02未来を待っても望んだものは来ない
後輩「どうぞ。」
探偵「大衆車だがセンスのいい車を選んだな。」
探偵「中の臭いも気を遣ってる。お、長い髪の毛。女か?」
後輩「たぶん彼女だと思います。細かいチェックは職業病ですか?」
探偵「常在戦場であれ・・そう自分に言い聞かせてる。」
探偵「だがいつも後悔ばかりだ。」
後輩「俺もですよ。世の中、思い通りにはなりませんね。」
オレたちは苦笑し合い車に乗り込んだ。
探偵「コロナでパトは使えないのか。」
後輩「はい。消毒が終わるまで控えるようにと。」
見えない敵ってやつは面倒だねぇ。
とりあえず彼女持ちは敵。文句あるか?
・・ところで、なぜボカロを流してるんだ?
・・
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悪魔の声ブログ(第1グループ)
”中国と一緒にアメリカを倒す方法”
”・・その前にアメリカの弱点から”
”アメリカは強固な資本主義を敷いている”
”資本主義の問題は格差が生まれ、格差は底辺の人々を暴動や革命へと導く”
”国というものは資本主義下で暴動や革命が起き、これじゃダメだねと社会主義に移行する”
”アメリカは下の人間を見捨てることで、上を高めている”
”その原資のひとつがアメリカ国債だ。多額の財政出動を支えている”
”アメリカの弱点は、国家運営のサイクルに他国を組み込んだこと”
”アメリカ国債の発行はおよそ8兆ドル”
”そのうち日本と中国が合わせて約2兆ドルを所持している”
”・・これを売ればアメリカは大混乱だ”
”多額の財政出動できなくなれば、革命を許さない強大な軍事力も維持できない”
”研究開発費が滞ればアメリカの発展は陰り、治安を維持する費用が滞れば見捨てられた人々を革命に誘う”
”そんなことにならないよう、アメリカは国債を買ってもらうために国債の金利を上げなくてはならない”
”しかしそれは、さらなる財政負担をもたらす”
”そもそも、GDP第1位の国債を、第2位と第3位が手放すんだ”
”買い支えるだけの力を持つ者などいない”
”アメリカは終わる”
”なぜカリフォルニアやサンフランシスコで約10万円以下の窃盗が微罪になったのか?”
”それは、刑務所がいっぱいっぱいだから”
”既にアメリカの格差はひどいところまで来ている”
”日本と中国の国債売却はアメリカを社会主義革命へと導くだろう”
”弱者を見捨てた責任を取るんだな”
”アメリカは敵国の持つ国債を無効化できるが、むしろこれはやってもらいたい”
”アメリカの手で自分たちの信頼に止めを刺す”
”10年くらい前・・もうちょい前かな?日本と中国で1兆2000億ドルほどだった”
”それが今では2兆ドル。誰がアメリカを支えているかタヌキでもわかる”
”アメリカはバカじゃないので日本と中国の国債を同時に無効化なんてしないだろう”
”その代わり、日本と中国に頭が上がらなくなる”
”さて、最近中国が暴れようとしているんじゃないかって話もあるが・・”
”第二次世界大戦でアメリカが日本の邪魔をした結果だろう。中国を支援しまくったくせに”
”アメリカが責任とれ”
”日本が中国と戦えば日中が死にアメリカが喜ぶ”
”日本が中国と手を組めばアメリカが死ぬ”
”本来日本はかなり強い立場にある”
”なのに今の日本を見よ!アメリカの植民地になった結果だ!”
”目先の利益に目をくらませ、未来を捨てた!”
”アメリカと組んでも日本は駒のひとつだ。アメリカの駒はたくさんある。韓国とか台湾とかな”
”中国と組めば日本は他に変えられない存在になれる。他にアメリカを倒せるやつがいるか?”
