Episode5 入隊
「ようこそ、とは言ったものの正式にはまだ加入していない。まずはこの書類を読んでサインしてくれ」
一度退室した女性は書類の束を片手に戻ってきた。
「はい」
「書いたらナースコールして私を呼んでもらえ。私も忙しいのでな」
相当な量の書類だ。厚さにして六法全書ぐらいある。読んだことないけど。
上から5ページほどを頑張って読んだがもう読む気がしなかった。勿論量の多さもあるが、内容が内容だ。
人間としての権利が保証されないだの殉死した場合国は責任取らないだの不審な行動をとったら特別監視所送りだのもう滅茶苦茶だ。あと、まだ幼女は俺に小型拳銃を向けているので落ち着かない。
後は読まないで最後のページにサインだけしとくかという最もダメな思考でサクッとサインをしておく。そしてそのままナースコールで呼び戻す。
「この速さを見るに内容を読んでいないだろう。まあいい。風花、お疲れ。」
やっと幼女は小型拳銃を納める。
「私の名前は桜田澪。SATSの隊長だ。これで君は正式に部隊に加入した訳だが……何か質問はあるか。今度こそはすべて答えられるだろう。」
「えっと、まずここはどこですか?」
「ここはSATSの本部内にある病院施設だよ。地理的な場所で言うと青森県だな。青森の最北端から南東に15㎞ほど行ったところの海岸すぐ近くだ。元々は旧海軍の地下施設だから大半が地下だがな。神奈川に居た君はヘリでここまで運んでこられたわけだな。そうだ、後で鍋島さんに挨拶してくるといい」
「どうりでこの部屋窓が無いわけですね。」
「何しろ我々は極秘部隊だ。その基地を知られるわけにはいかない。昨今の状況を考えれば当然だろう。」
昨今の状況ーーそう、第二次世界大戦から100年。各国が資源の枯渇問題に直面する中、中国は不当な侵攻により勢力圏を大きく広げ、アメリカなどと対立する構図となった。そして今年アメリカが日本に核ミサイル基地(日米政府は否定しているが)を設置したことにより、第三次世界大戦になるのではと世界の緊張は最高のものとなった。また、防衛省も防衛計画の抜本的な見直しを行い、機動防衛論なるものを発表したのだった。
「普段は対凶悪犯罪、対テロリズム作戦が中心となるが、有事の際は海上自衛隊、航空自衛隊と連携して作戦に当たる。この場所も北海道が陥落した際の事を考えて選定されている」
「陸上自衛隊、陸自は、なんで含まれていないんですか?」
「実は……自衛隊も一枚岩ではないんだ。言ってみればSATSは警察と自衛隊の中間に位置する部隊だが、設立の際唯一反対したのは陸自でな。何故なら陸自は既に陸上の特殊部隊を自前で持っているからな。プライドもあるんだろう」
「そうだったんですか……」
国の大抵のことは一般人には明かされない。一部の人間のみがすべてを知っている。
知る権利だとか三権分立だとかそんなものは噓っぱちなのだ。
「で、隊長。俺は何をすればいいんですかね。」
「とりあえず戦闘の基礎を教本を読んで勉強しておいてくれ。明日までにな」
「あ、明日まで!?」
「ああ、そうだよ。あとで届けさせよう。」
隊長は嗜虐的な笑みを浮かべる。明日までに覚えられるはずがないと思っているのだろう。
(ま、普通の人間には無理だがな……)
実は俺には一つだけ特技がある。記憶力だ。一度見たものは忘れない。まるで写真を撮ったかのように覚えているのだ。
この特技を俺は誰にも明かしたことはない。おかげで成績は良かった。周囲は親も含め、俺を勤勉だと讃えたが、実際は直前に解答を一通り読んだだけだ。
(クク……明日までに完璧に覚えて隊長を驚かしてやろう)
そんな俺の内心を知る由もなく隊長は言った。
「明日の午後すぐにテストする。完璧にしといてくれよ~質問はこんなものか?」
「また何かあれば聞いてもいいですよね」
「もちろんだ。」
「なら、今日はこんなところですかね。」
「そうだな。明日の午前は風花に基地の案内をしてもらえ。出来るな?」
「うん!出来るよ!」
「よし、今日はこんなところだ。私は失礼する。……今から変な気を起こすなよ。いろんな意味でな。」
「わかってますよ。ありがとうございました。隊長。それと……」
「ふうか。柳風花だよ!よろしくねお兄ちゃん」
「柳さんも。」
「もう、ふうかでいいよ?じゃ、またね!」
俺は病室から出ていく二人の姿を俺はベッドの上から見送った。
めちゃくちゃ長く期間を開けてしまいました。別にリアルは忙しくなかったです。()
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次はなるべく早く出します……