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X Fire-クロスファイア-  作者: 龍田川灰汁
第1章 Are you my friend?
4/7

Episode3 闇の向こう側に


 「受け身も取れないとはな。どこの間者だ?」


 そう問う葉月(はづき)の目はひどく冷たい。

 その青い双眸は俺と共にいた頃の温かさを失っている。

 姿形は葉月だというのに中身はもはや別人だ。


 

 「何なんだよ……葉月じゃないのかよッ……」



 叫ぶ俺に葉月はただ訝しむ視線を向けてくるだけだ。


 

 「はづき……?」


 (もしや自分の名前すら覚えてないのか?)

 

 「覚えてないのかよぉ……俺のこと……葵、加賀谷葵だよッ……」


 「かがや……加賀谷葵……ああ」


 

 ようやく俺のことを思い出したようだ。


 

 「思い出した。お前か」


 「葉月……思い出したのか、俺だよッ。何で逃げたりしたんだよッそもそもあの時色々教えてくれたってよかっただろッ連絡も全部無視しやがってッ」



 葉月が思い出すと同時に俺はこれまでため込んできた感情を一気に吐き出す。

 何も教えてくれなかった憤りと、連絡がつかなかった事への心配と、置いて行かれた様な寂しさと、何より再び会えた喜びとがない混ぜになってぐちゃぐちゃの感情を。


 そんな俺を見て葉月はやっと俺に対する敵意を収めたようだった。

 俺を見下ろす瞳も幾分柔らかなものになった。


 そしてどうやら俺を立たせようとしてるらしい。固められていた肩が解放される。

 立ち上がろうとしつつ何も答えない葉月をさらに問い詰める。


 

 「どれだけ俺が心配したと思ってるん―――」


 

 両足が宙に浮く。


 

 「!?」



 葉月は今度はナイフを持ってないほうの手で俺の胸ぐらをつかんで持ち上げている。

 片腕で平均的な体重の俺を持ち上げるなんて相当な筋力だ。細身な外観からは想像できない。


 そしていつの間にか目の鋭さは元に戻っている。

 

 

 「今度は何だよッ」


 

 俺の問いには答えない。


 

 「よく訓練されているな。見つけるのに時間がかかった。」



 その代わりに何やら訳の分からないことを言い始めた。



 「もう隠れてる必要は無いんじゃないか?」


 

 すると何やら特殊部隊らしい格好をした集団が物陰から葉月を囲う様に6人ほど飛び出す。


 

 「警察だッ民間人を解放し、武器を捨てろッ」


 

 凛々しい女性の声が響く。

 ゴーグルによって顔は見えないがどうやらこの集団は警察らしい。

 


 「フン」 


 ―――ダァン


 いつの間に持ち替えたデザートイーグル(大型拳銃)で葉月が俺の背後にあった落ちかかっていた大きなガールズバーの看板の留め金の一つを撃つ。

 拳銃最強と言われる.50AE弾の強力無比な破壊力が金具を粉砕する。

 

 

 (実銃!?しかも片手で50口径撃つとか化け物だろ……)



 こんな時だというのにそんな感想を漏らしてしまう。

 

 看板は老朽化していたこともあって落下してくる。

 だが、高さが道幅より大きい看板は途中でビルの配管に挟まり狭い裏道の空中に渡される形になる。

 そして衝撃によりパネルと中の電球の破片が降り注ぐ。


 それと同時に俺は葉月に腹部を蹴られ、そばにあったゴミ収集のコンテナの中まで吹っ飛ばされる。




 「―――ッ」



 意識が数秒飛んでいたらしい。

 何とか上半身を起こすと蹴られた腹部がひどく痛む。


 ゴミの隙間から伺うと最初に葉月の背後にいた2人は既に倒れている。


 

 (死んでるのか……?)



 恐らく看板の近くにいた4人の視界が降り注ぐ看板の破片でふさがれたときに葉月が襲ったのだろう。


 6人のうち2人が倒れたことで輪に穴ができる。

 

 さらに続けて葉月は振り返りざまに残った4人うち、いち早くMP7を構えなおした1人を蹴り上げるが、相手も流石に訓練されているらしくその蹴り上げを避ける。顎がかすった葉月のブーツでわずかに切れ鮮血が舞う。


 しかし、葉月の狙いは顎ではなかった。


 躱された蹴りの動きをそのままに今度は相手の右手の親指を踵で蹴り下ろす。

 それによって親指がマガジンリリースレバーを下げてしまい、マガジンが音を立てて地面に落ちる。


 薬室に残った1発を撃つも葉月が左手で銃身を払ったことにより照準がぶれ、無駄撃ちに終わってしまう。


 そしてすかさず徒手で気絶させている。


 分が悪いと見たかほかの3人が即座に物陰に隠れ、反撃の隙を伺う。


 すると葉月は何かを特殊部隊員が潜んでいる物陰に投げ込んでいる。



 (何だ……あれ?発煙手榴弾か?)



 シュウウウウウウウウウウウウウウウ


 どうやらガスグレネードらしい。

 あっちでガスが充満してるぞ。


 ドサッ


 どうやら特殊部隊員はガスを吸ってしまったらしい。

 マスクを被る暇もなかったか。


 

 (マジか……1人で6人無力化してる……)

 


 しかも相当効果が強いのかこっちまで流れてきているので俺の意識も少し薄れつつある。


 3人が倒れたとみると葉月はこちらに振り返りデザートイーグル片手に近づいてくる。 

 このままだと俺も殺されかねない雰囲気だ。


 しかしその予想は外れたようでホルスターにデザートイーグルを収めつつ俺の前に片膝をついて覗き込んでくる。


 「おい、は……づきお前、何者だったんだ……?」


 「俺のことは追うな。そうは言ってもこうなった以上は関わらざるを得ないだろうがな。」



 何を言っているのかよくわからないが、段々と思考が曖昧になっていく。

 ガスが全身に巡り、もう意識を保っていられない。


 言いたいことはそれだけだとばかりに葉月は立ち上がろうとする。



 (やっと会えたのに、こんな形でまた分かれるのかよッ……)


 (―――!!)



 葉月の背後のさっき特殊部隊員が隠れていた物陰から最初に警告していた女性であろう人影が起き上がって何やら銃を構えた。

 あれはMP7じゃない。拳銃に似ているがそれとも少し違うようだ。割と銃身が長めに見える。


 狙いは恐らく肩辺り。それに葉月は多分気づいていない。



 ―――パヒュ


 銃口を飛び出した針状のものは空気を引き裂き、葉月に迫る。

 

 しかしそれを葉月は側転で躱す。



 「そんなものを使っているうちはまだ甘いぞ」


 (完全な不意打ちのはずなのに何故避けれたんだ?)


 

 葉月はそのままデザートイーグルをビルの外壁の屋上付近に撃っている。


 そして着弾地点にまるで体が引き寄せられるような軌道で屋上にたどり着き、そのまま夕闇へと消える。

 その予想外の軌道に特殊部隊員も何も出来ない。



 (結局何も答えてくれなかった……)




 同時に俺の意識も闇へと沈んでいく―――。






 今後少し投稿頻度が低くなると思いますが、気長にお待ちください。


 感想、アドバイスなどコメントお待ちしております。評価、ブックマークもしていただけると嬉しいです。

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