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ちからいっぱい現実逃避② ハイビスカス

作者: 凱



      『ハイビスカス』



去年の秋の始まりに 小さな温室 買いました。

食卓の上に乗るほどの 三角屋根のガラスのケース。


花が終わって捨てられた ハイビスカスのためでした。


「猫がいるから うちの家には置けないの。

 ハイビスカスって南国花でしょ?

 冬になったら枯れるから 可哀想だし捨てるのよ。」


緑の小さな鉢植えは わたしの子供となりました。



ところが、ケースに納めてみると 枝の先まで入りません。

「ごめんな。ごめんな。」

謝って、枝先をすこし切りました。


ようやくフタが閉められて、これで春までひと安心。



でも、切り落とされた枝先がいっそう哀れに見えました。

小さなコップに水を入れ、陽の差す窓辺に置きました。


その子はひと月 枯れもせず 窓辺でにこにこしてました。


ある日 見慣れぬ 緑の新芽。

毎日様子を見ていたら まさか まさかの小さな蕾。


ゆっくりゆっくり膨らんで

奇跡のように小さく淡い ハイビスカスが咲きました。


こんな短い枝なのに。

切り落とされた枝なのに。


洗われるような感動と 洗いきれない惨めさが。



ひきかえ 自分はどうなのだ。



花を見つめて 手で触れました。


「それは ちがうわ おとうさん。

 わたしが こうして さけたのは

 まいにち みまもる あなたがいたから。


 あなたが ささえて くれたから

 わたしは いっぱい がんばれた。


 ささえることは みえないしごと。

 さいた いちにち

 ささえた ひとつき

 どちらも だいじな おおきな しごと。

 ひろってくれて ありがとう。

 あいしてくれて ありがとう。」


言い終わらぬまに 手の中で 花は ぽとり と落ちました。


けれど 捨てるに忍びなく いまだに水を替えている。



この春 大きな根が伸びて

いままた蕾が ふくらんでいる。


ほぼノンフィクションです。

ガラスケースの中の鉢植えも元気です。

暖かくなってきたから、そろそろ外に出そうかなぁ…。

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