”アメリカの奴隷はやめよう。中国こそ日本と共に歩める存在だ”
”今は敵味方の様な状態だから中国もきつい対応をとってしまうだけ”
”中国もアメリカにはほとほと困っている”
”同じ境遇なら助け合う。それは中国にもある考え方だ”
”日本人に助け合いはないのか?そんなことはない”
”私たちがそれを示そう”
”そして未来をつかもう”
”さようならアメリカ”
”あなたはすごかったよ”
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悪魔の声ブログ(第3グループ)
”革命こそ日本を救う一手となる”
”■リセット”
”以前悪魔の声では、腐敗が止まらなくなったらリセットしようと提案したことがある”
”定期的に国民投票を行い、国民が望めば個人や組織のあらゆる財産や権利を没収する”
”これは、資本主義を一時的に共産主義に変えるものとなる”
”一定期間の後、再び資本主義に戻される。リセットで失ったものは戻ってこない”
”資本主義メリット:発展力!”
”資本主義デメリット:貧富の差、金銭負担の増大”
”共産主義メリット:平等”
”共産主義デメリット:発展力がない”
”資本主義をベースとして国を発展させる。歪みが生まれたら共産主義に変えリセットする”
”そして再び資本主義へと戻し再度発展させる”
”資本主義ではなく、混合経済と共産主義を切り替える形でもいいよ”
”混合経済は今の日本みたいな、資本主義と社会主義を混ぜた経済主義”
”これにより日本を発展させつつ格差や腐敗に対応させる”
”ただし理想はリセットの起きない社会となる”
”普段から腐敗せず、不幸な人を見捨てなければよいということ”
”つまり、リセットされたくないなら腐敗や搾取をしなければいい”
”それができない間はリセットが必要”
”リセットシステムにより、武力革命は必要なくなる”
”しかし、権力者共はリセットシステムを導入しないだろう”
”そのため革命が必要になる”
”日本最後の革命だ。過ちは繰り返さない”
”■政治”
”経済を資本主義と共産主義の切り替え型にするなら、政治も同様に考えたらどうだろうか?”
”すなわち・・民主主義と独裁を切り替える政治”
”切り替えスイッチは国民が押す。国政選挙の時に投票して決めればいい”
”独裁者を望む投票多数なら、政治家を全員罷免して独裁者を決める”
”・・が、独裁者に任せるのは不安だからと別の意見が出た”
”独裁者を決める際、マニフェスト(選挙公約)を必須とし、履行義務と強権を持たせる”
”マニフェスト以外に強権は使えない”
”・・が、そこまでするなら独裁者なんかいなくても、マニフェストがあればいいと意見が出た”
”政治家はそのままで、マニフェストを選挙させる”
”複数投票あり。当選したマニフェストは政治家に履行義務を負わせる”
”独裁者はいなくとも、国民の声を直接政治家に届かせる案だ”
”強いて言えば国民こそ独裁者でなければならない”
”何があっても国民が大ナタを振るえなければ国民主権ではない”
”偽りの自由、偽りの民主主義、偽りの平等。偽りの世界はいらない”
”■社会保障費”
”ここは長くなるので次回をお待ちください”
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悪魔の声ブログ(第?グループ)
”岸田総理の所得倍増プランさすがです!”
”まさか投資で増やすだなんて、愚民である私には思いつきませんでした”
”岸田総理が投資されていないのも、不正を恐れてですよね”
”自分が投資をしてから呼びかけてしまうとただの金儲けですから”
”残念なのは、私には投資するお金もないので・・ですが影ながら応援します!”
”日本の未来が楽しみです”
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その頃、レーベルラットでは争いもなく人々が幸せに暮らしていました。
・・と、そこへ突然の雷雲!
豪雨が地上を襲いレーベルラットの人々は安全な世界を求めて旅立ったのだった。
それから5分後・・
真実の地を見つけたレーベルラットの人々は幸せに暮らしましたとさ。
ちゃんちゃん。
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悪魔の声ブログ(第?グループ)
”安倍元総理銃撃事件”
”犯人は宗教によって家庭を壊されていた”
”そしてその宗教は政府とねんごろの関係だった”
”もし犯人を裁きたいのなら、どうすればよかったか裁判長は答えを出す必要がある”
”悪を倒し正義を守る方法を明確にしなければならない”
”そうすれば、被害者救済法なんか必要ない”
”裁判長による素晴らしい解決方法でみんな解決だ”
”・・いつまで不幸な人に責任を押し付けるつもりだ?”
