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《UNDERCARD MATCH 1》おにぎりと一本背負いと黄狐

 ――時は近未来。


 現実世界と電脳世界の境界線を繋ぐ電脳転送装置【トランスホール】が開発され、それを用いた地球規模のVRMMO【GAME WORLD(ゲーム ワールド) ONLINE(オンライン)】が始動されてから、50年の年月が経った。


 現代の読者の中にもいる、熱狂的なゲーマー達が思い描く理想。即ち『ゲームで世界が動く時代』を実現させたのが、この物語の世界観。


 人はこの時代を――――【ゲーム超次元時代】と呼ばれています。


 次元を超越した決闘型カードゲームバトルから、五感を刺激する新時代FPSサバイバルゲーム等、人々の魂を震わせるゲームが星の数ほど存在するゲームワールドオンライン。



 そしてこの物語にも、常識を覆す()()()()()が存在する訳ですが……その前に。ある一例を読んで頂きたい。



 〚SETTING...〛



 ――まず一つ目、ゲームワールドオンラインのエリア『スポーティースタジアム/SPORTY STADIUM』にて。

 ここでは公式認定されたスポーツゲームを主に、近未来のアスリートゲーマー達が己の技量を磨く為に挑まれる最も健康的と言われているエリアだ。


 このエリア、ゴルフやら野球場やらとスポーツ公園でも類に見ない競技場の数に渋滞しているエリア。土地関連は、仮想空間なので文句の言いようが無いが、目のやり場に困る。


 そんな事情もあって、何でか競泳プールと競輪のトラックに挟まれて設置された国技館並みのドーム会場が存在する。

 ここは、柔道・剣道・空手といった”武“を象徴するスポーツの聖地である。



 ――ドーム内で行われる柔道ゲーム【(ヤワラ)】のトッププレイヤー、男子100kg超級『ATSUSHI(アツシ)(匿名希望)』選手。

 スポーティースタジアムの食事処を借りてインタビューをしたところ、彼はこの一例の事をこう語った。


『……えぇ、フザけた話に聞こえるでしょうが……マジなんです。男で、100キロ超級の俺が――


 ()()4()8()k()g()()に敗けたんです。一生の恥ですわ』



 女子で、48kg級…………って、もしもし!!?


 作者が柔道無知だってバレる嘘は付いちゃいけませんって!! フェアもクソも無い無謀試合なんて……


『“柔”には()()()()が存在するんです。体格差はおろか、男女の垣根もぶち破って挑む事が出来る危険なルールが……』


 ATSUSHIが語るには、相手になった女性プレイヤーはある特権を使い、裏ルールを用いてATSUSHIに勝負を仕掛けたのだという。

 裏ゲーム使用によって、勝利した際は階級差に応じた倍以上の報酬と経験値が貰えるが、彼曰く女性プレイヤーは報酬よりも戦いたい欲の方が強かったらしい。


 ゲームである為、多少の身体の危険は緩和されるが、体格差や圧力などは本物さながらに表現されている。これが如何に無謀な事か。間違いなく柔道経験者ならば失笑以下の反応を示すだろう。



 だが、それでも――――ATSUSHIは彼女に敗北した。


 その試合結果、【一本 一本背負投 0分31秒】!!


 このとき投げ落とされたATSUSHIは、経験則では実感しなかった感触を戦慄を交えながら語ってくれた。


『あの華奢で、腕も細めで、格闘系とは無縁体質の女が……俺の右腕を掴んだ途端に――――タオルでも振り回すかのように、俺を軽々と片腕で投げ落としやがった!! 60kg以上の体格差で、地面を踏ん張っていたのに奴は一本を取ったんだ!!


 まるで()()()()()()()ような……不思議な感覚だった…………!!!』


 一本背負投は前袖を掴んで、膝のバネを使って、うまく技が掛かれば、片腕で投げる事も出来る。

 だが前述の通り、60kg以上の体格差等のフェアじゃない条件下の中で一本を取ることは無謀とも言える。


 だが彼女は、相手を制し、相手の背が畳に付き、投げに強さ・速さを満たして”一本“を勝ち取った。



 巨漢の漢を投げ落とした現実に、当のATSUSHIはおろか観戦していたプレイヤー達は夢か幻か、その事実を受け入れ難かった。


 まさに、“狐につままれた”。化かされた裏試合となったのだ。




 ……ところで、その一本を取った女性は今何処に居られるのでしょうか?



『俺の後ろで、デケェおにぎり頬張ってるよ』



 え?? …………あ、あの人ですか!?


『いただきまーすッ!』


 つややかな金髪にツインおだんごヘア。腕もウエストもハムストリングスも華奢な体質だが、凝視してみると、細身の中に凄まじい筋肉が凝縮されている。ちなみに胸は推定Dカップと言った所か。


 そんな彼女が、柔道着から着替えた黄色のスポーツインナー姿で、サッカーボール並の巨大おにぎりを大きい口を開けて嬉しそうに食べる姿を見た!



『ん〜〜〜ッッ、やっぱりおにぎりおいちぃ〜♡♡』



 格闘技解説兼グルメ解説もこなします、語り部の私『Mr.F(ミスター・エフ)』が察するにこの巨大おにぎり。


 お米は新潟は南魚沼産のコシヒカリ。そのお米にキラキラとまぶされている塩は沖縄・宮古島の塩、ミネラルが多い塩で有名ですね。

 そして米全体に覆われた海苔は佐賀の焼き海苔。

 その海苔と米の中身には、なんと数個の梅干し。それも和歌山県産の「紀州南高梅」!


 どれを取っても高高級のおにぎり。しかし柔道一戦やり合った後の肉体には十分な栄養補給に他ならない。


 それを彼女は一口一口大事に味わい、ものの数分で完食した。頰には幾つかのご飯粒が付いていたが、それをペロッとあざとく舐めた。



 そんな食後の彼女の背後には…………気のせいか。凡人には見えない”覇気“の気配が、動物の形として見えていた。どんな形か? 聞いて驚くなかれ。



 九つの尾を纏わせる瑞獣(ずいじゅう)【九尾狐】が、彼女と同じくおにぎりを喰らっていた!!



『……あっ、ATSUSHIさーん! 良かったら特製おにぎり食べてきませんかー?』

『え、えぇ~……??』


 彼女は既にATSUSHIや私の存在に気付いていた様子で、持ち合わせていた巨大おにぎりを奉仕した。(私の分も用意してくれました)

 そんな彼女に興味を持った語り部・Mr.F。根掘り葉掘りインタビューした所色んな事が明らかになった。




 ――――彼女の名は、萌黄 舞(もえき まい)(18)。


 黄狐の魂を持つ【天翔道流】の格ゲーファイターである!!

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