腕いっぱいに抱えて熊に感謝を告げた。しかし当の本人は、先程のパンで既に腹を満たしていた。そこで……


「……この木の実、おじちゃんにあげる!」

「あ? ワイにか!?」


「さっきメシをくれたお礼だ! オイラ、メシをくれた奴の恩は絶対忘れねぇ、だから受け取ってくれよ!」


 ご飯の恩は何よりも尊いもの。例えそれが、自然に育てられた野生児とて、原初なる道徳心は備わっていた。


「……おおきに! 大事に食べさせて貰うで」


 豪樹の大判な手元に受けられた木の実。

 いちじくにクルミ、桑の実、野イチゴにラズベリー、グランベリーと、最近では田舎でしか採れなくなった小柄な果実がどっさりと採れていた。


「こりゃそのまま食べるにゃ勿体ないな。無事帰れたら果実酒か、ジャムにしたら美味そうや」

「そーかー」


 多分豪樹の言ってる事は分かってない玲王の空返事はさておいて。ちょっとした寄り道も終えて、例の石碑へと辿り着いた。


「着いたぞー……って、ありゃ? 何か変な奴らがいるぞ」

「ッ!? 彼奴等……!!」


 それは、石碑に彷徨く自然に淘汰されたならず者。

 世紀末を思わせるような肩パットやらノースリーブやらの奇抜な衣装姿。ふざけているように見えてそれ以上の戯け者。それは人の道を捨て、己の欲望がままに生きるようになった奈落の者。


 ――彼らのような輩を、人は【奈落道流】のファイターと呼ばれています。


「……ったく、どっから湧いてきたんや。そんなにこのケースの中に惹かれたか?」


「主がその中身を欲しがってんだよぉ。そいつを奪うためなら、俺等は未地域でも地獄でも引っ付いていくぜ」

「寄越さねぇなら森林に赤い血で汚すことになるぜ」

「命乞いでもしてみるかぁぁぁぁ!?」


 命を軽薄し、暴力に見惚れた愚か者共。彼らの手先にはバタフライナイフからメリケンサック、毒針と人を傷つけるには十分な卑劣な武器の数々。


 これには純粋無垢の玲王も吐き気を催す程の邪念が、奈落道流ファイターに立ち込めている!


「悪ぃな。コイツはお前さんみたいなクズには渡すなって、お師匠さんから言われとんねん。とっとと家帰って、哺乳瓶のミルクでも吸ってな」


「御託は良いからさっさと……寄越せええええええ!!!!」


 両手には鋭利なベアークロー。それを豪樹に目掛けて引き裂こうとでも考えたか、突撃する奈落道流ファイター。だが、憎いあんちくしょうの顔面を目掛けて――――



 ――――SMAAAAAASSH!!!!!


 豪樹の鉄拳、炸裂す!!!


 血飛沫を上げたのは奈落道流の方。強烈な拳に全身諸共吹き飛ばされ、更に強打された下顎は粉砕骨折。

 痙攣ついでに一撃でノックアウトされた。


「き、貴ッッ、様〜〜!!」



「一人叩き落とした所で、この美しい自然の肥料にもなりゃせんやろうが……やるなら来いよ。


 ――――【天翔道流・アイアンフィスト拳】の高橋豪樹が、相手になってやる!!!」


 両拳は中段、中立に左足を前に掛けた空手の構えを取る豪樹。

 相対する奈落道流ファイター、約30名!!


 初陣を飾るには余りにもアンフェアなこの喧嘩、迎え撃てるか、高橋豪樹!!



 ――本日の試合はこれまで! マッチブレイクッッ!!



 〚Coming Soon…〛


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――掛かってこいや、拳・華・成・闘!!

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