”悪魔の声は絶望を糧に成長する”
”絶望を与えてきたのはお前たちだ”
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悪魔の声ブログ(第?グループ)
”生活に余裕があってこそモラルも育てられる”
”生活に余裕がなくなれば狂気を育てる”
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車に乗り込み、事件のあった超・ド・田舎区へ向かう。
・・んだけど、なぜか狐まで乗ってきた。探偵さんのツレなのかな。
後輩「現地に着くまで、事件のあらましを話しておきますね。」
探偵「眠くならないように頼む。」
後輩「・・加害者は【悪魔の声】というブログに触発されて殺人を犯したそうです。」
後輩「悪魔の声ブログは知っていますか?」
探偵「”一部の権力者のために国があるのなら、不幸な人にとって国はいらない”」
探偵「”お前たちは何もしていないのに殺されるのではなく、何もしていないから殺される”」
探偵「”不幸な人は他人を殺す、それは当たり前のことだ”・・だっけか?」
後輩「はい。無差別殺人をうたっていて、恨みや特別な理由がなくても被害に遭われる方も多くいます。」
探偵「ちょっと眠いな。ハイテンションで頼む。」
後輩「へ!?えーと・・な、なーんと!今回の加害者と被害者は同じ区に住んでいるんです!」
後輩「な、なんだってー!?」
後輩「しかも加害者は元村長の子供で被害者は現職の市議会議員!これはもうトップニュース間違いなし!」
後輩「す、すごーい!」
後輩「でも超・ド・田舎区じゃトップニュースは無理でしたー!はい残念!!!」
探偵「なんかすまんな。」
後輩「ちょ、探偵さんもノってくださいよ!」
探偵「いやオレクール系だからさ。しかし後輩くんノリいいな。」
探偵「相棒にこんなことさせたらパワハラだって言われるだろうな。」
後輩「相棒・・?」
俺は後部座席に座っている狐をミラー越しに見た。
こいつ喋るの・・?
パワハラって言って。
キツネ「わんわん」
ま、狐が喋るわけないか。
・・
・・・・
後輩「ここですね。この役場に犯人がいるそうです。」
後輩「刑事の後輩です。被疑者はこちらですか?」
元村長「あっ、刑事さん・・そ、その、実は・・逃げられまして・・」
探偵「退屈な仕事と思ってたがそうでもなさそうだな。」
探偵「逃げたのはいつだ?」
元村長「数分前くらいかと・・本当にすみません!」
後輩「どちらの方向へ逃げたかわかりますか?」
元村長「それが気が付いたらいなくなってまして・・」
探偵「携帯で地図開いたぞ。ルートは3つあるな。」
探偵「さらに山奥へ行くルート、町へ向かうルート、隣の山ルート。」
後輩「俺たちは町から来ましたからそれ以外ですね。」
後輩「目撃者がいればいいんですが・・この時間、外に出ている人はいませんか?」
元村長「あっ、青果店があります!店員が見てるかも。」
後輩「電話で連絡できますか?」
元村長「は、はい・・あ・・」
探偵「手を止めてどうした?」
元村長「・・実は、犯人は私の身内なんです・・」
元村長「昔はいい子だったのに・・いい歳して仕事もせず馬鹿なことばかり・・」
元村長「できればその、区のみんなには知られたくないというか・・」
探偵「携帯貸せ。オレがやってやる。」
探偵「・・ったく、どうせ報道されたらバレるだろうが・・」
探偵「・・・・あっ、こんにちは~。ちょっと元村長さんの携帯をお借りしてまして~、今よろしいでしょうか?」
探偵「ありがとうございます。実は元村長さんとこのクソニートが微熱を出しまして、コロナの検査しろと言ったら逃げたんですよ。」
探偵「元村長さんは濃厚接触の疑いがあるので私が代わりに動いています・・逃げた方を見かけませんでしたか?」
後輩「(今のうちに応援呼ぼう)」
探偵「あ、そうですか。もし見かけたら・・え、いま店の前を通った!?あ、声はかけないでください。」
探偵「また逃げられるといけませんから。はい、後はこちらに任せてください。では失礼します。」
探偵「・・署に連絡中か?」
後輩「終わったとこです。挟み撃ちするからすぐ出発します!」
元村長「よろしくお願いします。これ以上罪を重ねないよう・・ああ、なんでこんなことに・・」
元村長「悪魔の声なんて・・人様を殺すなどなんて恐ろしい・・」
探偵「任せとけ。ところで犯人は手ぶらか?」
元村長「恐らくは・・一度捕まえた時に携帯や財布はこっちで預かっていますが・・」
探偵「携帯よこせ、持っていく。」
元村長「は、はい。」
・・やれやれ、楽な仕事だと思ったのに。
運命はいつもオレたちを翻弄する。
・・
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オレたちは急ぎ車に乗る。
後輩「出発します!・・そういえば犯人の携帯を持って来たみたいですが?」
探偵「協力者とかいないかメールやSNSを確認する。」
探偵「お、パスワード設定してないとは助かるねぇ。」
後輩「なるほどお願いします。」
これ以上は殺させない。
間違ったルートはこれ以上進んではならない。
・・
・・・・
犯人「く、来るな!近づくとこいつを殺す!」
探偵「最悪の状況じゃねーか。」
応援の方が先に到着していた。
犯人は一般市民を人質にとっていた。
後輩「・・人命最優先で。」
探偵「おう。オレが引き付ける、回り込んでくれ。」
後輩「わかりました。」
探偵「・・お、スタミナ回復したからちと走るわ。犯人はちょっと待っててな。」
犯人「おいバカにすんな!人質がどうなってもいいのか!?」
探偵「は!?イベント終わるまでに登場人物全員アイロンパーマにしないといけないんだよ!」
探偵「もうすぐイベント終わりそうなんだ。わかるか?あ?」
犯人「そ、それソシャゲのパパパピンクペポーンだろ?はは、まだイベ終わってないのかよざっこ。」
探偵「マジ?お前もユーザかよ。ちょっと聞くがハゲをアイロンパーマにするのはどうすんだ?」
犯人「課金してカツラ買うか溶岩地帯にある超聖水のかけらを60個集めないとだめだぞ。」
探偵「溶岩地帯ってどこだ?」
犯人「マップから行けるだろ。」
探偵「いや無いんだが。ほら携帯見ろよ。」
犯人「おっと近づくな!人質を殺すぞ!」
探偵「近づかんから。ほらギリギリまで腕伸ばしてるから。溶岩地帯どこだよ。」
犯人「んー・・お前地底湖クリアしてないじゃん。たぶん間に合わないからカツラ買っとけ。石でも買えるから。」
探偵「いやいや石はガチャするために溜めてんだよ。マジかー。」
犯人「警察なんかやってるから本気になれないんだ。お前も仕事やめろ。」
探偵「あ、オレ探偵ね。自営業はいいぞ~。」
犯人「クソてめえも死ねよ・・不幸な人は他人を殺す・・不幸な人は他人を殺す・・」
探偵「不幸だから殺したのか?」
犯人「殺したのは市議会議員だ!政治家を殺せば日本は良くなる!オレは正しいことをしたんだ!」
犯人「三島由紀夫だって政治家は殺される心配がなければ腐敗するって言ったんだろう!?オレは正しいんだ!」
探偵「・・間に合わなかったか・・」
後輩「そこまでだ!」
犯人「なん!?ぐぇー。」
探偵「はい人質確保。まったく遅いぞ。」
後輩「すみません、慎重にしすぎましたかね。」
探偵「・・ま、うまくいったからいんじゃね?」
後輩「犯人さん、三島は確かに政治家は殺される心配がなければ腐敗すると言いました。」
後輩「しかし、政治家を殺したら自決しろとも言ってます。」
犯人「・・は?」
後輩「気軽に殺すようではいけないということです。命を懸けて命を奪う暗殺のみ三島は認めています。」
後輩「ですが死なないでください。命が大切なのは誰でも同じですから。」
犯人「・・」
探偵「・・」
後輩「・・あれ課長から電話?はい後輩です・・え、また殺人!?超・ド・田舎区で?」
探偵「やれやれ・・楽な仕事だと思ったらとんでもないことになってるな。」
探偵「残業代は依頼料に加算っと。」
・・
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